古賀朋絵 ― 青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない

青春ブタ野郎シリーズは鴨志田一さんの原作で,元より期待が高かった作品のアニメ化ということもあり,はじめっから映画までしっかりと堪能させていただいた作品です.丁度その1期の直前に同じく鴨志田さん原作のJust because!が放映されていたので,結構似通った背景の作品を立て続けに出してくれたので,連続して楽しめたというのもあります.その青春ブタ野郎がこのコーナーで一度も取り上げられていないのは,実はその人選に悩んでいたからにほかありません.というのもこの作品の中で一人選ぶとしたらどうしても咲太くんにしないと一般受けしないのではないかと思っていたりしたわけなのですが,正直それは私の主義に反するわけです.そして先述のJust because!においては瑛太くんを選出したこともあり,ここではやっぱり私の好きなキャラということで古賀ちゃんを挙げたいと思うのです.

この作品についても私は例のごとくアニメを楽しく見るために原作を読んでいません.なので話は全てアニメの中の話ということになります.さて,ここで古賀ちゃんについてですが,主人公として登場するのは原作の2巻,青春ブタ野郎はプチデビル後輩の夢を見ないというサブタイトルのところで登場します.アニメにおいては5話からということになりますが,古賀ちゃんは主人公になる前に強烈なインパクトとともに麻衣さんとのデートを邪魔する形で登場してきます.まあ涼宮ハルヒシリーズと同じような感じでいろいろなストーリーを一つのアニメ作品に入れ込んでいるので,まずは登場人物紹介のような感じで最初っから登場したとも思えるのですが,古賀ちゃんについてだけは,強烈なインパクトを与えながらの登場となったわけです.そしてそのまんま映画のストーリーの中でも咲太くんを危機から救う重要な役回りを買って出たりするわけで,この一連の作品の中でキーパーソンでもあり,その魅力は様々な形で表れていたりするのです.

<福岡時代>

まず古賀ちゃんは福岡から高校入学とともに咲太,麻衣さんのいる高校に入学してきました.古賀という苗字から転々と引っ越しを続けてきた転勤族というわけではなく,何かの親の都合で初めて九州を出るような感じで引っ越してきたと想像できます.中学時代の古賀ちゃんは咲太に見せた写真からもあまりいけていない,イモな感じであったわけですが,私が想像するにこの出身地に関しての言い回しが博多ではなく福岡であるところは,やはり名前にその思い入れがあるのかなと思います.というのも古賀という苗字自体は九州地方全域でそんなに珍しい苗字ではありません.しかし福岡に古賀市(旧糟屋郡の一部)があったり,古賀政男さんと同じ漢字にすることでその出身地の大川市あたりをイメージさせるような工夫があるように思います.要は博多ではない福岡.ちなみに私の期待としては古賀市よりも博多からも距離が離れている大川市の方に一票って感じです.なので博多出身とは違い,もうご両親が地元出身で家の中では博多弁だけしか話されていない状況で育ち,標準語を話す必要も一切なかったという境遇であったということでしょう.

そんな古賀ちゃんのはじめてと推測される九州以外への,しかも関東圏への引っ越し,転校は自分を変える大きなチャンスだと思ったに違いありません.恐らく引っ越しが決まって,進学する高校を決める時なども相当気合を入れて選んだことだろうと思います.そしてその夢の世界のような首都圏に近い高校でデビューできたわけです.

<人に嫌われないようにするということ>

サブタイトルが前回のカタリナと同じ点はご容赦いただいて,古賀ちゃんの場合は最初はこの友達から嫌われないことに専念して慎重に高校生活を食ってきたわけです.一方で自分のこれまでと理想のギャップの真っただ中,友達に少しだけ博多弁を漏れ聞かせながら,人気者を貫こうとした古賀ちゃん.そこへ意図せず先輩からの告白を受け,もうどうしていいかわからなくなってしまったということが発端で思春期症候群を発症してしまうことになります.しかしこの思春期症候群は自分ひとりがループするのではなく,なぜか咲太のみが道連れにされてしまうことになります.

