一般的に言われる学園祭が北高祭である．実際の北高祭はハルヒアニメと違って6月の開催であり，ハルヒアニメどころか当時の周辺校と比較しても例年盛り上がりに欠けるものであったと思う．私が思うに２つの大きな難点がありそれが如実に影響を及ぼしていたと思うのだ．ひとつは将に６月開催であるということである．６月開催ということはクラス主催の出し物についての準備はゴールデンウィーク以前に開始しておかなければいけないところをなぜだか北高はゴールデンウィーク後に準備を開始していた．正確にはゴールデンウィーク直前にテーマ決めを行い，実際の準備をゴールデンウィーク明けから行うというクラスが多かったように思う．これはまずテーマ決めの時点でまだクラス替えから時間がたっておらず，クラスの持っているポテンシャルをお互いが把握できていないままテーマを選定しなければいけないことから，的外れなテーマを選んでしまったり，控えめなテーマを選びがちなのである．
その結果出し物の成功確率が極めて低く，外部からのお客の評判も上がらないばかりか，クラス同士の交流までもが阻害される結果となる．かく言う私のクラスも将にハルヒの忌み嫌ったアンケート発表であったり，男子クラスにいたっては女子に触りたい一心でお化け屋敷なんぞを計画してしまったりするのである．大体が準備に時間が取れないのとどのようなパフォーマーがいるか分からないで企画せねばならないので演劇や喫茶店など手間のかかるテーマを選択するクラスは少なく，もし選択しても準備不足に陥るケースが多いのである．
6月開催にこだわっていた理由は受験対策らしいが，そもそもそんな突出した学力を持つ進学校でもなかったわけだし，そんなことにこだわってわざわざ学校の総体的な実力が試されているような学園祭をあえて空虚なものにする必要もなかったと思う．今まで６月開催の学園祭で成功している学校の話は聞いたことはあるが，それらの多くはクラス替えを３年間しないとか，せめて２年から３年はクラス替えなしとかの事情の賜物であったりする．むしろ体育祭を１学期に持って行き，代わりに北高祭を２学期に持っていくべきであると一文化部の部長としては事あるごとに主張していたのを記憶している．そうはいっても教諭たちとのコンタクトを極端に避けてきた私はせいぜい生徒会との他愛もない話の中で軽々しく主張するもんだから，それが意味のある主張であったかどうかは今となってはうかがい知る由もない．
次のデメリットが北高のロケーションである．私鉄のもっとも知名度が低い盲腸線を降りて，その先に待っている強制ハイキングコースを経てようやくたどり着くような北高にわざわざ蒸し暑い６月汗だくになって訪れるのはせいぜいOBか父兄か，今の時代なら何かしらの伝を使ってチケットを入手出来たハルヒファンぐらいのことだろう．当時はその３番目の要素は形もないわけだし，ロケーションに関してはその逆風を全身で受けながら辺鄙な山の中腹で開催しているのが将にその北高祭なのであった．
従って実際の北高祭の開催日は朝開門しても入場者は父兄らしき人物ぐらい，午後になると周辺の中学生とかがぱらぱら半ば恐れながら入ってくるぐらい．他校の高校生はよっぽど仲のよい中学時代の同級生とかぐらい．もちろん男ばっかりである．もちろん盛り上がりに欠けているのは教諭たちも知っているので，あえて出し物を巡回するような真摯な教諭は皆無．せいぜい自分のクラスと両隣を見てがんばれや〜と職員室に帰っていくのが関の山である．
例年写真部も教室を１つ確保して展示していたが，写真の撮影，現像，引き伸ばしなどは事前に済ませているので勝負は前日の午前中であった．教室に展示のW字型の経路を作るために長机を３段がさねでやぐらをくむのだが，針金で机を固定したりしてキレイに暗幕で包み込んでといった手順が３年にもなると体に染み付いてきて２時間もすればパネルを暗幕に取り付けるところまで済んでしまうようになる．
実際３年のときは写真部のほうを手早く済ませ，クラスのほうに力を入れようと自分でもかなりがんばった記憶がある．しかし所詮来場者も少ないはずなのに，女子の体に触りたいだけで企画したお化け屋敷は持てる木工技術やダンボール加工技術，針金による机や椅子の締結技術を駆使して経路をめちゃくちゃ複雑に作り上げ，各所にトラップなどもふんだんに用意したにもかかわらず，辺鄙な北高の中でもひときわ辺鄙な位置に教室があったことも災いして，小学生が十数人繰り返し入場しては大騒ぎして出て行くだけの小さな公園の滑り台並みのアトラクションと化してしまったのである．これを目の当たりにして所詮北高のロケーションと６月開催であれば，こうなって当然と結論を出すに至ったわけである．
しかし，映画上映，展示や喫茶，飲食系が盛り上がりにも欠ける分，逆に内輪だけで盛り上がれるライブは比較的盛況であったように思う．特にバンドの出演は例年これでもかというほどであり，大体午後一番とかはあんまり盛り上がらないもののフィナーレともなると名残惜しさもあって大盛り上がりなことが多かったように記憶している． 体育館のところでも言及したが，ハルヒの出演に関してもそのような北高祭の傾向がよく表現されていると思うのだ．
