黄前 久美子 ― 響け! ユーフォニアム

今回ようやく長文タイトル+句点以外の作品からになります.響け!ユーフォニアムの黄前(おうまえ)ちゃんです.作品としては吹奏楽部でかわいい女の子たちが出てきてそれなりにコンクールなんかに出てというともすれば宇治ということもあり,はんなり系になってしまいそうな背景ながらも,さすが京アニさん.原作のチョイスにスパイスが利いています.

<精神分析>

というのも,この主人公ともいえる黄前ちゃんは中学時代は真剣さからは一歩引いて吹部をやってきたタイプ.そこへきてすでに自覚している一言多くって損してきたその性格で,麗奈との中学吹部の最後のエピソードに若干後ろ髪を引かれる思いもあったのでしょう.そこにクラスの新しい友達に引っ張られ無理やりの再会を果たすことになるわけです.実は黄前ちゃんがこんな感じで基本的に無気力になってしまったのはお姉さんの影響もあるのかもしれません.幼少期にお姉さんにあこがれて始めた楽器.なのに自分が高校でも吹奏楽で頑張ろうと思っていた矢先,そのお姉さんが吹奏楽を辞めてしまった.とたんに目標を失ってしまい,無気力になってしまったのではないでしょうか?

で,そんな黄前ちゃんがこのストーリーの中でどんどん変わっていくのです.元がひねていただけに,ただひたすらまっすぐな方向に,ためらいながら変わっていく姿.様々なトピックスの中で必ず精神面で成長していくそんな姿に魅力を感じざるを得ないのです.

<葛藤と和解>

でも少しの間でもくせになってしまったことというのはなかなか治りません.やっぱり本当のことをぼろっと言ってしまい,葛藤しつつも結局はその責任を取ることに専念する.マイナスを自ら生んでしまい,自分で回収して丸く収める.実はそれが彼女の魅力なんです.でもはじめは自分の一言多いところや冷めているところがマイナス要因であるとコンプレックスを持っていたわけですが,これが麗奈との和解(?)というか相互理解がお祭りの日のあの一件でできたことがある意味一皮むけた一瞬になるわけです.そんな自分がコンプレックスに思っている側面を認めてくれる友人がいると初めて認識したことで,それ以降葛藤しつつも必ず前向きに解決するべく動けるようになってくる.その結果として徐々に自分の周りに人が集まってくるような,人徳がどんどん形成されていく感じ.う〜ん,これって普段自分にできていないことだからなおさらあこがれてしまうんでしょうね.

<あすか先輩の説得シーン>

で,私が一番好きなのはあすか先輩の説得シーンです.家を出ていくおねえちゃんとのやり取りと思い出,そして意図せずに入り込んでしまい知ることになってしまったあすか先輩の事情と感情.当初の無気力モードからは考えられないほどの積極性であすか先輩を連れ出し,説得をするまでは良かったのですが,あすか先輩の的を得た言葉のオンパレードにさらされ一旦敗北モード全開になります.確かに高1が高3を説得なんてことはそもそも不可能です.この多感な時期の2年の月日というのは精神面での成長も著しく,あすか先輩の試合巧者ぶりもあって,普通の感覚であればあきらめてしまうでしょう.しかし黄前ちゃんはここで反撃に出ます.あすか先輩がということではなく,私がそうしたい.そしてそれはあすか先輩が後悔しないことであるという,なんとも自分勝手な論法で自分のすべてを吐き出した.カッコいい.気がついたら私も黄前ちゃんと同じようにボロ泣きしてしまっていました.

ちなみにこの作品,部活のトピックを通じて1年の未熟さと3年の完熟ぶりを表現するためか,女子部員キャラクターの声優さんのキャリアがそれ相応の階層になっています.特に3年はあすか先輩をはじめそうそうたる声優陣といえます.2期が終わった後はそんな3年生が抜けた後のキャラクターのみならず声優さんの成長にも目を向けて見ていきたいなと思う次第です.作品としては映画もできましたし,原作はどんどん進んでいるようですからまだまだアニメが続きそうな気はします.なので今後も成長し続ける黄前ちゃんから目が離せない私なのでした.

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