タカオ ― 蒼き鋼のアルペジオ

蒼き鋼のアルペジオについては,サンジゲンという製作会社さんがフル3DCGでキャラクターも動かすとか,岸誠二さんが監督,上江洲誠さんが構成をするというので,まあ当たりはずれもあるかな?なんて思いながら視聴を始めた作品でした.しかし一話目のいろいろ説明っぽい部分を矢継ぎ早に通り越した後は,構成,キャラクターの動き,脚本,戦闘シーンを含めてすばらしい完成度で一気に引き込まれ,3DCGの可能性を大いに感じさせられた作品であります.

まあこの時点でまだ艦これやアズールレーンのアニメが未放映でしたので,ある意味露払いのような見られ方をしていたのも事実でありましたが,正直現在アズールレーンもそれぞれ1クール以上放映を終えた時点で,私としては蒼き鋼のほうが作品的には評価できると判断しております.

原作ストーリー,背景設定,キャラ設定には奇想天外な部分が多く,なかなかキャラクターデザインや,キャラクター設定も動かすにあたって難しいところがあったのではないかと思いますが,ほとんど登場キャラがとても魅力的で,3DCGなのに作画で創造されたキャラクターの魅力のさらに上をいくような味付けができているのもこの作品の優れたポイントなのだと思います.

その中で,今回ご紹介するタカオについてですが,ここでは主にメンタルモデルのほうのお話です.501と一緒に登場した最初は,ほんとに高慢ちきな感じを醸し出して,自信満々で群像と401に挑み敗北します.その直後様々な敗戦の原因について思いめぐらせる中で,函館の本屋で見かけた絵本で群像というユニット=艦長を搭載したいという思いが生まれ,それだけで霧の艦隊を出奔.一途な思いを抱いて以降はを何を知る人ぞ知るツンデレ重巡そのものとなってしまいました.

<めくるめく変化>

で,このタカオの何が特徴的かというと,それは登場してからごくごく短期間での変化ということになりましょう.はじめは誇り高い”霧”の主力艦でありつつメンタルモデルを生成したばかりの状態で登場し,対401戦敗北の直後から様々なものを持ち前の好奇心からどんどん吸収していく.まるで赤ちゃんの成長を見ているようでなんとも微笑ましく楽しいわけです.これに沼倉愛実さんの声があまりにもジャストフィットしていまして,キャラに一層の魅力付けが実現している感じ.そういえば沼倉さんって逢坂良太さんと結婚してこの2月には活動を終了とのアナウンスをされたとか.ご夫婦ともとっても味わいの濃い声優さんであるので,家庭内の会話が一体どんなものであるのか非常に興味の沸くところであります.ちょっと脱線しましたが,とにかくそのタカオの変化が声優さんの力量によってもうまい具合に表現されているのがタカオの魅力だと思うのです.

<愛を貫く姿勢>

ツンデレ重巡とはいえ,タカオの魅力はそのツンデレでも乙女プラグインでもなく,その愛を貫く姿であると思います.アニメ版では群像への愛のため群像を探し海底に単独潜り,401の群像への愛を目の当たりにして自らの艦体とメンタルモデルを犠牲にしてまでも救出を果たします.アニメを見ている方は早々にメンタルモデルの形成さえもできなくなってしまって心配したんですが,結局は艦体は失っても比較的早いうちにメンタルモデルが復旧するあたりタカオというキャラクターの人気の高さがうかがえます.

<実際の高雄という艦>

メンタルモデルのタカオも魅力的ではありますが,タカオ≒高雄という船も私にとって特別な船という感じではあります.私は実は小学生ころ旧帝国海軍の艦船マニアだった時期がありまして,ウォーターラインシリーズの組立にハマっていた時期がありました.小学生がお小遣いで購入できるお手軽さもあって,合計で30隻近く組み立てたでしょうか?もうそのリストがあったりするわけではないのですが,この高雄の大きな艦橋は特に記憶が残っています.恐らく当時私が組み立てたのは高雄ではなく愛宕か鳥海,あるいはその両方であったと思いますが,この高雄型というのは.妙高型,最上型に比べてなんか威風堂々といったシルエットでしたので,その30隻近くを並べて人形ケースに置いていたのですが,比較的目を引きやすい艦影であったわけなのです.そんな中,艦これでは愛宕と並んで高雄の人気はトップレベル.アズールレーンにおいてもなぜか同じ立ち位置にいるように思います.これはやはり,その実際の艦に対する人気が高いが故に擬人化したときのキャラクターにもそれなりの魅力付けがなされている証拠なのかな?とか思うわけです.

アニメのほうはその人気が故にとんとん拍子で劇場版が2つも上映されるに至った本作.恐らく3DCGでキャラクターを作っているため作画に必要とされる労力もそれほどでもないとか,そういった点が影響しているのかもしれませんが,恐らくその3DCGのキャラクターであるがゆえに,しっかりと魅力付けをするという工程を踏んだことが作品としての成功をもたらしたのだと思います.

以降,3DCGのアニメが多く輩出されていますが,やはり3DCGの技術がいかに素晴らしいものになってもそのキャラクターを作り出すのはクリエイターさん,声優さんたちの創意工夫なのだなと感じる次第なのです.

KEN-Z's WEBのトップへ NEXT