加藤 恵 ― 冴えない彼女の育てかた

今現在,そろそろ完結となる映画の公開が待ち遠しくなってきているわけですが,そのメインヒロインが今回のお題.加藤ちゃんの存在を私なりに一言で表現すると,それは内なる想いということになります.英梨々や詩羽先輩,美智留,出海ちゃんとか灰汁の強めなキャラがいっぱいいる中で,一番強情で一途だと思います.そしてそれは倫也くんや周辺にはひた隠し,なおかつそれら灰汁の強い4人には惜しげもなく表現しているところ.すごく器用なんだなと思います.今回はそんな加藤ちゃんの変化を中心に考察していきましょう.

<埋もれていた頃>

本作はいわゆる原石発見のような醍醐味のある話ですが,実のところ加藤ちゃんは元々輝いていたのかもしれません.でも持ち前のステルス性能のおかげで誰にも気づかれずにきた.しかしそれもあの坂の上で倫也くんにステルス性能を打ち破られ,メインヒロインを目指すという理不尽なミッションを抱かされ,はじめは外的圧力に屈服する形であったものの,どんどん変わっていってしまう.

で,元々の加藤ちゃんはどうだったのかというと,わざとステルス性能を発揮していたわけではないと思うわけです.すなわち生まれたころからそうだったのか,あるいは何かのきっかけがあってごくごく無意識に目立たないようになっていたのではないかと考えるほうがおもしろい.そして生まれつきというよりは,何かのきっかけ,それも倫也くんが関わったエピソードが小学校よりも前の幼少期にあったのではないか?しかし今までのアニメ,原作小説含めそのような以前の加藤ちゃんについて,その所以や生い立ちに関しての部分はほとんど触れられていません.ここらへんはスピンオフや2次創作の狙いどころなのでは?などと思ってしまうわけです.

<変化>

で,そうなると加藤ちゃんの一体何が変わってきたのか?ということが気になります.まず小説のほうはあんまり思い出せないのでアニメのほうを軸に語っていくと,倫也くんとあってしばらくはかなり頑固に変化は見られません.で,内面では少しづつ変わってきたかな?というところで初めてそれが露見したのが上のシーンです.まあシーンではなく柏木エリ先生(深崎暮人先生)のイラストからなんですけど,この表情です.

まあこの表情を引き出してしまうこと自体,加藤ちゃんにとっては自分でも認識していなかったか,潜在的(にしておきたかった)なはずの倫也くんへの気持ちをはじめて表に出した瞬間 ということでもあり,英梨々ちゃんにとっては寝た子を起こしてしまうという大失策でもあったりするのです.

そしてこれをきっかけに自分の見た目にも少し変化を求めていったがゆえに,終業式の前の日にポニーテールとなり,その後ロングヘアになっていくことになります.加藤ちゃんの見た目については倫也くん目線のものしかないので,もしかしたらそれ以外の部分でも変わってきているのかもしれません.まあ私服で会うときはいつも違う服であることとかは,比較的制服であることが多い詩羽先輩,クリエイターとして中学校のジャージ+メガネにまでなってしまう英梨々ちゃんとある意味対照的といえるでしょう.自分が自分でないような奇妙な気持ちを感じながらも徐々に引き込まれて,結果的にどんどん綺麗になっていく.

<情熱>

外観のみが変わって行っているだけではなく,感情面でも変化が見られるのが加藤ちゃんというキャラの魅力でもあるかと思います.やはり冬コミが終わったところで我慢しきれず多少抑えながらも不満を表現した瞬間.そして再始動の日にBlessing softwareのことが大好きと見破られた後の感情の爆発.そこから夜に向かってのまるで甘えているかのような感情の吐露,最後にそんな自分を忘れてほしいといった件.魅力あるキャラというのはこのようなストーリー中の変化が生み出すといって過言ではないと感じます.

まあそれほどの情熱は美智留ちゃん含めた他の3人は持ち合わせていないと思えるほど,純粋で一途で力強いものであり,それは相手が倫也くんだから引き出すことが出来たということなんでしょう.

まあ本作は魅力的なキャラが勢ぞろいしている中で,やはり加藤ちゃんはメインヒロインを張れるだけの器であるといえるのだと思います.まあここまで変化を中心に述べてきたわけですが,よく考えるとタイトルの中に育て方とあるわけなので,加藤ちゃんが育っていくさま自体がこのストーリーの中の柱なのであって,いかにそれを魅力的に見せてくれるか,それを究極的に原作,アニメともやれていることが本作の優秀たる所以なのでしょう.

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