フロントステンメッシュ化(その2)

前回の無計画なフィッティングの結果,NSR用ということで入手したブレーキホースは9Rには短くって使えないことが判明しました.そこでただではおきない私がいろいろ工夫をめぐらせるところから今回は再開です.

まずNSR右用を9Rの右につけようとすると破損の危険があるわけですが,ここであきらめずNSR用の左を9Rの右側に当ててみたところ,こっちはジャストフィット.ということはこれを右に使い,9Rの左にジャストなホースをなんとかしなければよいということです.ところがいわば健常体のステンメッシュホースはもう品切れ.そうなるとその1本を買うか作るかしなければならないのですが,私はなんとしても本日中に作業を終えたいということで血眼になって改造の種を探しました.すると一本だけ使えそうな長さのホースが見つかりました.

このホース,フィッティングは片側しかついていませんがそのフィッティングはなかなか綺麗で,ホースそのものの破損もなくそこそこ綺麗な外観のものです.長さは9Rの左にジャストフィットで,あてがってみるとやっぱり9Rはまだ車齢も若いから綺麗なホースがいいよね〜ということで流用ホースが決まりました.

早速フィッティングのついていないほうにつけるフィッティングを選びます.フィッティングも結構なバリエーションの在庫を持っていて,こんな行き当たりばったりなことをやっていても動じない私なのです. ついているフィッティングは首ふり調整ができるものですので新たにつけるフィッティングは当然調整機能無しの通常のものを選びます.

ところが方針が決まりそうなところでまた違うことにかなり悩んでしまいました.その調整機能付きのフィッティングが新たに作るほうは現行のものなのですが,元々使おうとしていたNSRのものは一部にステンレスが使われている古いタイプのものです.このままでは左右のフィッティングが明らかに違うものになってしまい,せっかく9Rがうちでは一番新しい車体なのにやる気のない感じになってしまうのがなんだか許せません.

ここはあえてこだわりを持って,両側を新しいタイプの首ふりフィッティングにしてしまいましょう.ということでまずNSR用の左のホースを改造します.幸いにも首ふりの部分は特にオリーブなどの潰して気密性を得るようなパーツがないのでただ外して交換するだけです.この時点ではまだ首ふりフィッティングは完全には固定せず,自由に首ふりする状態にしておきます.これで右側用は完成.

9Rの左用は先ほど発掘されたホースですが,これは恐らくクラッチホース用か族車仕様の長すぎるものを途中で切って使った残りだと思われ,その切り口はあまりきれいではありません.ディスクグラインダーで切り口をきれいに直角になるように整え,表面のコーティングを約12mmのところで剥ぎます.フィッティングの根元側をホースに通し新品のオリーブをホースの先端のメッシュを開いて押し込みます.オリーブ内側の段差にホースが突き当たるまでしっかり押し込めたらフィッティングのバンジョーボルトを締めて行きます.

これで両側のブレーキホースが完成しました.左右とも車体にあてがって見ましたが計ったかのようにピッタリです.あとはいつものように淡々とブレーキホースを交換します.まずリザーバタンクの蓋とダイヤフラムを開放し,ブレーキフルードを左右キャリパのブリードバルブから抜いてしまいます.フルードが飛び散らないようにホイール周りやハンドル周りをウェスで養生して,ホースを下側から外して行きます.

新しいホースを付けたら,首ふりのナットを締めて方向を固定します.続いてフルードを注ぎエア抜きを行います.エア抜きは例の如くビオレを使用して約5分で終了.しばらくフルードの漏れがないかニギニギを繰り返しチェック.その後左右のキャリパのブリードバルブから1ストローク分だけフルードを抜きエア抜きを完璧なものにします.

するとブレーキレバーを握ったときの感覚がまるで以前の感覚に戻ってきたことが認識出来ました.握ったときの,レバーの反力で指の腹に痛みを感じるほどのガツンといった懐かしい感覚を感じることが出来たのです.ちょっとこれには感動.感動に浸っている間にフルード漏れは発生しませんでしたので,元のホースを外したときに分岐部分から取り外した空気抵抗を低減するために付けられていると思しきプラスチックの板を取り付けます.でもこの板はネジ2本で三股に付けられていたのですが,あいにくその一本がホースの分岐部分をはさんで止められていたので,そのままでは出来た隙間の分板がこけてしまってちゃんと取りつかないのです.

これではまずいということで,ネジの長いほうにM8のナットを二つ噛ましてなんとか板の姿勢をキープしました.あとは再びフルード漏れを確認するのとブレーキレバーの握り心地を何度も味わってその日の作業は終了.


さて試運転です.握り心地は作業時と幾分違わないものですので,あとは乗り出しの握り転けを注意するだけ.しばらく走ってみると,絶大なるブレーキの信頼感を感じざるを得ません.コーナーの入り口で多少厳しい突っ込みをしてもそれなりの握り込みですぐに思った通りのスピードまで落とすことが出来ます.今まではそれが出来るときと出来ないときがあって,おのずと緩やかにコーナーに進入していました.いわば9Rに乗る楽しみの半分以上をスポイルしていたっていうこと.知らず知らずのうちにこれほどの違いが生じていたとは今更ですが驚きです.

10年ほど前はマスターシリンダー側の気密性が悪く,フルードに水分が混ざったりして,車齡も10年を越えると確実にブレーキ性能が極端に劣化してしまい,ほとんどの中古車はステンメッシュ化されていたのですが,最近はステンメッシュ化されていない10年選手を多く見かけるようになりました.

そんなところにも時の流れを感じざるを得ない今日この頃なのでした.

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