No.1- エンジンオイルの選定と交換方法(2.交換作業編)

前回バイクのエンジンオイルの選定について語りましたが,はっきり言ってあんまり為に成らなかったような内容になってしまいました.所詮あまり高性能オイルを求めるような走りをしないので,維持費を抑えつつ車体のコンディションを保つためにバイクの場合は何よりもこまめなオイル交換が有効なので,よっぽど変なオイルでなければ私の場合は許容だったりするので.ということで今回はそのエンジンオイルの交換作業について,特に作業中の不具合,トラブルの解決方法などをご紹介します.

<ドレンボルトが緩まないっ!>

まずオイルを購入していざドレンボルトを緩めようとして硬くて断念したというようなケースが見受けられます.ここをちゃんとやらないとねじをなめてしまったりさらにトラブルのダメージを大きくしてしまいますので,まずオイルを購入する前からやっておくべきことを列挙してみます.

(1)手持ちのボックスレンチをドレンボルトにあててみて,ねじ頭をしっかりとつかみ回せるか確認する.
(2)手持ちがなければちゃんと合うものを購入する.
(3)手持ちのラチェットハンドルでねじを少し緩めて戻す.
(4)緩まなければ長めのスピンナーハンドルを購入し(3)と同じことをする.
(5)ここまでできて初めてオイルとドレンワッシャを購入する.

要は,とにかくドレンボルトが緩むかどうかもわからない状況オイルだけ買っても,結局無駄になるでしょうし,バイク屋さんにオイル持ち込みで交換だけ頼んでも嫌な顔されてしまうかもしれません.そんなことにならないようにまずはドレンボルトが緩むかどうかを確認しておくことが必須なのです.これはオイルフィルタを交換する場合も同じくオイルフィルタの蓋やカートリッジ式のオイルフィルタを購入する前に,工具をそろえて緩められるかどうかを確認しておくべきということになります.そして,いずれもねじの頭をなめてしまうことがもっとも怖いので,まずは(1)を確認したうえで,レンチを回す瞬間にしっかりとねじ頭にボックスがはまっていることが何よりも重要です.なので,(1)でいいかげんな確認をしてボックスが甘い角度でしかはまらない状況などで強行してしまうと,取り返しのつかないことになってしまうこともありますのでこの手順を強くお勧めするわけなのです.特にバイクの場合はマフラーを交換していると,ドレンボルトを緩めるスペースがエキパイで阻まれてしまい,作業できないことがあります.その場合はマフラーとエキパイを外す必要がありますので,その作業がご自分でできない場合は最初っからお金がかかるのは覚悟してバイク屋さんにお願いした方がよいです.

<ドレンボルトの頭をなめてしまった!>

上記でさんざんボックスのはまりについて口を酸っぱくして主張しましたが,とにかくスパナやモンキーレンチでドレンボルトを回すのはお勧めできません.でも結構旧車などを含め,前オーナーなどにそのような工具で回されてボルト頭が舐め気味になっているケースもあります.で,ボックスをしっかり当てているつもりでもねじ頭をなめてしまうことは完全に防止することはできません.ドレンボルトをなめてしまった場合は下記のような解決策があります.

(1)なめていない範囲が残っている場合,薄めのメガネレンチ(トネの超ロングめがねレンチなど)で回す.
(2)ボルト頭の側面を2面が平行になるように削り,大きめのロッキングプライヤーで挟み,回す.
(3)ねじの頭を飛ばし,残ったねじの中心にねじ径より少し細い穴をあけ,エキストラクターで回す.
(4)オイルパンごと外し,ねじが取れないオイルパンはあきらめ,オイルパンを交換する.
(5)(オイルフィルタ蓋の位置がオイルパン底とほぼ同じ場合),オイルフィルタ交換の手順でオイルを抜く.

私の場合,(2)までやってダメだったら中古のオイルパンの購入に走ります.(3)は結構失敗することが多いですし,結構オイルパンに下から作業するのに骨が折れるので.(4)は希少モデルなどでオイルパンも入手できない場合はこんな感じになります.(5)については多少オイルがオイルパンに残ってしまうことにもなりますが,カートリッジタイプではない場合は大体オイルパンとそう大きく違わない高さまで残留オイルレベルが下げられるケースが多いので,合理的ともいえます.

<旧オイルをできるだけ抜くにはどうすればいいの?>

まず,オイルパンの底面はバイクが正立したときに水平になるようになっていますので,ドレンボルトを抜く前にバイクを正立させた状態で暖気運転をしてオイルの粘度を下げてからドレンボルトを抜くとオイルの抜けが早くなります.またオイルの落ちが収まってきたところでセルを回して数秒エンジンを回してやると循環経路の中やクランクシャフトやギア周りのオイルが落ちてきやすくなります.

