通学路(その1:上ヶ原〜甲陽園小学校手前)

通学路について語るためにはある程度私の書いているロケーションを明記しなければならないだろう.まあ現在の住所はまったく違うものになっているし,当時の実家と今の実家も違う住所になっており今現在それを明かしてもそんな実害はないと思うので,そこそこ分かる程度に地名なんかは正確に書いたほうがいいのではないかと思ってこれを書いている.

ということで私の自宅は当時甲陽園地区と上ヶ原地区の境目にあったために小学校は甲陽園小学校,中学は上ヶ原中学と進むことになった.当時は阪神地区のほとんどの高校がその地域に学区を設け,その区域内の公立高校の枠内で志望校に関係なくその総合的な合格点以上の生徒をとにかく公立高校に進めさせることが出来る総合選抜という制度をしいていて,上ヶ原中学のほとんどは北高よりも近い市立高校に進むことになっていた.

公立高校受験者は自分が進むべき高校が自分の住んでいる地域によってだいたい察しが付くので当然私もその近くの市立高校を志願するよう3者面接とかでも言われていたのであるが,私の父が当時その高校の教員をしていた事情もあって,できればその高校には進みたくないということで特別に北高を志願したのである.その本来進むべき高校以外に進むことが出来るのは成績上位者であることが条件であったので,普段は不真面目で怠惰な生活ばっかりしてきたくせにこの時ばかりは2か月ぐらいガリ勉と言われてもおかしくないほどに勉強したのをよく覚えている.

ちなみにこれには後日談があって,実は私がそんなに苦労して校区を外れた高校に進んだにもかかわらず次の年度には北高より北に新しい県立高校が開校した(そんな背景であるからさぞかし名前をつけるのを苦労したであろうが)ため,校区の再編がなされた結果私の当時の実家はまさに北高の校区にすっぽり入ってしまった.なんともまあ皮肉なことで,私の誕生日が4/1に対してそう離れていない3月の終盤であるため,あと数日遅く生まれていたら高校受験であれほどの苦労をしなくてもよかったということになる.周りの人間は苦労は買ってでもするもんだからと慰めにもならないことを言ってくれたりしたが,当時の私はまさに笑えね〜と腐っていたのであった.

で,一年後に発覚する皮肉な事実に気づく間もなく,それなりの苦労の末勝ち得たはずの高校入学であったが受験制度がそんな事情であるから特に北高が優秀な学校であるというわけでもないし,特に通学路について言えば西宮から六甲へ抜けるルートの途中にあるような辺鄙な立地条件であるから,すでに受験日やその下見の段階からその通学の過酷さに辟易していたのである.

まずその坂.登山というにふさわしい勾配で甲陽園駅からひたすら登って登ってである.自転車通学は我々が入学するはるか以前に禁止されており,徒歩か学校指定のバス通学.バスについては夙川駅を起点としていて,これに乗ろうとすると私の自宅からはすこぶる不便な事情である.

自転車通学については登りのきつさも然ることながら,帰りの坂の長さがゆえブレーキトラブルに見舞われたと思われる事故が多発し,やむを得ず禁止となったそうである.確かに一度だけ自転車であの坂をずーっと下ったことがあるが,その到達速度たるや自転車のあるべきスピードをはるかに超越しており,急激な気圧変化に耳がつーんとするほど.ノーブレーキで10秒も走れば並走する自動車に追突しそうなほどの速度に到達し,そこでフルブレーキングなんてしようものならすっころぶこと確実である.

したがって私もキョンくんと同じく甲(光)陽園駅までは自転車,そこから徒歩ということになり,時間にして45分の長旅を経てようやく校門をくぐるといった3年間の通学が始まったわけである.ちなみにキョンくんのうちはアニメのモデルでは中学のごくごく近所になっているようで,キョンくんのほうが長い道のりを通学していることになる.私の通学時間に対して自転車で約5分は違う距離である.これは推測であるが,私の下の学年は前述の理由によりまさに私の卒業した中学がすっぽりと北高の校区に入っていたので,キョン君のような無駄に長い通学を強いられていた生徒も多いはずで,このキョン君はそんな苦労人がモデルになっているのであろうと勝手に想像してみたりする.このようにキョン君の自宅,中学校,北高のレイアウトに加え,当時の詳細な事情を知っているだけでも思い出をより鮮明にしてくれるに十分なのである.

なおキョン君が帰宅時に自転車を押して上がっている緩やかな坂があるが,ここが中学のグラウンド前あたりである.グラウンドとその道路の間には幅30mほどの空き地があったので昔は中学からその道路がほぼ素通しに見ることができた.今はその空き地にマンションが建っておりグラウンドが道路から直接は見えないようになっている.この坂をあがったところに歩道橋があり,キョン君と古泉くんが夜な夜な語り合ったりするシーンで使われている.この道路は狭いもののバス道であり,そこそこの交通量があるのに加え,上りの自動車が結構フルアクセルで突っ込んでくるのと見通しが悪いのとで,この隣接する小学校の低学年の生徒が事故にあっていたため道幅もそんなにないのに歩道橋がかけられているのである.確かに夜間は誰もここを通らないので景色を見ながら話し込むのは絶好の場所である.これは京アニの皆さんがロケハンをよほどしっかりやり込んだか,それとも谷川さんの発案だろうか.

さて,通学路そのものの話に戻ろう.高校の通学路といっても私にとって駅までの間に自分が通っていた小学校が存在するので,その経路は小学校の頃の通学路と同じで,登校を始めたころというのはこの駅までの経路にさほど目新しさは感じなかった.ちなみにアニメの中では駅までの経路は小学校の直前の坂やその周辺ぐらいが登場する.しかし私にとっても印象的なこの坂をキョン君が自転車でがに股気味に立ちこぎで登っていく様はまさに高校当時の私を見るようで滑稽にさえ映る.

私の思い出では,夏場はこの坂を立ちこぎであがったところで汗がどっと出てきて,そこから教室までの約40分間体表面から湿気が消えることはないわけで,ただでさえ気の進まない登校を一層不快にさせる.特に夏休み中の夏季補習なんぞは開始時間が普段より遅かったりして気温は普段の朝より5度は高い気温の中この坂を通過するわけで,夏休みをしっかり休みたい気持ちも手伝って不快を通り越して不愉快にさえなってしまうのである.

なお,この坂の傾斜は前述のキョン君の自宅近くの坂に比べるとかなりきついといえる.したがってキョン君は朝は元気が残っていてここの急傾斜でも立ちこぎであがっていくが,帰りは疲れているのでなだらかな坂であっても自転車を押してあがっているという心理描写の部分も見て取れるわけである.ただキョンくんが自転車を押してあがっているときは大概考えごとをしていたり,大いに悩んでいる状態であったりしているので疲労感を表現するにはあのなだらかな坂が好都合というのもあるだろうか.

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