中途半端な組み上げ(その2)

さてサスペンションも取り付いたらリアホイールです.車体引取りの時にアクスルをプレスで無理矢理抜いてもらって変形してしまったナットはそのままですが,今回はひとまずの組み上げなので問題ありません.アクスルシャフトには再び固着することがないようにカラーとベアリングの当たる部分にくまなくグリスを塗りたくります.

ホイールを取り付ける前にフレームを一旦起こして,メインスタンドを立ててフロント側を接地させ,お尻が上がった状態でリアホイールを取り付けます.

次にこの姿勢のまんまフロントフォークを取り付けます.まずフレームのステムベアリングレースはまだまだ大丈夫な感じですので,清掃してグリスを塗りたくります.ステムシャフトに付いているベアリング側も清掃とグリスアップを同じく行います.まだフロント周りがない状態なので前が接地した状態ですので,片手でフレームを持ち上げたままステムに三つ又を差し込み,手を持ち替えてステムナットを空いているほうの手で締め込みます.締め込みます...あれれれ?締め込めない.ぜんぜんナットがステムシャフトのねじの切られているところまで来ません.一瞬何が何だかわからず同じことをもう一度繰り返しましたが,結果は同じ.

ここで大問題が発生していることに気づく私.なんと三つ又のステムシャフトの長さが足りず,ナットが締まらないのです.見た感じどうもフレーム側のステムが2cmほど長いようです.念のためすぐ脇においていた職権打刻フレームと比較してみたところ見た目でその違いがわかるほど短いのです.念のため測ってみたところ組み上げているフレームが約210mm.職権打刻フレームが190mmでちょうど見た目通り.(ここんとこ精度がなかなかよくって宜しい)

うーん,GPz1100はモデル途中でフレームまで含めてモディファイがなされたとのことですが,その影響がここまで深刻なものであったとは.今更ながらパーツリストを入手できていない状態でいろいろ買い集めてしまっている自分を猛烈に自省します.

猛省ついでに少し当時の時代背景も含めて回想でもしてみましょう.このモデルのリリースは83年.各メーカーの最高速競争がもっとも華やかであった時期です.GPz1100のリリースにあわせてカタナ1100やCB1100Fなどと比較するために欧米のバイク雑誌は特集を組んで最高速チャレンジやサーキットランを行い特集記事を組み車体の出来を比較していました.その中でGPz1100はメーカーの言う最高速に残念ながら達っすることが出来なかったことがあり,テスターの一部が最高速に達っする直前にフロント周りに強烈なウォブルが発生するとリポートしたとのこと.

これに応える形でカワサキはスペック通りの最高速がたたき出せるように年々主に車体周りを設計変更して行ったのようです.もちろんカワサキのフラッグシップということで出たばかりのGPz1100を購入した欧米のユーザーも多かったので,この最高速という言葉はユーザーにとってもメーカーにとっても非常に重要なファクターであったわけです.そうなると83年のリリースに対してニンジャが翌年デビューして,あっさりと最高速度記録を塗り変えてしまったのも空冷の未来に期待してGPz1100を購入したユーザーのクレームもの期待の大きさに比例して一層激しいものになり,ディーラーからの情報をひっきりなしに設計変更でなんとかクレームを抑えようとしていたメーカー側の苦悩がこういったパーツのバリエーションを生んだのでしょう.

まあこんな時代考証も一旦フロントを接地させステムを抜いてから絨毯の上に座り込み,久々の超メガトン級眩暈が終わってからできたものでありまして,ある意味自分の知識が点と線で結ばれたような感じ.ひたすら現実逃避していますが,この先どうなりますことやら!

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