雪野 百香里(ユキちゃん先生) ― 言の葉の庭

そろそろということで映画,しかも新海作品からユキちゃん先生です.私ならずも新海さんの作品ファンの中では,2作品に出演しているとても重要なキャラだと思います.なので新海作品ファンにとって好きにならざるを得ないキャラといっても過言ではないのだと思います.でも今回キャラとしては君の名は。ではなく言の葉の庭のほうで語ってみようと思います.なのでユキちゃん先生ではなく,今回は雪野先生で統一していこうと思います.

雪野先生のプロフィールは映画の情報だけでなくノベルのほうの情報からすると出身は愛媛,それも田舎のほうということになっています.そして幼いころからの田舎には似つかわしくない雪野先生の美しさがノベルのほうでは何度も強調されています.それに成長期にはその風貌のみならず体形の素晴らしさまで描写されており,いかに雪野先生が美しさの象徴であったかが文章で事細かに描かれています.ではなぜ映画ではそのような点を描写しなかったか?ということになりますが,映画ではあえて困難に敗れくたびれてしまった雪野先生を表現したいのであえてその部分を割愛したのではないかと思います.まずはそういったポイントから述べて見ましょう.

<雪野先生の美しさが映画本編で封じられた意味>

まずは高校生までの田舎での生活の中で周辺からの疎外感を感じるほどの雪野先生の美しさゆえ,田舎から脱出したいとさえ思うまでになってしまった境遇が特筆されています.それは次回作での三葉の境遇に繋がるようなものでもあるのかなと思います.ただ三葉の場合は宮水家という特殊な境遇によるものということで薄められているような感じですが,雪野先生は正直ごく個人の思春期の悩みの大半に該当するほどのなガチな環境であったことがわかります.

そして秋月くんの高校で遭遇することになった人生初めての強烈な挫折.恐らく自分の境遇から打たれ強い部類なんだとと思っていた雪野先生が,完膚なき苦難にさらされることでいわゆる緊急避難のような意味合いであの東屋に吸い寄せられたわけです.

時を同じくして,秋月くんは高校生活の中での物足らなさというか言葉通りの違和感を雨の日に限って東屋で晴らすことになり,二人は偶然の出会いを果たします.恐らく雪野先生は少なからず秋月くんの胸の校章を見て運命めいたものを感じたかもしれません.そして東屋でのひとときが徐々に安らぎとなって雪野先生を癒すことになるのです.しかし秋月くんは靴への思い入れが強く,恋に疎いとはいえ雪野先生が美しいまんまであったら自然に恋に落ちてしまっていたかもしれません.それでは物語として面白くありません.ですので出会った瞬間はくたびれ,やさぐれた印象を持たせ,それが東屋で同じ時を過ごすにつれ魅力が再び開花して,その結果として秋月くんが魅了されていくといった変化が発生したのです.その変化がこの物語の魅力の一つであるといってよいでしょう.

<人間なんてみんなどっかちょっとずつおかしいんだから>

この言葉は東屋の中で何気なく雪野先生がふと口にした言葉です.そして私は新海さんはあの映画の中で,一番この言葉を言いたかったんだと思います.この言葉は正直私にも一番響きました.というのも私のwebを見ていただいている人にはとっくにわかっていることだと思いますが,私は所詮変わり者です.それを武器にして生きてきたといってもいいほどです.でも世の中の人は人と違っていることを極力避けます.例え自分が少し人と違っていると感じても,それを表現しないことがいわゆる美徳であるかのような画一性が重要であるかとのような.でも私から見ても,そんな画一性を貴んでいるような人でさえも,人とは違う個性があることを私は幼いころから感じてきました.まあそこらへんは自分がAB型であったり,誕生日が3月の終わりのほうであり,自分が常にいやというほど人より劣っていると感じざるを得ない環境で育ったことにもよると思います.

この言葉が多くの人の救いになり,個性の意味するものをしっかり印象付けて人生を歩むことが新海さんの望むことではなかったのかなと思うわけです.

<雪野先生の影響>

雪野先生から受けた影響ということで上記の言葉のみならず,私の生活で様々な側面で雪野先生の影響があったりします.

・梅雨時になるとなぜか飲むのは金麦が多い
・板チョコはメインがGhana
・都バスが空いていたら一番後ろの席の真ん中に座る

3番目のは三葉の席に座るときもありますが,空いていたらとにかく後ろに座るのが癖になってしまっています.まあ,なんのこっちゃという感じですが,明らかに言の葉の庭を初めて見た瞬間から上記3点は変わったと自分でも思います.

<餌付け>

あの豪雨のあと,わざわざエレベーターが点検中になっていた雪野先生のマンションで,秋月くんはオムライスをふるまいました,それに対し雪野先生はコーヒーをふるまい,その結果として秋月くんの心から漏れ出た告白を聞くことになります.これってお互い餌付けしたような感じだよねとか思ってしまいます.ですので,君の名は。カフェとかである意味大成功の結果となりましたが,約5年たった今むしろ言の葉の庭カフェをやってみて,秋月くんオムレツ,雪野先生の卵焼き(カルシウムいっぱい),雪野先生のコーヒーなどをそろえていただきたいなと思うわけです.

ここまで言の葉の庭に準じたお話ばっかりしてきましたが,私は秋月くん含め雪野先生が将来住むべき土地は糸守なんだと思っています.そして,雪野先生は先生を続けながら,秋月くんがカフェをやっていて,お客がいないときはその裏の工房で靴職人として頑張っている.といった感じ.休日はコーヒーだけのときは雪野先生が煎れるコーヒーで事足りるのですが,そのカフェの売りでもあるオムライスのオーダーが入ると裏から面倒くさそうな顔をして秋月くんが顔を出して黙々とオムライスを作ってくれるとか,そんな設定がまさに萌える展開です.ちなみに秋月くんが2013年に16歳だったとして,三葉とテッシー,さやちんは2013年の17歳.ということで雪野先生の教え子でありながらその旦那は1歳年下という微妙なシチュエーションで,しかもそこに来て瀧くんは2歳年下で職人として秋月くんを尊敬の眼で見ているとか,そのカフェはさぞかし楽しい空間になるんだろうなとか想像してしまうわけです.

まあ妄想がまた爆発してなんやかんや言いましたけど,新海監督はそんな雪野先生の人間ぽいところを尊重し,君の名は。にも出演させたんだと思うわけなんです.

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