中途半端な組み上げ(その1)

むなしい実験に敗れてしまったところで,その日の作業を止めてしまってはもったいないのでこの日は引き続き作業を行います.

まずフレームですが,今回の本命は先に調達しておいた錆びがいっぱいのほうです.これについても実は錆び落としと塗装は済んでいます.実は種車のフレームと同時ではありませんでしたが,約1週間のタイムラグでこれらの工程を進めておいたのです.いわば家庭内手工業における大量生産であります.こうすることによって作業の間の片付けと準備を1回分削減出来ます.そんな役に立っているのかどうか怪しい工夫のおかげで実験用のフレームに引き続き本命のフレームがすぐに登場出来る訳なんです.

ということでまずは実験の後片付けです.職権打刻のフレームは結局使わないので,ブルーシートでくるんで脇に置いておきます.ゼファーのエンジンのほうはまたひーこら言いながらガレージスペースの定位置へ戻します.

ここからやっと本来の作業となるわけで,まず庭から元々もっていたフレームを持って来ます.しかし何度もGPz1100のフレームを運んでいると,その重さがかなりなものであることに気付きます.前回持ち上げたフレームというとGPz400Fということになりますが,まさにその排気量の比率に匹敵するほどの重さです.

今までで最も重さを感じたのはGPZ1000RXだったのですが,あれはシートフレームが一体ではないので重さも少しこれより軽いのと,GPz1100のそれは大きな図体になるので,家の脇の狭い通路を伝って持ってくるときにいろんなところに当ててしまわないように捌く時にやりにくい点もかなり重要なポイントとして利いてきているようです.

ちなみに先ほど登場した職権打刻フレームに対して,使用予定のこのフレームは色々なところが補強してありますのでさっきより一層重いのです.この補強というのはユーザー後付けのものではなくて工場出荷状態で既に施されていたもののようです.GPz1100がモデル途中でフレームに補強が加えられたという話しは以前聞いたことがあります.この時点ではこれがそれなんだな〜なんて思いつつ,さして気にも止めず作業を継続します.この先に何が待ち受けているか想像だにせず...(←思わせぶり!)

さて話しを戻します.フレームを持ってきてまず一番初めにフレームに取り付けるものはメインスタンドです.何で最初?ということなんですがそれには理由があります.大体の場合メインスタンドはスプリングを掛けるときに通常の範囲を超えて跳ね上げて引っ掛けるのですが,スイングアームがあるとそれが出来なくなってしまうのです.

あと,ここまでこだわっているのは今までメインスタンドの取り付けにかなり苦労してきたからに違いありません.何台も苦労を味わうととにかく楽にこなしたいといろいろ工夫していきます.実際この工程順もそうなんですが,それとは別に,自作のスプリングフックなんかも用意してあったりします.これは中古のTレンチのその先端をぶった切り,バーナーであぶりながら曲げてその後にディスクグラインダで形状を整えたものです.以前はこれがなかったのでマイナスドライバなんかで無理やりスプリングを引っ張って引っ掛けていたんですが,これができてからというものスプリングの引っ掛けがある意味快感になってきたんです.

さてそんなつまらない自慢話にお付き合いしてくれる人も少ないでしょうから先に進めましょう.次はスイングアームを嵌め込みます.GPz1100の場合フレームの両側にシャフトが通る穴が開いているのではなくて,片方は半円の凹みがあってそこにシャフトを挟む感じで2点止めのブラケットを取り付ける構造です.スイングアームのニードルベアリングは水の浸入もなかったようで錆びてはいませんでしたが,少し動きが渋かったので気持ち清掃してグリスアップ.

次にリアサスペンションを取り付けます.上側をネジ止めして下部に移ります.GPz1100の場合は,このリンク部分のニードルベアリングが逝かれているケースが多いようなので,怖いもの見たさもあってリンク部分をひとまずばらして見ます.

通常ニードルベアリングが逝かれているとはずした瞬間にベアリングが破壊されたリテーナーとともにぼろぼろと落ちてくるそうなのですが,幸いにもそうはなりませんでした.それでも水が浸入してしまったことはあるようで,スリーブを抜いたところ錆びの浮いたニードルベアリングが出て来ました.一応今回はリテーナはちゃんと形になっていたのでこのまま流用します.

一旦アウターの内部を清掃してグリスを塗りたくります.リテーナを入れ角窓の一つ一つに綺麗に錆び落とししたニードルベアリングを入れて行きます.スリーブを入れる前に少し摺動させます.ニードルベアリングのピッチを合わせ,しっかりとアウターに密着させた状態でスリーブをゆっくり回転させながら挿入して行きます.動きを確認したところなかなか軽やかに動きます.この状態がいつまで続いてくれるかとても興味深いですが,ひとまず車体を走らせないことには始まりません.

ちなみにこの作業はサスペンションの下の2箇所のみ行います.というのもこのニードルベアリングの磨耗は路面の水がリンク部分に跳ねて,錆びさせてしまうことが原因です.400Fの場合は,このトラブルを防止するためにスイングアームから地面に向かってインナーフェンダーが追加されていました.1100はこのインナーフェンダーがないので,ある程度距離を走った車体はこのニードルベアリングの持病が必ず発症しているのです.

一方のニンジャはこのトラブルを反省したようで,ベアリングの両端に防水のゴムシールが追加されています.思い起こせば今までのニンジャ全てにおいて,ここのニードルベアリングはちょっとした清掃とグリスアップだけでなんとかなる状態だったので,ここらへんは明らかな世代の違いが影響していると言ってよいでしょう.

さて,ここらへんで長いので続きは次回...

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