次回作”天気の子”について

去る12/13に制作発表された新海さんの新作アニメ映画.”天気の子”というまた短く深い意味を持つであろうタイトルに心沸き立つ思いです.確かに天変地異とも評される自然災害に見舞われた2018年の年収めの時期に,”天候の調和が狂っている世界”のことを描くという,まさに今を描こうとしているところが新海さんのポリシーなのだと思います.さて,未だに製作発表の中で明かされたのはポスタービジュアルと主人公2人のプロフィールと声優さんと製作陣.そしてストーリーのあらすじ.今回,君の名は。のコーナーでありつつも次回作について語ってみたいと思います.

<本作のなれそめ>

本作のなれそめというかアイデアの起点は君の名は。のプロモーションで新海さん暑い夏の中見上げた2016年の夏の空だそうです.まあ封切されてやっぱり頭の中には”そろそろ次回作考えとかないと”という気持ちがあったんでしょうね.次の仕事への焦燥感なのか,あるいはワクワク感なのか知る由もありませんがまさにクリエイターあるあるです.コミケで売れ残った薄い本を持ち帰りながら,次回はどういったものでリベンジしようとか考えている弱小サークルのクリエイターさんたちからしても,こんなところも親近感がわくというか,いかにも庶民派です.

で,その積乱雲の上でゆったりしたいって,どんだけ現実逃避なんスカと突っ込みを入れたくなる気持ちを押さえて,クリエイター目線でみて見ると

・ほしのこえ :地上と宇宙,時間差アリ,科学系
・雲のむこう、約束の場所 :地上と宇宙,時間差なし,科学系
・秒速5センチメートル :もろ地上,時差なし,ヒューマニズム系
・星を追う子ども :地上と地中,時差なし,ファンタジー系
・言の葉の庭 :もろ地上,時間差なし,ヒューマニズム系
・君の名は。 :地上とちょっと宇宙,時間差あり,ファンタジー系

ということで,次は見る側を飽きさせないためにも確率論と売れ線予測から地上と空,時差なし,ファンタジー系って感じかな?ということで地上と深海とかディープなところを攻めないところが“どエンタメ”と言い切ってしまえる自信にもつながっているのかもしれません.まあ打算的に見てしまうと色々とつまらなくなってしまうので,邪推はここらへんにしておきましょう.

<ポスタービジュアル>

実際ポスタービジュアルを見ていきなり感じたのはあれ?雲の上にご神体のあったカルデラの平原があるということ.正直あの薄緑の部分をご神体の周りの平原のキャプチャと入れ替えても誰も気づかないとか思えるほど.で,2015年の同時期に発表された君の名は。のポスタービジュアルを見たときの感想を思い出しますと,どうも右っ側の三葉のいる草原は”星を追う子ども”を思い出させるものですし,左の瀧くんの後ろの信濃町の歩道橋やヒルズ,東京タワーなど ごっちゃにした背景は”言の葉の庭”を思い出させるものとも言えます.そして空は”秒速5センチメートル”の種子島の衛星が真っ二つに分けていく空のようにも見えます.ちょっと強引ですが,もしかしたら新海さんはポスタービジュアルに過去の作品を思い起こされるようなポイントを意識して埋め込んでいるのかしら?などと思ってしまいます.

また,このポスタービジュアルをさらに細かく見ていきますと,まず目立つのが雲の上の草原のようなものが画面奥に向かって弧を描くように飛び石状に並んでいることがわかります.天空に浮かぶ少女がその飛び石状の草原を目の前に,これからそれらを伝ってどこか遠いところに旅をするようなストーリーを思い描いしてしまいます.恐らくその先に”僕と彼女だけが知っている世界の秘密”につながる鍵があるんでしょうね.

他のポイントでは雲の周りに向かって魚の群れのようなものがうようよと伸びていっています.確かに画面右下の青は空の青というよりも海の青をイメージさせるような色使いでして,空と海が融合あるいは交錯しつつストーリー展開されていくようなシーンがあるのでは?と想像してしまいます.また魚の群れのイメージとは別にその海の青がたなびきながら雲の周りを廻っているように見えますが,左下のその青い部分の形が,どう見ても空を飛ぶ竜のように見えます.そういえば糸守の竜神伝説が元々は彗星被害の言い伝えが転じた者であったという設定が君の名は。の小説のほうにありましたよね.恐らく天災などを含め空で起きることをつかさどる存在として竜がイメージとして登場してくるのかもしれません.

ちなみに君の名は。のポスタービジュアルではたきみつとも後ろを向いていたのですが,封切直前のキービジュアルでは同じ背景で二人とも前を向いていました.そのうち陽菜ちゃんがこっちを向いているキービジュアルが公開されることを期待しておりますです.

<スタッフ>

今回,やっぱりという感じで君の名は。の主なスタッフが多く参加しています.どのような肩書でかわかりませんが川村元気さん,恐らく制作には川口典孝さんが関わっており,制作発表の場でコメントされていました.まあそこらへんは東宝としてはちゃんとタッグを組んで次回作も期待してますよということなんでしょう.で,最も期待を寄せたいのが今回も田中将賀さんがキャラクターデザインをやってくれるということ.そして総作画監督は今回は安藤さんではなく田村篤さん.この方もジブリ出身の方で,かなり長期にわたり作品を生み出し続けて来た方のようで期待できます.ちょろっとwikiではないところで見たんですが,ジブリ以外にもメジャーどころのロボットアニメや私の好きな作品の原画や作画監督などに携わってきた方のようで,期待が高まります.加えて背景陣は滝口さんを中心としたいつもの方々がまた,抒情的な風景で作品の深みを持たせてくれることと思います.

声優さんについては,まだお若いので特にプロフィールで特筆すべきところはありませんが,また新海さんの地声付きビデオコンテから着想を高めて素晴らしい演技をしてくれることを期待します.といってももうすでに時期的には吹込みは済んでいるはずなんですよね.こういった時期はどうしてもストーリーを観客なんかよりも先に知ることが出来る声優さんてなんてうらやましいんでしょう?とか思います.まあ自分で演じてしまうと鑑賞しているときにシンプルに楽しめないようなこともあるでしょうから,そこらへんは複雑でしょうけど.

<全体>

こうやってほうぼうで期待が高まるとかいってしまうと,作る側にプレッシャーになると思いますし,そろそろやめにしておきます.どうしても興行収入とか観客動員数とかで君の名は。と比較されるでしょうし,少しでも数字が劣った場合に本作がすぐれた作品ではないような言われ方をするかもしれません.あくまでも前作との比較ではなく作品個々の評価で見れるように,私は今回も封切すぐではなく1か月ぐらい時間をおいてから映画館に足を運ぶことにしましょう.その待たされた分期待感が高まってしまうかもしれませんが,その飢餓感がまたいいんですよね.ということで,もうストーリーについてはもう決まっているでしょうし,あとは編集,画面の作りこみなどが残っているだけかも知れませんが新海さんはじめスタッフの皆さんには頑張ってもらいたいと思います.制作発表でもアニメ業界全体が繁忙で人で不足な点が悩みどころであるというコメントもあったようですから.体に気を付けながら可能な限りベストな作品を生み出していただきたいと思う次第なのです.

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