No.1- エンジンオイルの選定と交換方法(1.選定編)

まずバイクのメンテナンスの第一歩というと洗車を除いてほとんどの方がオイル交換ということになると思います.まあ最近はバイク屋さんやバイク用品店にお任せの方も多いので,一概にそうは言えなくなってきているかもしれませんが私のバイク人生はとにかくオイル交換でした.まあ当時学生であったこともあり,オイル交換をバイク屋さんに頼むお金がなかったというのがその理由でもありますが.それでもブレーキパッドの交換やフォークのオイルシール交換などは高額であってもバイク屋さんに頼んでいたので,そういった面からもオイル交換がまずはとっつきやすい作業であり.このようなコーナーで一番先に取り上げるべきものかな?と思うわけです.ではまずその選定編からということになります.

<無難なバイク用エンジンオイルの選定方法とは?>

まずバイクを製品として考えるならば新車にはその保証期間があったりするわけで,その使い方ということでエンジンオイルをメーカー指定のものと異なるものを入れるということ自体,メーカーが想定していない範囲であるわけです.なので新車を正規ディーラーから買って,その保証やメンテ作業をしっかりやってもらいたいのであれば絶対に指定以外のオイルを自分の判断で入れることはやめたほうがいいと思います.で,私の場合は新車をそんな形で購入したこともないですし.今後もバイクの新車を買うこともないでしょうから,そんな無難な選定方法についてはやったことがないわけです.でも人から無難なエンジンオイルと言われればいつも確実に ”サービスマニュアルに載っているもの”を入れるようにアドバイスしています.これはサービスマニュアルに載っているものよりも高性能なものでもありません.そのものズバリでないとお勧めできないということになります.

で,バイク屋さんが良くこれなら大丈夫と太鼓判を押してくれるオイルというのがありまして,それらはバイク屋さんやオイルメーカーが実際その型式のバイクに入れて問題ないかを確認した上で太鼓判を押すに至っています.なのでそれを入れることもある意味無難なんでしょうけど,だいたいそのオイルは高かったりしますので,結果的には無難さとコストの両立ができていないということになり,私的には無難なオイルの定義は”サービスマニュアルに載っているもの”ということになります.

<噂の真偽その1:旧車には化学合成油は使えない>

これは私の若いころから言われてきました.ただ,現在においてはZ系のエンジンでも100%化学合成油を使っている方もいらっしゃいますし,少々都市伝説的な噂になりつつあるように思います.まずこの噂が流れ始めた80年代中盤〜後半にかけてバイクブームがありましたが,その時期の旧車というのは少なくともZ系などの70年代の設計を踏襲している各メーカーのモデルまたはそれ以前のモデルのことであると仮定しますと,その状況で2つのモードの不具合が生じていたと考えられます.

まず一つ目です.この時期は飛躍的にガスケット,オイルシールなどの技術が向上した時期でもあります.例えばこの時期の旧車のガスケットは今は使用できないアスベストを用いているものがメーカー純正の交換パーツでも使用されたりしていました.もちろん固体のガスケットのみならず液体ガスケットについても古いものは本当にゴム系接着剤の耐熱を少し上げただけのようなものでクランクケースの上下の機密を保っていたりしました.

そのガスケット,液体ガスケット,オイルシールの材質が新しい化学合成油の添加剤や主成分と化学反応を起こしたりして痩せることでオイルが漏れたり滲んできたりするケースが発生したのです.細かくはその化学合成油の主成分や添加物の組成や温度特性などを把握していない限りわかりませんが,恐らく当時特定の化学合成油がエンジンの中で機密を保つために用いられる物質との相性が悪く,オイルの封止に障害が出たと思われます.当時のバイク屋さんも訳が分からずこのようなトラブルが出ないようにということで一律化学合成油は旧車には不適というレッテルを貼ったのではないかと推測されます.

さて時が流れて,現在においてこのような化学合成油も多くを占めるようになった中で,トラブルが頻発しているかというと,そうではありません.前述のように空冷Z系エンジンに高性能化学合成油を使用している例も多くみられるわけです.これはこれらの旧車のエンジンは一度全バラにされ,新しい材質のガスケット,オイルシールに交換されているため問題が出ないというのと,化学合成油のメーカーもあえてガスケットやオイルシールを攻撃するような添加物などを入れないように組成を変えてきているからではないかと思います.