咲太がループに引き込まれたのは当然咲太との未来が少しでも変わってくれないかという潜在意識がそうさせたのであり,本編のメインルートとも言えます.それ以外には例の友達の想い人である先輩に告白されてしまったという悩みがあります.正直私の経験から言って友達の想い人を振ったからといって,特に仲違いの原因になるとは思えませんが,今時のJKの世界ではあるあるなのかも知れません.まあ仲違いはなくても気まずくなるとかはあるんでしょうね.古賀ちゃんのキャラクター分析の上ではこれを創作物の中の話だからと言って片付けるよりも,古賀ちゃんの設定としておいたほうが面白そうです.まあそんな特殊な考えの人だったからこそ思春期症候群に悩まされることになったのですから.

結果的には何度かのループののちの咲太の適切な処方のおかげで,”人に嫌われても自分に素直に生きる”道への路線変更ができたわけで,古賀ちゃんとしては一皮むけて,将に咲太くんのおかげで大人になったということになりましょうか.

<ループについて>

何かとハルヒシリーズのキテレツ現象と思春期症候群の設定が似ていることからオマージュ作品的な感じもうけますが,そもそもハルヒシリーズのキテレツ現象自体はSF小説など含め王道ともいえるものが多く含まれていますので,実はそれほどオマージュ的な意味はないのかもしれません.でも,校庭の真ん中で事が起こったり,何度も満足がいくまで無意識にループしてしまったり,未来から自分の過去を変えようとする人が現れたりと,設定や性別,目的などが違いはしますが,結構根源的には似ているところが多いかもしれません.むしろこれは鴨志田さんが意識的にやっているのかなとも思います.

で,古賀ちゃんが起こしたループ現象ですが,ハルヒシリーズのエンドレスエイトとの違いは,

(1) 古賀ちゃんと咲太だけ記憶が残る(ハルヒでは長門だけ)
(2) 咲太が意識して変化させるので,同じ内容の繰り返しはない
(3) 戻る期間が急に長くなったりする
(4) 努力して意識して正解を探すので回数も少ない

といったところでしょうか?これはエンドレスエイトがあの10万日以上期間を経て長門が無意識の中変化をしていく,”消失”のエピローグとしての役割があったのに対し,本作では咲太の配慮から古賀ちゃんが克服し,この出来事を利用して成長していくという 点が違います.というかヒューマノイドインターフェイスも成長すると考えれば,結果的には同じ狙いというころになりますかね?

<愛すべきキャラクター>

結論的には咲太に諭されたことでしっかりと落ち着くところに落ち着くように最終ループを経て,それでも咲太とはいい先輩後輩の関係を築くことができ,新たな友達も作り,また平穏な高校生活を送ることになります.咲太目線で言えば,自分をしたってくれるかわいい後輩が,なんでも打ち明けられるいい友達になった感じです.そんなことを経た二人なので,”夢を見ない”の中では咲太のピンチを唯一救える存在として活躍することになるわけです.正直もともとの咲太に対する思いを引きずっていたら,あんなサバサバと対処できないと思いますが,そこは流石九州女.頼れる存在として役割を果たしてくれたりするわけです.ここらへんすごく古賀ちゃんが健気で,ホント咲太が麻衣さんと破局したときは是非にとか思ってしまうわけです.

まだまだ続いているシリーズではありますし,古賀ちゃん主役のお話が再び取り上げられないかな?とか思っていたりします.やっぱり福岡での”黒歴史”を絡めて,何かしら問題を抱えている昔のお友達が上京してくるとか,ちょっとご両親とかを絡めてみるとか,また困った人に告白されるとか.古賀ちゃんを単なる友達ではなく,より咲太と関係を深められるような新しい物語が再演されないものか,首を長くして待っている私なのでした.

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