種車の現車確認(その2)

現車確認の詳細編です.ちょっと私も続々現れるショッキングな光景にそろそろ疲れてきたりしています.といっても挫けず進めざるを得ないのでその続きを今回ご紹介します.


前回のフレームの穴からさらに下に目を向けると,マフラーに穴が開いています.こちらの穴は錆とは無関係の,意図的にあけた穴と言えます.ということで,この穴の開け方からこの車体の放置の理由を推測できることができました.というのもこの穴の開け方はまさに当時の暴走族によって盗難車がよくやられる手法で,走行性能は全く関係なく音を大きく出したいがために手っ取り早く盗難してすぐに施される儀式みたいなものです.要はカウルが割れていることから考えて盗難→穴あけ→何度かナイトフィーバー→転倒→警察などで回収→持ち主に返還→カウルなどの補修費が出ず→放置といった流れでしょう.そうなるとメーターが表示しているオドメーターはより一層信憑性が高いものになります.が,肝心のマフラーは流用できないというのが確定となり,悲しい限りなのであります.


ステップ周りも盛大に錆びています.メインステップ,タンデムステップともに固着して動きません.メインステップは自分が乗る限りはやっぱり可倒式であってほしいですし,タンデムステップは左右で開いていたり閉じていたりちんばになっているので,なんとか可倒状態に持っていく必要があります.でも生憎裏側のEリングが錆びて形を成していなかったりするので,一体どうやって修正してよいやら想像もつきません.


リアホイール周りです.マフラーの出口は錆と藻類の絶妙のコラボレーションでなんとも風流な趣を醸し出しています.チェーンもそれに負けじと錆びています.シールがところどころ破れて飛び出したりなくなっていたりしますので,さすがの私もこのチェーンを再利用するのは一目して断念です.ホイールもアルミの地金に到達するのに時間を費やしてしまうばかりか,到達したころにはホイールとしての強度が十分確保できるのか疑わしいばかりに腐食がすすんでいます.チェーンカバーはずいぶん白んでいますが,その表面にナメクジかカタツムリがその表面についた藻類を食するときについた独特のトレース痕がついています.まあここらへんは再利用できるかな?と判断しました.


タンデムグリップも錆びてかなり深い錆で表面に凹凸が出ています.あまりにもひどいので100円ショップで売っている錆落としクリームを塗ってみました.でも説明書にある10分経っても全然変化なし.100円ショップの錆落としクリームがしょぼいのか,錆がひどすぎるのか判断はできませんが,この先の苦難を予感させるに十分な結果です.

またシートについてはところどころ破れています.シートベースについてもその部分は多少肉がこそげているので,このままシートを張り替えるだけで使えるのか,何かそれ以上の工夫がいるのか.まあ,このままではシートベースが水を吸ってしまう可能性があるので,早いうちにシートに関する作業はやってしまわないといけないでしょうね.


タンクの下の状況を確認したいので,シートロックを無理矢理はずして,シートを外しました.そこで私が見たものは今までに見たことがないバッテリのダメージです.そもそもバッテリがそのまま使えるとは思っておりませんでしたが,そのバッテリ端子がなんと根元からもげています.確かに腐食しやすい部位ですが,この破損具合は特筆に値するのではないでしょうか.この車体のやれ具合の奥深さを感じることができたある意味爽快感を感じた瞬間でありました.

なお,シートが外れて,返納書なんかが収納ケースに入っていないかなと少し無駄な期待をしたのですがさすがに何も入っていませんでした.ただ,天日にさらされたり,頻繁に使われたりすることのなかったツールのケースが異様にやわらかく,汚れてはいたものの新品状態に近かったのがせめてもの救いでしょうか.


最後にメインスタンドです.見事に錆びまくっています.メインスタンド掛けのステー部分の補強ブラケットは見事なまでの崩落ぶりです.これを果たしてなんとか補修して使えるのか,やっぱり代替で中古を入手しなければならないのか想像だにできませんが少なくともこのまま使うという選択肢はないでしょう.

このメインスタンドを見て,1つだけ光明がありました.というのもメインスタンドの下周りがここまで錆びているということはこの車体,放置期間が長いものの,その期間の大半をメインスタンドをかけたまま過ごしたということです.一般にサイドスタンドで放置された車体よりメインスタンドがかかっていた車体のほうが少しだけでも程度がいいので,何がどうっていうわけではありませんが少しであってもプラス条件が見つかったというわけです.

所詮ある程度の覚悟はして落札した車体ですが,やっぱりということでかなり手間をかけないと満足な走行ができるものにはならないということがわかり,単なるフレームの入れ替えだけでなく,ちゃんと気合を入れて臨まなくてはならないというのが十分に理解できた現車確認であったのでありました.

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