GPz400F出会い

結局自宅からかなり距離はありつつ大学に通うことになったもののその大学では勉強するわけもなく,バイクに乗るわけでもなくそれでも漠然とバイクに乗りたいとか,日ごろの足がほしいとかの思いがあったので1回生で原付,その後中型免許取得.それでも直近の必要性はなかったためか自分に合う最適なバイクをゆっくり探そうなんて思っていた.しかしあらかじめ予定されていたことではあるものの2回生でキャンパス移転という憂き目に遭うことになる.この移転先がいろいろ関西地方の戦略が紆余曲折してしまった遺産ということもあり,いわゆる未開の原野のど真ん中にうちの大学だけが人柱的に進出させられてしまったど田舎中のど田舎.学園都市とは名ばかりで生活ユーティリティーさえも片っ端から揃ってない.ぎりぎり一人暮らしの学生が生活できるレベルの環境で足がないことには何も始まらない.これに気が付いたのは4月にこのど田舎に居を構えて1週間も経ったころというから今の私も当時の私の無計画さにほとほとあきれる限りなのであった.

4月も後半になるとついに同じ学科で同じアパートに住む友人Tに連れもってもらいバイク探しを開始することになった.友人Tはその頃私にとって想い出深いz400GPのローソンカラーに乗っていた.まあGPのタンデムシートに乗せてもらい,心当たりのあるバイクやさんを片っ端から回るというやりかたで捜索したものの,なかなか条件の合う物件に当たらない.確かに当時の私の財布には引っ越したばっかりで生活用品などを買うという名目で渡された10万円と,当座の生活費.これに加えバイトでためたほぼ同額の金が入っているだけで,当時400ccのそれなりの中古は相場35万円はしていたのでそもそもが見つかるはずがないわけである.(←あほか)

何件ぐらい中古車探しで回ったろうか?だんだん友人Tの顔も険しくなってくる.こちらは予算がない上わがままだ.かってすぐの維持費を考えて程度が悪いのははなっから突っぱねてかかる上に車種についてもなかなか決まらない.CBXやz-GPやXJ-ZS,GSX-FWやなんかも候補にあがっていたのであるが,現物を見てまたがってみても何か違う.バイクのバの字もわからないシロウトが意味のわからない理由をつけて友人Tにしたら十分お買い得に思われる玉でさえも足蹴にしていくさまはさぞかし腹の立つ行為であったことだろう.

でも自分的にいえばカタログや雑誌のインプレでは表現しきれていない何かがそれらのバイクの購入を控えさせたのである説明なんて付かなくてもよくね?とぜんぜん聞く耳持たない私.そんなこんなで般若みたいな顔になりつつあった友人Tがそろそろ愛想尽かしてもう最後のお供と思い始めたとき...

あった,あった!ありました!GPz400F.しかも安価で車検6ヶ月付き.走行は2300km.赤/黒,程度良い!(はず)当時バイクに関しての知識あまりもなく見た目でしか判断してないのにも拘わらず勝手にそう思い込んだ私は即決してそのなけなしの金の中から手付けを打って納車待ちと相成った.程度については心配する友人Tもこれで不毛なバイクやめぐりから解放されるとの安堵の表情を浮かべている.まああとは勝手にやれやって感じで異様に冷めた目をしていたっけ.当の私は嬉しくって次の日友人みんなに言いふらしたりしていた.周りから見たらさぞかし滑稽に映ったことだろう.

さて,GPz400Fについて少し語ろう.私がバイク乗れずにもっともあこがれていた84年頃,GSX-RやFZ400R,CBR400F2がカワサキ以外の3社から出てきていた.それらはすでに水冷で16バルブになっていて(CBRは空冷の上REVという可変パルブ機構が付いていて8000回転までは2バルブだったが)いかにもレプリカ然としていて,カワサキは一体なぜレプリカを出さないのだろうと疑問視されていた.

レプリカとは一線を画すGPz400Rが85年に出ることでカワサキは明確にレプリカ路線を拒否する姿勢を明示したわけだが,その時点まではKawasaki400のフラッグシップはz400FXをベースに徐々に進化してきた空冷のGPz400Fであった.最高出力は54psとFXよりも11PSもの高出力になった空冷4発8バルブは外観的にもリファインされ,なおかつFXの無骨さを継承していた.82年のフレームマウントカウルの解禁に対して,その大型のカウルはあくまでもツアラー志向の強いものであったし,カウルからテールまで流れるようなデザインははっきりいってそれまで漠然と抱いていた私のバイクのイメージにぴったりであった.しかもGPzシリーズは1100,750もほぼ同じ外観で大排気量っぽさという点が魅力的であったし,その系譜のおかげもあってそのにじみ出るヨーロッパ臭さが非常に良かった.色も銀に茶色のモデルがあったり,原色を嫌うような色調であり毛色がなんかほかの社のモデルとは違ったのである.

結局予算的にちょっと無理はしたもののGPz-Fは無事納車されたのであった.これよりバイクの維持費に生活費を削る生活が始まったといえる.

乗ってみてのGPz400Fの印象としてはそれ以前に友人TのGPを貸してもらったことが多々あったので,パワーはあまり違わないように感じた.ただカウルの舳先が余りにも遠く,ミラーも遠い.はじめ慣れるまで難儀したが,それ以外は最高であった.走りについてはフロントヘビーが気になるもののあばたもえくぼ.買った時点ではかなり柔らかいオイルが入っていたようで,すぐ熱だれしたがすぐにオイル交換して解決し調子は絶好調になった.

今思えばこの巡り合いからバイクに関する考え方が形成されていったのだと思う.z400FXにはじまるカワサキ400マルチの息吹が私に基本的なバイクの扱い方,楽しみ方,いじり方を教えてくれたように思う.その中でもGPz400Fは一生忘れ得ない車体となったのである.

KEN-Z's WEBのトップへ NEXT