アニメへの体慣らし(その2:アマガミSS)

そんなこんなで1つ目のハードルを難なくクリアした私であるが,当然の流れとしてひとまず程なくして放映が開始された君に届けのセカンドシーズンに挑戦した.このセカンドシーズンは原作のもっとも美味しいところを担っているはずである上,先の出来上がりに期待は膨らむ一方であったのだが,残念ながらその感想は期待はずれに終わったといわざるを得ない.放映回数がファーストシーズンの2クールに対してセカンドシーズンは1クールと短く,肝心なつくり込みが十分出来ていないように思えたし,しかも成就してからのエピソード部分は原作を見る限り見どころ十分であったはずなのに,最終話の最後でダイジェスト的にまとめられて数分で終わらせてしまう淡白さ.地震の影響もあり1話分すっ飛ばしてしまったのではないかと思われるが,そのせいもありいわゆる尻すぼみ感のままあっという間に終了してしまったというのがひとまずの実感.しかしそれに加えて作画もファーストシーズンのそれに比べると雑な印象があったし,脚本も原作の台詞をひとまず列挙しているだけで,台詞の間であるとか抑揚などあまり工夫がないように思えた.実は単行本のほうを先に読んでいたので告白シーンが連続するところなどはもっと盛り上げてくれるものと大いに泣きを期待していたのにこのように涙腺が正常に機能しない体になってしまった私でさえも泣きに至るシーンはあんまりなく,まったくもって物足りない感じなのであった.この結果はアニメというものはいくらすばらしい原作であっても放送枠や予算,製作方針などによって良いものが出来るとは限らないということの証明なのであろう.それにしてもファーストシーズンの出来が秀逸であったところにきて非常に残念な結果なのである.


ちょっと意気消沈しつつもアニメを見るための免疫をつけるというところでは十分その役目を果たしたセカンドシーズンでがあったと自分を言い聞かせ,ここで気を取り直して次のタイトルを選ぶはずのところであるが,実はそのセレクトはこのセカンドシーズンを見る前には決まってしまっていたりするのである.それはアマガミSS.セレクトした理由はちょうど君に届けのファーストシーズンの頃に平行して後半部分を放映中であり,中多紗江編以降をとりあえず地上波で見ることが出来たというのが一番.まあ当時他に何かないか?と探している中で,その出処がギャルゲーであるということから設定上どうしても学園アニメにならざるを得ないため,もちろんロボットや宇宙人も出てこないので安心だろうということと,なんとうちの職場の若いもんの出身高校の通学路とアプローチがアニメで使われているということももうひとつの理由なのである.それにしても職場の上司と部下かそれぞれアニメの聖地になっている高校の出身というのはなかなかの奇遇さではないかと思うのだがどうだろう?

さてその中多紗江編以降を見る限りはストーリーや主人公,ヒロインの設定とも多少マニアックなところはあるが,さすがギャルゲーものだけあって絵もきれいだしこんな感じでいいかな〜?的なノリでセレクトしたといって過言ではない.しかしアマガミSSはすぐに放映が終わってしまったので,中多紗江編,桜井梨穂子編,絢辻詞編以外は発売されたばかりのDVDをTSUTAYAオンラインで借りて見ることにした.生まれて初めてネット予約でDVDレンタルをしたが,なんともお気軽に借りられるものである.送料だって新作DVDを借りる限りはレンタル代に比べて格安でありそんなに気にならないし,通常では入手しにくいアニメのDVDであっても少し待てば借りられる.借りにいく手間,返す手間を考えればこのような近郊地域より過疎地域に住んでいる我々は利用しない手はないだろう.なかなかよく出来たビジネスモデルだとあらためて感じる.

さて,その結果はというとどうもピンとこない.まあ萌えるには萌えるが私の興味の照準はすでに萌えには中てていないので,どうもストーリー性にパンチが感じられない.何にもまして君に届けにはふんだんに散りばめられていた"泣き"がない.ということは泣きがないとアニメが私に与えられる感動はないということなのか?あとやっぱりギャルゲー特有のストーリーの不自然さのためどうしても合点がいかない感覚を払拭できない.

しかし,このようなメディアが世の中に氾濫していては若い男子たちは自分の周りにリアルに存在する女子たちをものにするのにかなり苦労することだろう.何の変哲もないぱっとしない設定の主人公のとてもありえない行動や言動にSSごとのヒロインたちがまるで吸い寄せられるかのように恋愛感情を抱くようになる.実際はそんなことをしようものなら警察に通報でもされかねないようなことまでもがまるでリアルな男女関係にでもありえそうなニュアンスで登場するわけで,一言危険極まりない.この歳になって世を憂いてもしょうがないが,最近の若手の中になかなか結婚できなかったりするのが多いのも肯ける.

まあこのようなゲームやアニメで萌えを味わっていたらもう生身の女子なんかどうでもいいなんて思ってしまうのも無理はないので,いわゆる萌えを本格的に味わうことができたということは収穫といえば収穫である.確かに萌えキャラに関してはじめは違和感を感じていた私も最後にDVDの隠れキャラ編を見終わる頃には何の違和感もなく萌えを受け入れていたりするのである.調べてみるとこのキャラクターデザインをしている絵師さんはエヴァンゲリオンのほうでもかなり名をはせた方らしく,ロボットと萌えの融合(?)においても功績を残した有名な方のようだ.ロボットものがもっとも苦手の私がこのような状況になってしまっているということ自体,既にかなり重症であるということなのかもしれない.

まあこの歳になって仕事もそんな思ったほどの充実振りではないし家庭のほうも惨憺たる有様であるわけで,リア充には程遠い私にこんなことが言えた義理ではないが,少なくとも少子化の昨今草食系男子たちもしっかり肉が食えるようにあごと内臓をしっかりと鍛えてバブル期の我々がそうであったように女子たちの満足のために日夜切磋琢磨するぐらいの気概を持って望んで欲しいわけである.モテキみたいな神が与えてくれるような瞬間はそうそう訪れないし,所詮霊長類の一旦である我々オスのアピールはコミュニケーションとフィジカルでしか表現できないものなのである.ゲームやアニメに逃げ込んでいてはいけない.といいつつアニメに逃げ込んでるよなオッサンには言われたくないわな.確かに.

他に1点重要な収穫があった.それはこのアマガミSSで私はアニソンの質の高さに感心したのである.君に届けでもEDテーマをCHARAさんが歌っていたりして驚いたが,あれはあれで最初からアニソンとして作られたものではないはずで血統書つきのアニソンとはいえない.一方アマガミSSの場合はアニソンそのものであり,ギャルゲーが出処だけあって歌詞や歌い手である声優さんの声質などは好き嫌いがあると思うが,とにかく音の作りこみ方が半端でない.確かにアニソンは打ち込みで作曲されることが多く,楽器を演奏しながらとは違って試行錯誤が頻繁にかつ容易に行えるので編曲の質が高いとは聞いていたが,これほどとは.高いレベルで試行錯誤された曲はその演奏も難易度が高い部分も多いのにもかかわらず打ち込みのまま世の中に出るものはかえって少ないため,演奏者にも高い質が求められるようで聴き応えもある.またこれに声優さんの声がマッチすると多少なじみのないトーンの歌であってもかなり耳に残りやすい.特にこのアマガミSSの中では桜井梨穂子編のEDテーマの”恋はあせらず”が秀逸であった.遅まきながらアニメ文化の中でアニソンが非常な重要な役割を果たしていることを認識したわけだ.

KEN-Z's WEBのトップへ NEXT