西宮北高校のグラウンド

次はグラウンドである.2010年の新聞記事にあったとおり,ここに侵入して地面に落書きを残していった輩がいたため聖地巡礼者全体がはた迷惑な扱いを受けることにはなったわけだが,様々なロケーションを把握しつつハルヒのアニメを見終わった私からすればその行為は甚だ矛盾に満ちていると言わざるを得ない.そういった輩はやはりアニメの中の出来事をできるだけ忠実に再現したいはずであろうに,書く内容は大幅に簡略化されている上にとんと見当違いであったし,そもそも書くべき校庭はここではなく私の出身中学または大社中学の方である.まあ矛盾云々以前に北高であれ中学であれあのような輩は二度と現れて欲しくないので,この話題はここらへんにしておこう.

さてそのグラウンドであるが私はあんまりいい思い出はない.生来かいた汗が皮膚上に残留している状況が嫌いな私(だから水泳は好き)は当然の如く体育系の部活を選ぶことはなく,このグラウンドを使う機会と言えば唯一体育の授業だけということになる.しかしキョンくんも言っているように毎朝ちょっとした登山をして登校してきた我々は,すでに体育の授業なんぞ無くても十分体力増強されているはずで,蛇足的な運動により蓄積された筋肉疲労が一層思考回路を鈍化させるのである.

その蛇足的位置付けの体育の授業が北高の場合これまた不必要なほど過酷なのであった.まず一年生は授業の大半がとにかく筋トレをメインとした体力づくりから始まる.雨天時以外の屋外授業の場合はグラウンドの最外周を使ったランニングから開始するのだが,このグラウンド山の中腹に位置するとは思えない広さを誇っており,ハンドボールコートなどの部分の外を回った場合その周長が350m強あることになる.授業のはじめに体育教官がその姿を現すまでの間にここを3周するわけだが,これが入学して間も無い頃はすこぶる苦痛なのであった.

加えて今度はまたその過酷な授業が終わったらグラウンドから長々しい急階段を校舎に向かって上がっていかなければならない.この階段はハルヒの部活トピック,運動能力をキョンくんが認識するトピックのシーンや消失においてキョンくんが途方に暮れるところで登場する.当時との違いは手すりが中央,左右に出来ていることぐらいでほかはアニメもしくは現在の実写資料とほぼ変わらないと思われる.

アニメの各登場シーンの中では上から見てもグラウンド側から見てもこの階段の勾配がすごく大袈裟に表現されていると思う方も多いのではないかと思う.確かにグラウンド側から階段の上に座ったキョンくんを見たシーンではキョンくんはまるでマメ粒のような大きさで,斜面が画面に向かって切り立っているような印象ももたれることだろう.またハルヒが階段を上がってくるシーンではグラウンドはあまりに遠い景色として描かれていて,校舎の地面レベルとグラウンドのレベルに強烈な高低差があるように見える.

実のところこれは全く誇張なしの正確なシーナリーであると言える.グラウンドの真ん中あたりからキョンくんの座っているところを見ると将にあのとおりに見えるし,ハルヒの上がってくるところを本館の2階あたりから見ればあのような背景が見えるのである.なぜあのようになっているかについては,恐らく北高の建設当初はあまり人も住んでいない山の中腹に土地の面積だけは大きく確保出来たものだから,少しでも大きくグラウンドを作るため,校舎の地面レベルに対し常識はずれなオフセットを持たせたのだと推測する.

しかし在校当時は朝のハイキングばりの登校を果たし,体育の授業で蛇足的筋トレをこなした疲労困憊の体な十五歳にとってこの階段は金比羅さんの階段以上の破壊力を持っていたのである. またグラウンドには関係がないが,雨が降った日には体育館が当然の如く他の学年とバッティングしたりするため,一年生は校門から本館をまたいだところにある柔道場に行き,体育の授業時間を全部使っての筋トレなんて惨劇が繰り広げられるわけである.まさに体育の授業でのダメージがその日の疲労度を格段に上げ,強制ハイキングコースの効果もあいまって北高生の多くが必要以上の心肺機能を持つに至ったことだろう.こうなったら北高生の平均寿命でも取って如何に北高が健康づくりに有利な環境であるかを数字でアピールして欲しいもんである.

そんな感じで必要以上の体力づくりには精神的アレルギーを持っていた私であるから体育大会のときは写真部であることを最大限利用して撮影班として選抜出場の競技はひたすらパスして適当にトラックの中をカメラを抱えて走りまわっていたりした.まあ終日走りまわっていたわけで通常の生徒よりは1日の移動距離としては意図したこととは逆にずば抜けてしまっていたかもしれないが.

まあ話しがグラウンド方面から脱線してしまったがそろそろ本筋に戻すべきであろう. このグラウンド,ハルヒアニメの中では閉鎖空間の中二人が一目散に走っていくところがもっとも印象的である.まあ北高のグラウンドには落書きしたりはしなかったものの,その我々の青春の汗がしみこんだ神聖なグラウンドの真ん中で二人がよもやあんなことをしようとは.まあドラマチックと言えばそう思わなくもないが,卒業生としては気持ちは複雑なのである.

あと蛇足になるかもしれないがその閉鎖空間でグラウンドに駆けおりたところはそれなりに整備が行き届いておらず,雑草がそれなりに生えそろっていたりして多少荒れていたりする.また,体育会系部室棟の脇の水飲み場なんかは当時からそのまんまであり,確かに体育の授業が終わった後にここでアホな話に花を咲かせていたことを鮮明に思い出したり出来るのも私にとっては一興である.こういったディテールがしっかり表現されていて,ロケハンの結果を忠実に再現しているばかりでなく,何かと当時の様子までしっかり私に思い起こさせる出来映えといえるのである.

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