で,早さは求めないで,できるだけオイルとともにエンジン内の汚れを落とすのが目的と考える方も多いと思います.私の場合結構長期放置車のオイル交換をすることが多いのですが,結構この最後の方に落ちてくるオイルにスラッジが多く混ざっているケースがあります.このスラッジを残したまんまだと新しいオイルの効果も半減してしまいますので,可能な限りこのスラッジ混じりのオイルを出し切りたいわけです.その場合,廃オイル受けを2つ用意しておき,大体抜けたところで廃オイル受けを入れ替え,廃オイルのたまっているほうをキッチンペーパーで軽くろ過してオイルジョッキに入れて再び給油口からできるだけ勢いよく注ぎます.こうすることでまだ暖気運転の熱が残ったオイルがオイルパンに勢いよく落ちることでスラッジがオイルパンの底面から浮きやすくなり,ドレンから抜けてきやすくなります.抜けてくるオイルのスラッジの混ざり具合を確認しつつ,まだ残っていそうな場合はもう一つの廃オイル受けと入れ替えて同じことを繰り返します.こうすることでオイルパンのスラッジのようなものを簡易的に可能な限り抜くことができます.まあフラッシングオイルを使えばいいんでしょうけど,フラッシングオイルは高額ですし,都度ドレンボルトを締め暖気運転するのも面倒ですし,何よりもフラッシングオイルの場合はオイルパンに継続的に勢いよくオイルを落とすのができませんので,最終的な効果は高かったりするのです.まああんまりにも廃オイルの質がひどい場合はやりませんが,大体長期放置車であっても水が浸入していない場合はこの用途に足るケースがほとんどですので,もしもの好きな方がいらっしゃったら,やってみるのもよいのではないでしょうか?とにかく暖気運転の熱が残っている場合は効果が高いので,急いでやりたいのですが,慌ててやってオイルをこぼしてしまうのはかえって時間をかけることになるので,落ち着いて作業するのがコツであったりします.

<オイルの量はどうすればいいの?>

まずオイルの量ですが,規定量というのがサービスマニュアルにあったりしますが,とにかく車体を正立させ,オイル点検窓の上下限の真ん中が理想です.

ただ,オイルの循環路にまだオイルが満たされていない状況では実際必要な量に対してショートしてしまうケースも出てきてしまいますので,オイル交換前と同じくオイル交換後もいったん暖気運転をします.時々アクセルにあおりを入れてオイルをとにかく循環させることでオイル循環路にオイルをいきわたらせてから,エンジンを止めてオイルレベルが安定するのを待ちます.ここでオイルレベルが低ければ継ぎ足して作業終了となります.

また,旧車でエンジンにオイルにじみがあるケースなどはオイルは徐々に減っていくはずですので,オイル窓は定期点検してこまめにオイル量を確認し常に一定のレベルになるよう調整するのと,オイルの減る量と走行距離の関係をメモっておき,長距離を乗るときにあらかじめどの程度多くオイルを入れておけばよいかを把握するなども必要かと思います.まあオイルにじみを見つけたらエンジンをばらして修理するのが正当な流れなんでしょうけど,そこまでやらないと旧車に乗ってはいけないわけではありませんので,だましだましでもノートラブルでバイクライフを楽しめればよいのかな?とも思う次第なのです.

<廃油の処理はどうしたらいいの!?>

廃油の処理については私の場合はオイルパックリももったいないので,金属くずの付着していない廃ウェスを大きくて厚めのビニール袋を2重にした中にいっぱいになるまでためておき,それの中に染ませて処理します.吸油性がそれほど高くない繊維の場合は結構な容量が必要ですが,廃ウェスなんてすぐいっぱいになりますし,結構これでオイルパックリと同じく普通ごみとして処理してしまいます.ビニール袋が小さいと回収車で機会に挟まったときに破裂して回収員の方や周辺に迷惑が掛かってしまいますので,大きめのビニール袋と多めのウェスを使い,なおかつ空気を可能な限り抜いてゴミに出すのがコツです.

で,私の例をまずは紹介したものの,これは結局廃オイルがごみとして焼却されてしまいますので,本当はあまり自然にやさしくありません.もっとも自然にやさしい処理方法は交換したオイル缶をからのまんま残しておき,それに廃オイルを入れて馴染みのガソリンスタンドで有料でいいから引き取ってもらうという方法です.あくまでも馴染みのガソリンスタンドであれば嫌な顔される可能性が低くなりますが,必ずしも引き取ってくれない場合もあるので,ここらへんは日ごろのお付き合いがものをいうところだと思います.

ちなみに古いバイクをいじる方は,オイル交換で残ったオイルは別容器にでも取って手元に残しておいた方がいろいろ重宝できます.まあエンジンの調子にもよりますが,後で少しオイル量が少ないことがわかったり,最悪オイル上がり,下がりなどで継ぎ足しが必要になることもあるかもしれません.また,ちょっとした潤滑でCRCのようにすぐに揮発してしまうと困るようなケースにちょっとオイル刺しにいれておくことでこまめな給油に使えたりします.わたしの場合はノンシールチェーンを使用することも多いので,定期的なチェーン清掃と給油の際にはこの余ったオイルを使います.ほんとはチェーンソーのオイルとか粘度が高いものがよいのですが,何度が低い分給油サイクルを高くすれば問題ないでしょうということで.

こんな感じでオイル交換一つとっても長々しいコメントをしてしまい申し訳ない限りです.実は私が社外マフラーをあまり採用しない理由の一つが,オイルやオイルフィルタ交換がやりにくくなる可能性があるということであったりします.マフラー交換したことで基本的なメンテナンスがやりにくくなったからと言っておざなりにされ,エンジンのコンディションを損なうことになってはいけないと思ってやまないわけなのであります.

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