次にオイルの粘度が影響しているのではないかという点です.例えば私はガンガンにエンジンを回して長時間走ったり,渋滞に長時間ハマったりすることはありませんので,エンジンオイルは5W-40または10W-40あたりを使用します.ちなみにこの数字はWがついている方は低温側の使用範囲,Wのない方の数字は高温側の使用範囲を考えればよく,要は低温時.高温時のオイルの硬さ(粘度)を表しています.バイクブーム当時の標準的なバイク用オイルの硬さは10W-40であり,一部のレーサーレプリカモデルを除く多くのモデルのサービスマニュアルには10W-40を使用するように書かれていたと思います.当時GPz400Fに乗っていた私はカワサキ純正の10W-40のオイルはとても買えなかったので,カストロールのGTX-7という15W-40のオイルを入れていました.そしてより安いバルボリンの20W-50に目移りしていくわけですが.要は当時実売モデルであったとはいえ.ベースがZ400FXのエンジンであり.旧車のカテゴリに属するということで高温側でもある程度の粘度をもって高温摺動部の保護被膜を維持できる硬めのオイルを選んで入れていたわけです.

でも当時出たばかりの化学合成油は比較的柔らか目のものが多かったと思います.なのでそれを旧車に入れてしまって,それまでと同じようにエンジンをぶん回したり渋滞にはまるような乗り方をすると,とたんにカムをかじったり,摺動面が摩耗してしまったりしたのではないかと推測します.またそのような高温下で粘度が下がってしまうような局面では.オイルの動粘度も下がるので,それまでギリギリ気密を保っていたような合わせ面のオイルシールやガスケットの境界面からオイル漏れやにじみが発生した可能性もあります.ですので粘度が低い化学合成油において,そのようなトラブルもあったのではないかと推測します.

上記のような推測から,私は旧車に類するような自分のバイクにも化学合成油や部分合成油を入れていたりしますし,それで化学合成油が原因と思われるオイル漏れやエンジントラブルは出ていませんので,状況は好転してきているのではないかと思っています.といってもすべての旧車にすべての化学合成油がOKというわけではありませんし,鉱物油であっても旧車の場合は保証なんてありませんから用心に越したことはないんでしょうね.

<噂の真偽その2:バイクには自動車用オイルは使えない>

これはメカニズム的に説明がつきますので簡単です.自動車はクラッチ,オートマチックトランスミッションに専用のオイルを使用します.バイクだと2ストのエンジンがそれにあたります.4ストバイクの多くはエンジンの構造を簡略化して重量を抑える目的から,クラッチオイルもエンジンオイルで兼用しています.そのため一部の自動車用オイルではこのクラッチが滑ってしまう可能性が出てくるのです.バイク用オイルはこのトラブル回避のためにクラッチが滑らないような組成になっていたり,添加剤が加えられたりしているようなのです.だからバイク用オイルは高いのか,それは定かではありませんが.

で,当の私は今までの人生で自分で4ストのバイクのオイル交換するときに一度たりともバイク用オイルは使ったことがありません.これは単に今までバイク用オイルが高額なために仕方なく自動車用オイルを代用してきたことと,その自動車用オイルを使う中で半クラッチなどのときの微妙なクラッチフィールの違いなどがあるかもしれませんが,実害として感じられるほどの敏感さを持ち合わせていないということがあげられると思います.

なので私見としてはお金がない人は自動車用オイルを試してみてもいいのでは?という感じだったりします.まあこれはもちろん私が責任を取れる範囲ではありませんので,あくまでも自己責任でということになりますが.

ともあれオイル交換については私のwebでわざわざ紹介することもないケースが多く.ほとんど紹介していない影でこんな感じでオイルを選定しています.最近多いのは部分合成油のカストロールGTX ULTRACLEAN (5W-40)や100%合成油のシグマパワークリーンSP 5W-40 など比較的安価なオイルを頻繁に交換する形で使用しています.というのも1台当たりの年間走行距離がそう長くなかったりするのでもったいなくって.だいたい2年に1度交換しても1000km走ってなかったりするので...まあこんな人の言うことは大概当てになりませんので,このページに書かれていることをそのまま鵜呑みにしないで.ご自分の判断で試行錯誤してみるのが一番ではないかと思うのであります.(と.このページの存在意義を否定する私)

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