リアのステンメッシュ交換

以前取り付けたステンメッシュブレーキホースですが,フロントは長さがびっちりあって,その取りまわしの妙もあってお気に入りだったのですが,リアは少し長めで,S字を描いているのを見ると,どうもあんまりいけてない感じでした.それにリアブレーキがすごく効きが悪くなっていて,停車する寸前にフロント荷重が大きくなりお尻が大きく浮いてしまいます.どうも気持ちが悪いので,これを何とかしようと思いました.

まず,フロントまわりをしっかりとステンレスフィッティングのものを使っている手前,リアもやっぱりステンレスでしょうということで,適当な長さのステンレスフィッティングのものを探しました.といってもそう急ぎで探したのではなく,かなり長い時間適当に検索を繰り返しヒットしたものを狙う戦法で行きました.そのために時間はかかりましたが,長さもほぼぴったり,フィッティングの向きもなかなか微妙なものが入手できたのでした.ちなみにものはドカッティの純正(型番失念)で,長さは通常のバイクのフロントには短く,フィッティングの角度が90度曲げだったりするので,なかなか他に買い手が付かないのを狙ったというわけです.

さて,交換です.まずキャリパのブリードバルブを開け,ペダルをしこしこ手で動かしながら中のフルードを抜きます.ある程度抜けたら元のホースを留めているキャリパ側のネジを緩めて外し,またペダルを手でしこしこやりつつホース内のフルードを抜いてしまいます.マスタ側のホースを留めているネジを外して撤去は終了.ちなみに出てきたフルードが長さの割には少なかったような気がします.恐らくエアをかんでいたんでしょう.

確かに長さが少し長く蛇行しているのとホースの途中に高低差があるために,エア抜きがもともと不十分だった可能性が高いです.こうなると,新しいホースでのエア抜きは完璧にしてしまわないと気がすまなくなっちゃいます.

次に取り付けですが,このホースは90度の曲がったフィッティングが付いているのですが,これをキャリパ側につけ,マスタ側は微妙なねじり角を持ってバンジョーボルトが取り付くようになっているので,それぞれの方向に合わせてホースを取り付けていきます.ホースの取り合いが決まったら新たなクラッシュワッシャを入れ,本締め.

ひとまず外観的な出来上がりを見ると,まるでもともと純正状態からこの取り回しであったかのようなジャストフィット.ちょっと近年まれに見る出来栄えに少し我を忘れて見とれてしまいましたが,本当の性能を決めるのはここからの作業です.

まずエア抜きですが,今回はS字にはなっていないにしろ,エアが抜け切らなかったというのはマスタやキャリパのブリードバルブの経たりも多少影響しているでしょうから,もともと抜きにくい状況ではあるようです.そうなると通常の作業よりは難易度が高いと考え,今までの経験から作業の中で重視するポイントを変えました.それは速度です.速度といってもこれは見えるものの速度ではなく,見えないホースの中を流れていくフルードの先端の速度です.実は今までのエア抜きの経験の中で,極端にエアが抜きにくかったことが何度かあり,それを抜けるようにしたのが,この速度を留意した作業なのでした.実際流路の中のエアを抜くためにはその代わりの流体を流し込まなければいけないのですが,この流体が流れ込むためにはある程度継続して速度を与えることで結果的にスムーズにエアが抜けるのです.したがって,マスタ側はいつも正圧,キャリパ側は負圧にしてやることで速度が増し,簡単にエアが抜けるようになるのです.ということは作業はどうするべきかということになりますが,こまめにブリードバルブを閉めて数回マスタを押し,押したままブリードバルブを開けるというのを繰り返すことで,送り出し側の正圧,キャリパ側の負圧状態を継続することが出来るのです.

実際これをやるときは”ビオレ”は使わず,ブリードバルブにはホースをつなぎこんだままにします.本来はビオレはブリードバルブを緩めるだけで負圧をかけることが出来るのですが,低年式車の場合,ブリードバルブの気密性がだめになっているので,もともとがエア抜きしにくいケースはビオレを使わないほうが作業がしやすくなるのです.

ということで,かなりすばやく確実にペダルの押し込みとブリードバルブの開閉を交互に行います.なんと1分もやるとペダルには結構な反力が感じられるようになりました.フルードを継ぎ足し繰り返していると,反力はほぼ従来どおりになりました.でも,ペダルのストロークが大きめで,これでは遊びが多すぎてダイレクトな感覚がブレーキに伝わりにくく感じます.ここで納得していては今までと同じですので,ここは引き続きフルードを継ぎ足しつつエア抜きを続けます.

それでも約5分も間髪入れずにやり続けたところ,少しずつエアが抜けてきて,ペダルのストロークが約4cm程度となり,かなりダイレクトに利いてくるようになりました.こうなると従来とは格段の差ということになります.このような具体的な違いが実感できたのでエア抜きはひとまず終了です.


試運転です.まずブレーキの利きは間違いなく向上し,踏み込んだ分だけ利くような感じになり,ブレーキング時の車勢が落ち着いたというのを直感的に感じることが出来ました.今までは停止先で止まる前に車勢が前後に大きく振れていたのですが,それがなくなったことでまるで自分がうまくなったような気持ちになります.確かに従来はペダルのストロークが約8cmもありましたし,踏み込みきっても完全にブレーキが利いていないような状況だったので,ステンメッシュホースの効果ではなく,エア抜きを念入りに行ったことが多大な効果を生んだといえるでしょう.

ということで,エンジンや給排気周りだけでなくバイクのメンテナンスはとっても深いものがあるなあと感慨を受けたトピックでありました.

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