祝川商店街のモデル

ハルヒアニメには祝川商店街なる商店街が登場する.この商店街のアニメ背景としてはすでにアーケードにかかるタイガースの旗や電器店のモデルになったなどから尼崎中央商店街であることがほぼ一般常識となっており,写真などを見る限り私もそれを疑う余地はない.しかし私は今までこの商店街を訪れたことはなく,何度か前を通りがかったぐらい.その当時とはアーケードの入り口の様子も変わってしまっており,懐かしさを感じることはできない.したがってここでは違う視点でネタを展開していこうと思う.

ここでいう違う視点というのは何かというと,私がこの尼崎中央商店街がモデルとされていることに関して感じる一種の違和感に端を発する.それは谷川さんのこだわりが極端いや,驚異的なまでに地元志向であるにもかかわらずこの商店街のみ不自然に市外のものがモデルになっているという点である.

この理由について私は今現在あの祝川商店街のモデルにふさわしい商店街が西宮市内に存在しないからではないかと推測している.というのも市民プールでさえあのようなこじんまりした施設を登場させているわけで谷川さんの小説には何かしら地元の具体的なモデルがあり,そこに繰り広げられる様々な奇想天外な出来事を文章化することでそのギャップをある意味楽しみながら筆を進めているように思うのだ.これは推測というよりしがない一読者の願望でしかないのだが,あくまでもその願望の上に考察すればするほどここで感じる違和感が一層強固なものになっていくのだ.

ちなみに尼崎中央商店街というのはハルヒアニメが放映される前年の2005年夏ごろ比較的多くのメディアに登場し,ある意味有名な商店街でもあった.というのも2005年は阪神タイガース優勝の年.この商店街は夏ごろからカウントダウンしていろいろなメディアの取材を受けていたのである.ある意味関西の商店街の代名詞たる阪神タイガースの応援ということで有名であったこの商店街は,適当な候補がない中でハルヒアニメの製作前に京アニさんと谷川さんがめぼしを付けるのに最適な素材であったはずと考えられるのだ.

となるとここでの私の自分勝手な興味の対象は実際谷川さんがハルヒの原稿をしたためながら思い描いた商店街とは一体どこだったのかということである.確かに今現在西宮市内にはあのモデルにふさわしい商店街は存在しない.それは西宮北口の項で前述したように震災の直接的な被害とその後の再開発によってその多くが顕著な変貌を遂げているからに他ならない.

ということになるとそのモデルは西宮北口の北東に広がっていた市場ではないかと想像したくなるところだろうが,私の当時のその市場の印象からはその可能性は極めて低いと思われる.というのもあの西宮北口の市場だったとすれば,到底店のPRのためにビデオカメラやストーブを供出するほどの金銭的余裕を持った店舗はイメージしにくいであろうからである.

また行動範囲が徐々に広がりつつある高校時代の私にあのような寂びれた印象を与えることしかできなかったあの市場が谷川さんが同じ年代にさしかかった頃はさらに寂びれた印象に磨きを掛けていたことだろうから,なおさら可能性は薄められてしまうのである.

ちなみに実際夙川駅には商店街がないかというと,駅の西側にこじんまりとしたものがあるが,これは明らかにモデルにはならない規模のものである.また駅の正面には大規模商業施設ということで夙川グリーンタウンなる高層(出来た当初は)マンションを擁する施設があるが,こちらも西宮北口や芦屋の商業施設に客足を奪われ,かなり苦戦している.このグリーンタウンが出来る前,私が宝塚に居を移していた頃に夙川駅の南側では丁度この大規模再開発が行われていたようで,このグリーンタウンは私が小学校高学年で西宮に戻ってから華々しくオープンしたものである.

しかし,そのグリーンタウン以前の夙川というのは駅の南側に商店街というか市場があった記憶がある.幼年期の記憶なのでかなり曖昧であるが,かなり立て込んでいてアーケードもなく狭い印象があったが,かなり活況であったのは確かである.祝川商店街のモデルということだと祝川の商店街という場所的には最もふさわしいのはあの市場であったのではないかとも思うが,まあその様相からモデルにはなりえないし,谷川さんがそのような大昔の記憶を元に書いているとは思えないので,これも本命ではないであろう.

夙川駅に近い商店街ということで大穴は阪急電車の西宮北口と夙川のちょうど中間あたりの高架下にあったフタバショッピングセンター?(多分そんな名前だった )であろうか.ロケーション的には良いのだが,造作としては高架下であるのでモデルになるかどうかは微妙であるし,ここも震災の影響を受けて現在は店舗数も激減している.昔は高架下の真ん中に通路があり,その両側を店がはさんでずらりとあったのだが,今では所々駐車場になっていたり,北側の道路に面したところにポツポツと店舗が並ぶのみになっており見る影もない.とまあここも谷川さんのイメージしたモデルにはふさわしくないだろう.

そんなこんなで私の中での本命はどこなのか?ということだが,私のひとまずの結論では戎参道(西宮中央商店街)ではないのかと思うのである.ここは阪神西宮駅の南側に広がるアーケードのある立派な商店街であった.ここで”あった”と表現しているのはここも震災の影響でその見る影もない状況になっているからである.もともと古い建物がほとんどでなおかつ密集していたこの商店街は,震災で約半分の店舗が失われており,私も震災後10年経った丁度2005年ごろにも訪れたが,将に空き地が点在し復興からは遠い状態であるのを確認済みである.

そんな状況にもかかわらず西宮中央商店街という名前はそのまま残っており,復興を目指している様は昔を知るものから見て痛々しくもある.加えて阪神西宮駅の高架化もあって,そちらに新たな駅ビル,百貨店が進出してきたので状況はなお更厳しいはずである.西宮市の人口も震災以前を超えているわけだし,駅の中だけでなく商売が成り立つ状況に早く回復して欲しいと思いつつ,ハルヒアニメの制作期間直前にもう少し喧騒が戻ってさえいれば間違いなくこの西宮中央商店街がモデルに使われたのではないかなどと想像してみたりするわけである.

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