フロントブレーキ

エンジンの腰下が車体に載って日頃不便な思いをしているところが一点ありました.それはメインスタンドを外す瞬間.フロントブレーキがまだ効かない状態なので車重が増えて車体が必要以上に前に出てしまい,ウィンカーが車体前にある金網にぶつかってカウルにダメージを与えてしまいそうで,とっても神経を遣うのです.

早速なんとかしましょう.といっても車体にはすでにキャリパー,ステンメッシュホース,マスターがついております.何が障害物かと言うとまだマスターとホースをつないでいないだけ.

なんでつないでいないかと言うと,それはブレーキホースが少し長いから.前のオーナーがかなりなアップハンドルにしていたようで,7〜80mm長いのです.ならちょっと短くすればいいのですが,なぜだか今まで放置してきたというわけなんです.

マスターについてはずいぶん前にシリンダー内部のパーツを抜き清掃しておいた(パーツはまだ元気な感じだったので交換はせず)のですがついぞその続きは手をつけて来なかったのも今となってはいい思い出.そんな思い出に浸りながらまた放置モードに逆戻りしてはいけません.その週末,早速作業開始.

やることはざっと書き出すと,長いホースを切ってちょうど良い長さにしてフィッティングを付け直してマスターと繋ぎフルードを入れエア抜きを行うといった感じ.でもいきなり悩みます.ホースを短くする作業を車体にホースがついたまま行うのか,外してから行うのか.

ホースを外してつけることはさして大変なことではありません.でも一度外すと取り付けるときには新品のクラッシュワッシャを2枚消費してしまいます.クラッシュワッシャの在庫もしっかり確保しておりますし,特に高いパーツでもないのですが,どうしてもここにこだわってみたくなってしまったのです.

で,それを強行します.まず作業が果たして可能かどうかですが,この作業の対象となるホースが通常のマスターから直接2本出すのではなくて,純正の分岐を利用しているタイプなのでホースを外さないで作業出来るエリアが自然にカウルの中からホースを上に引き出せる範囲に限られてしまうのです.

分岐部からホースを引っ張ってみたところ,カウルを外さなくてもどうにか切断とフィッティングの取り付けが可能なようです.それでもカウルに何かしら影響が出るといやなのでウェスを被せるなどして養生しておき実作業に入ります.まずホースの長さを合わせ切ってしまう位置を決めます.次にディスクグラインダーでカット.ホースとステンメッシュの端面を整え,ビニールコートを先端から15mmの位置でカットし,フィッティングの根元側のパーツを通します.ホースの端面に新品のオリーブをきっちりはめたらフィッティングの先端側のパーツをネジ込んで,大体マスターのネジの方向に来たところでホースの切り詰め作業は終了.

マスターに接続したらエア抜きです.いつもの感じで短期決戦モードでビオレを使用してガシガシやって行きます.が,なぜか一向にマスターカップのフルードが減っていきません.いつもはビオレ効果もありかなりな勢いでフルードが減っていくのに….でも辛抱強く続けたところなんとかブレーキが掛かるレベルにはなりました.しかしここから通常は一気にカチッというフィーリングに達するのですが,今回はいくら続けてもフィーリングが変わりません.ちょっとレバーを強く握ったらグリップと当たってしまう状態からなかなか抜け出せないのです.しまいにはこの状態のままついに日没を迎え,エアが完全に抜け切れないままその日はゲームセット.

私としてはこんなにもエア抜きが出来なかった経験がなかったので精神的にすごいダメージを受けてしまいましたが,何かしら解決策はあるはず.ひとまずマスターを換えてみることにしました.入手したのはGPZ1100水冷のマスター.特にあんまり考えも無く,新しかったら問題も少ないだろうという安易な思い込みの賜物です.到着したものはそれはそれは美しい外観で,それだけでも一発でトラブルを解決してくれそうです.

次の週末再び作業開始.まずはフルードをキャリパーからしっかり抜いてしまってからマスターを取り外し,新しいマスターを取り付けます.あれっ?付かない.よく見てみるとハンドルホルダーとマスターカップの内側が干渉して新しいマスターをハンドルバーに取り付けられないのです.新旧(空冷と水冷)のマスターを比べると,空冷の方はマスターカップの裏側が大きく逃げており,ちょうどハンドルクランプの出っ張りを逃げています.うーんこれには気付かなかったな〜.

仕方ないので違う手を考えます.といってもその日の内に出来ることといえば,外した空冷のマスターを使えるレベルに出来るかどうかぐらいです.ひとまず再びマスターを分解します.

分解して出てきたパーツは以前レストアして組み込んだ時点とそう大きく変わりはありません.何で?ということで今度はマスター本体の方をチェックします.まずシリンダーの中をチェックしましたがここは以前レストアの時と同じで綺麗なもんです.続いカップの中ですがこっちは少し汚れています.また,カップの底にある大小2つの穴をしげしげ観察してみると,小さい方の穴になんと砂粒のようなゴミがひっかかっています.うーんこれではマスターカップへのフルードの戻りが十分でなく,エア抜きがなかなか終わらない原因になってしまうかも.

ここを清掃して再度ピストンを組み入れ,再びエア抜きにチャレンジします.すると今度はホースの中に元々フルードが全く無かったにもかかわらずみるみるうちにレバーが堅くなり,エア抜きが完了してしまいました.それもなかなかのタッチで仕上がってしまい,なんだか拍子抜け.

それにしても今まで何度もエア抜きを経験し,自信を持っていた工程であっただけに今回あまりのてこずりようはかなりショックでした.なんでも奢り高ぶることなく謙虚に望まないといけませんね.

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