エンジンの入手について(その2)

前回はエンジンの部品としての調達を決め,苦難の道のりを選んだところまででした.あれから時は過ぎ,約2ヶ月が過ぎようとしていました.あまりの進捗の悪さになんとなく無気力状態に陥っている私がおり,何か自分でもいやな予感が沸々と感じられるようになっていました.そうなんです.こんなときは得てしてものごとは悪い方向に行ってしまうものなのです.(なんかひとごとみたいですが)

というわけで私がその無気力状態でwebを徘徊しているところから場面は始まります.とある夜私は宛てもなくヤフオクを彷徨っていました.なんだったか思い出せませんがとにかく欲しいものがあって,それが意外に安くなかったのでちょうど円高が話題になっていた時期でもありeBAYを覗いてみたのです. 何点かの終了価格をみたところ,実際日本で買うよりは安く魅力的ではありました.しかしそれを単品で日本まで送ってもらうとめんたまが飛び出るほどのお値段になってしまいます.まあそんなもんだろうなということで,つまらない調査に及んでしまった自分を鼻で笑うシニカルな私なのでした.

しかしそんな自分に反旗を翻すダークサイドな私が急に心の中を席巻し出したのです.何のこっちゃと思う人もいらっしゃるかと思いますが,こんな無気力状態では自分の行動のひとつひとつが極端に気持ちを逆なでして,もうひとつの自分が出てきてしまったりするのです.

そのもう一人の自分が心の中でこう呟きます.じゃあもっと高いものだったらどうなるんだよ?その当時私の中で高価なものの代表格といえば,そうGPz1100のエンジンです.で,早速eBAYの中でそれを探しはじめました.しかし案の定エンジンASSYというのはありません.あってもKZ900とかで,海外発送不可だったりします.仕方なくパーツ単位まで枠を広げて見ます.するとパーツはバラバラになっているものの腰下で1件,ヘッドで1件のまとまった出品がありました.開始価格はそれぞれ50ドルとかで,まだ開始早々でヘッドでようやく100ドルに達しようかといったところ.出品の内容は写真が鮮明でないためはっきりはわかりませんが,お目当ての小物部品もかなりな数含まれているようです.

只気になるのが出品の標題で,機種についてはGPz1100(81)と書いてあります.81年式のGPz1100ってそんなアホな.アメリカ人はこんなところでいい加減じゃのうと思うだけで,その時はこの出品物がいくらまで上がっていくのか見極めたく,アラームを設定しておいたのでした.さてその終了時間ですが残念ながら日本時間の明け方なので実際の落札価格を知ることができるのは翌朝になってしまいます.これでは臨場感は味わえないので,何かアクセントとしてやっておきたい気持ちになってきました. そこでなんと私の考えたことというのが実にナンセンスで退廃的で自堕落だったわけです.大体のお察しがつくかと思いますが,なんと入札してしまったのです.まあ金額は日本では絶対落札できないお安い価格であったので,そのときはいわゆる参加することに意義があるという感じだったと思います.落札できないまでも入札しておくことで臨場感を味わいたかったわけです.

さてその翌朝,PCの前で愕然としている私がおりました.そうです.落札してしまったのです.それもヘッドと腰下の両方とも.比較的ボリュームの小さなヘッドは送料もそれほどでもない(はず)なので,たいしたショックではありませんでしたが,そこらへんの事情を踏まえかなり低い金額で入札しておいた腰下さえも落札してしまっています.

今から思えば安易な考えが招いた当然の報いと言えます.実際ふたつに対しての商品の代金は当時の円高を考慮すれば国内調達の約3割引といったところ.あとは送料がその3割に収まるかどうかが問題です.まあ重量からしてエア便というのはないだろうからトントンってところかな? ということで,送付先を入力.送料を見積ってもらいます.昔はこういったやりとりを自ら英文を打ってやりとりしていたのですが今は決められたフォームに入力するだけでかなり無機質にことが進んで行きます.さて,それに対して送料の見積が出来たようで,今度は支払いの画面に入って,支払いをカードで…なぬ〜!?送料がなんと商品代金とほぼ同等とな?

全く予想していなかったわけではありませんが,実際にその金額が表示されている画面を見てみるとなんだか冷や汗が出てきます. ここでいい加減な英文で送料が高いなんてごねてしまうと,”また送料のことを考えないバカなジャパニーズにひっかかっちまったゼィ”と片田舎のアメリカンを怒らせてしまうことになりますので,素直に支払いを済ませます. あとはどうせ船便でやってくるはずでしょうから到着を待つのみです.最低でも3週間かな?少し目頭に涙を溜めつつ太平洋をゆっくり向かってくる不遇なエンジン部品のことをぼんやり考えます.

このようにして半分廃人のようになりながらここでまた次回(自戒)へ続くのでありました.

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