なぜGPz400なのか?

なんのこっちゃと思いますでしょうが,GPz400なる車体に手を出してしまいました.GPz400というと,GPz400Fと外見の違いを見つけることが困難なほどの車種です.なんでそんなのをGPz400Fを一旦やったのにやるのか?ということになりますが,前回やったのはゼファーのエンジンを乗せた400Fフレームであって,悪い言い方をすれば偽物であったわけです.で,ちゃんとしたGPz400Fをやりたいという想いと,前回の企画で最後に作ってみたもののついぞ車体に一度も載せられることなく手を離れたライムグリーン外装.あれを何とかして車体に載せてみたくなったのです.でもそれなら400Fをやればいいんじゃないの?と疑問を呈する方も当然おられましょう.ここがちょっと複雑で,そこらへんに少し説明を加えておいたほうがよいかな?と思うわけなのです.

GPz400(A1)とGPz400F(A2)の違いというのは実は呼称におけるFの有無にとどまらず,結構大きい差異があります.当時のカタログスペック偏重の時代において,最大馬力51psのGPz400に対し,53psの400F(53psはA2のみ.A3は54ps).この2馬力の差はホイールが赤いとかマフラーにKawasakiロゴが有るか無いかの外観上にとどまらず,本質は結構キャブ周り,ヘッド周りにあるようです.当時最大馬力が売り上げに大きく影響する時代,今でいう普通免許,当時は中型免許における最大排気量の399ccの中で,如何に最大馬力を絞り出して1でも高い数字をカタログに入れられるかがバイクメーカーの本分であった時代.その中でz400FXから始まる空冷2バルブDOHCエンジンはもう既に最大馬力を出すために本来のテイストを失いつつありました.

なんとかz400FXの本流を外れない程度にカタログスペックを上げておき,カワサキ待望の来たる水冷エンジンの登場をひたすら待っていた状況で他社の先行したカウル装着,水冷エンジンでのハイパワー化に対抗するために孤高の面持で放たれた空冷ながらフレームマウントのカウル装着マシン.それがGPz400なのです.

これは聞いた話ですが,z400FXはE1からE4までかなり長い間リビジョンを更新しつつ売り続けられたモデルでした.これに対し後継のz400GPはカウルを装備せず,フォークマウントのビキニカウルがオプションで用意されていただけでした.他車がこぞってフレームマウントのカウル装着モデルを出す中でz400GPの販売継続よりもカワサキブランドのフレームマウントカウルのモデルを少しでも早くリリースしてほしいというのが営業サイドからの強いリクエストがあったとのことです.

そうなると馬力そのものよりもフレームマウントカウルの重要性が高まってくるということで当時まだ熟成途中であったフレームマウントカウルの試作車を市場に出す判断になったというのがGPz400の誕生秘話だというのです.確かに吸気系やヘッド周りのパーツは多くがz400GPと共通であり,A2という型番であるGPz400Fはそれらが悉く別部番になっていることからこの説はかなり有力であると思うのです.ちなみにGPz400(A1)の後継であるA2にGPz400Fという呼称が与えられた理由というのも一説があります.

z400GP(M型)は呼称こそzが頭文字になっていますが,他社の呼称の慣習に倣ってサイドカバーに刻まれたのはGPz400というものでありました.z400GPは空前のバイクブームの真っただ中でありながら,他社のフラッグシップに決して引けを取らない人気モデルであったので,GPz400に代替わりした83年にもz400GPを購入したいという方が多くいたそうです.しかし街中で見かけたGPz400とサイドカバーに刻まれたバイクをイメージしたお客さんが,バイク屋さんにGPz400を購入したいのですがとオーダーをかけて,実際納車されたのがGPz400(A1)ということになり,バイク屋さんとお客の間で揉めることが頻発したようです.そのため,混乱の元となったGPz400という呼称を捨て,GPz400Fと名前を付けなおしたのが私の乗っていたA2ということなのだそうです.

まあ真偽のほどはわかりませんが,結構納得できるようなお話ですよね.ちなみになんでFなのかというのはCB400Fourから始まる他社の4気筒車には末尾にFをつける慣習に則ったものということで,他社に先行して高性能なDOHC4気筒を出したカワサキにあるまじき消極的な理由だったというのもまことしやかに語られていたりします.確かにCBX400F,GSX400Fなど売れ線のモデルにFがついていたというのは頷けるところです.でも750は同じような理由でFがついたとして,なんで1100は最後までFが付かずにいったのか,それは謎です.z1100GPのサイドカバーには確かにGPz1100と刻まれていますし,事情は同じであったはずなのに.

もしかしたら欧米のお客はカウルマウントに慣れ過ぎていて,z1100GPをオーダーしたつもりでGPz1100が納車されても文句を言う人がいなかったのかもしれません.当時国内でGPz1100を逆輸入でオーダーする人もかなり希少であったはずですから,ありうるのかななどと,自分なりに考察して楽しんだりしている私なのです.

とまあ妄想を膨らませているそれだけで幸せな私ではありますが,とにかくGPz400をやることになったわけです.さっそく次回種車の入手ということになりましょうかね.私の妄想にお付き合いいただいて,同じテイストを感じていただいたみなさん,皆さんだけでもいいので,お楽しみに〜.

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