バイクをいじるということ

バイクを手に入れると自然といじりたくなる.当時バイクをいじるとすればマフラー,セパハン,バックステップぐらいしかなかった.カスタムがそんなにはやっていなかったし,パーツは高かった.当時のマフラーといえばヨシムラサイクロン,モリワキフォーサイト.他にはカウルをいじったりサイドカバーやポイントカバーをBEETのやつに換えるカスタムもあったが,外観的な改造でしかなく,そのような改造はノーマルの良さをスポイルしていると思っていた.

当時私にはマフラーを付け替えてもそれと同時にキャブを調整しなければならないという知識もない上,同じくまわりの人間もマフラーは変えてもキャブはいじってなかった.その結果燃費が落ちるとか,低速が極端になくなるとか漠然と評判が悪く.マフラーは変える気にはならなかった.JMCAなんて当時はないから車検のたびにノーマルに入れ替えて車検を通すなんてこともあり,結局は手間とお金がかかる.

音が良くなるという点で変える輩が多くいたが,音についてはノーマルの音が好きだし,それに増してサイレンサーの役目をほとんど果たしていないマフラーに興味はなく嫌悪さえ覚えていた.正直学生の身にはマフラーは高かったし...

金のない学生が適当に自己満足の範囲で何をするかというと解体屋巡りである.当時GPzは事故車が山のように出ていた.また八幡に行けばそんな解体屋さんがたくさんあった(今は有名になってしまって高いことで評判が悪いけど).解体屋に行ってGPzを見つけておじさんにめぼしいパーツの値段を聞く.値段の折り合いがついたら自分ではずして購入となるのである.この自分ではずして自分で付けるというのが楽しい.メカいじりは初めてではないが,バイクの部品をいじる楽しみはここで知った.

何かのときにと純正のウィンカーやミラー,ブレーキレバー,シートなど入手する.一番嬉しかったのは純正のオイルクーラーを見つけたとき.5000円だったと思うが,族車からの取り外しだった.カバーに何やら青い塗料がついていたが,外見は磨けばごまかせる.貧乏学生の癖にオイルクーラーを付けたいが為に1500kmも走ってないのにオイル交換をしてしまった.

オイルはZ750FXTに乗っていた人にカワサキの空冷4発はサラダオイルでも走ると教わっていたのであるが,いろいろ試してみた.まず定番のGTX-7(15W-40)である.当時セールで1980円であった.しかもGPzは容量2.7literなので,莫大な量があまるのである.潤滑,冷却に関しては問題はなかった.

次に試したのはVALVOLINE RACING(20W-50)である.1クウォート(=0.94liter)298円である.このオイル20Wとはうそばっかりで低温でもチョークも引かないで何のストレスもなくエンジンがかかるようになってしまった.それでいて渋滞路で熱だれもしない.

その性能に歓喜する余り次はPENZOILに手を出した.1クウォート198円であった.10W-40であったが,これは大失敗であった.カムの鳴きが大きくなり,パワーもなかなかでない.アイドリングは安定しない.低速でエンジンがかぶり気味になる.最低である.

結局VALVOLINE RACINGに落ち着き,ちょうど安くなったとき,箱買いしてしまった(248円x12本).こまめに交換していればエンジンも長持ちするだろうと安いので2000km毎に交換し,また箱買いするというのを繰り返した.

オイルフィルターについてはDAYTONAを入れてみた.ところがこれがまたまた大失敗.ぜんぜんフィルタにならない.オイルゲージ窓がだんだん曇ってきた.付け方を間違えたかなと思っていったん外して確認してみたが,付け方は正解だった.そのまま付け直すのもためらったものの,改善するかと思い再び取り付けた.ところがまた曇りが進行し,ついに見えなくなってしまったのだ.オイルフィルタは純正の方が良かった...

しばらく走るとブレーキパッドがいかれてきた.純正をしてもガツンと効くと当時絶賛されたブレーキである.いじるつもりもないし,金もない.何とか安く済まそうにも中古のパッドは本来御法度であるし値段的にも買い得感は薄い.パーツ屋さんをいろいろ巡るうち,EBCというパッドメーカーが見つかった.RIDING SPORTにも広告が出ていたし,純正4800円に対して3900円で両側で1800円の差額.DAYTONAの2800円のハイパーパッドというのもあったが価格を基準に考えると余りにも冒険なので,EBCにした.

工賃はかかったが,結局EBCにして問題はなかった.つまるところライフや効き具合に差を感じることが出来るほど繊細ではなかったのであるが,その次からは開き直ってDAYTONAにすることにした.結局巷の評判でもDAYTONAは純正と同等であったし,ライフも短くはなかった.

その当時にバイクいじりの鉄則のようなものが生まれた.この鉄則は現在まで引き継がれている.それは次のようなものだった.純正部品を新品で買うよりも安ければばなんでもいい.だめならすぐに外しても後悔しない程度の出費にすべし.

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