入れ替わりに見られる二人の癖,しぐさ

まず,本作の楽しめるポイントの一つは入れ替わり時の二人のしぐさ,セリフ周りがあります.まあ,これは入れ替わりもののセオリーなんですが,やはり安藤さんの作画力がふんだんに活かされていると各所で感じます.男っぽい動きをする女キャラは比較的多いので,どちらかというと本作では三葉in瀧の部分の印象が強いでしょうか?ということでまずは三葉in瀧くんのほうから.

三葉in瀧の登場シーンはまずベッドから落ちるところからです.いきなりここでまず足が内股です.緊急時にも脚が外を向かないということで,三葉の普段からの”しっかり”している性格が表現されていると思います.

続いてこちらは映画ではなく小説の表現なのですが,”全身の皮膚と血液が,〜引っ張られている.”のところ.これは確かに朝いきなり入れ替わったらそう感じるよねということで非常に的を得た表現だと思います.そんな感覚女子は味わったことないでしょうから.新海監督の表現力は文章だけ取り出してもやっぱり素晴らしいなと思います.

あと,トイレのシーンですが,映画ではトイレから出てきたところが中盤で出てきます.顔もそうですが,手のしぐさがとってもかわいらしいです.ここでも小説のほうの表現では,”なんとか指で〜困難な形状になっていくってのは”のところ.少しエッチな感じもしますが,確かに持つべき場所を知らないとそんなことにもなるんだろうなと,三葉にとっては相当な羞恥プレイだったと,思わずニヤリとしてしまいます.

ただ,三葉もちょっと頭を使えば座ってることもできたのにと思います.そこを三葉はまじめだから男子は立ってするものと決めつけて,自ら羞恥プレイを経験することになってしまったと考えると,ここも三葉の性格とかを含めてうまく表現してくれているなと思うのです.

他には序盤だけでも私の感じた範囲では

・鞄のかけ方
・走っているときに手首が開いている.
・お昼休み屋上で正座している.
・ベッドの上でも内股
・スマフォを操作する手の動き
・ベッドから降りるときの動作(これが結構かわいい)

など,挙げ始めるときりがありません.すべて作画監督さん,アニメーターさんなどの高い技術がごく自然に三葉in瀧のしぐさの一つ一つを丹念に作り上げてくれた結果だと思います.

ちなみに女のコならではのしぐさ以外に,三葉in瀧の状況でも三葉の癖が出ているポイントもあります.三葉は右手で耳の前あたりの髪の毛を少しねじりながら触るのが癖のようです.なにか感動したり,恥ずかしかったりするとやってます.これにはちょっとバリエーションもあったりして,デートの日の入れ替わりが成立しなかったのを残念がって逆サイドの髪を1回やっていたり,特に髪を切った以降は顕著で,鏡に映った自分を見て1回.初演の夜テッシー,サヤちんと待ち合わせて1回.それに加えてなんと瀧in三葉までもが再演の日の学校でテッシー,サヤちんの前で左手でやってます.まあこれは癖ではなく会話の流れなんでしょうけど,初演と再演で同じしぐさなのにあまりにも会話の内容が違うコントラストを見せたかったんでしょうね.これは映画ではありませんが,アナザー小説の表紙でもやっていたりしますので,かなりキャラクター設定の中でも重視された部分なんでしょうか.

で三葉in瀧でこれをやっているのは

・新宿南口から地図を確認した後で歩き出すところ.風景を見ながら
・高木くんに問い詰められて
・自分のバイト先を聞くとき

とか私が確認できただけでも頻発しています.新宿で男子高校生があのしぐさをしていたらちょっとおかしく感じるところですが,そこは都会なんでそんなこともあるかもと許容できてしまいますね.それに中に三葉がいると思うとなんだかかわいらしく見えてしまいます.

あと,三葉in瀧ばっかりではなく,そろそろ瀧in三葉の話題も挙げておきましょう.まあ,男っぽいしぐさをする三葉ということでは様々な表現があふれていますが,その中でも一番カッコいいなと思うのは,三葉との総武線での出会いを思い浮かべながら疾走しているところ.特に段差を飛び降りて体勢を崩しながらもそこからまた走り続けるところの動作です.自転車が落ちたのに自分は根っこに掴まって逃れたあたりから,瀧in三葉が三葉の運動能力を超えたパフォーマンスを出しはじめ,とても三葉の身体とは思えない動きになっていきます.まさにクライマックスを予感させる感じです.

そして外輪山の上で走っている姿.入れ替わっている二人の走り方がとても対照的です.三葉in瀧の内股走り,なおかつ少し不安定な感じ.瀧in三葉の全く違和感ない豪快な走り.もし瀧くんが三葉in瀧の走りを見たら自分で笑ってしまうでしょう.その逆は三葉はもう少ししとやかに走るよう怒るでしょうか.実際ありえないシチュエーションも想像して楽しくなってしまいます.

ちなみに映画の中で,一番初めの鏡を見て驚愕したあとは瀧in三葉は登場しません.久しぶりに顔が見えるのは美術の時間のあの瞬間のドヤ顔です.三葉in瀧がいろんなハチャメチャを経験しながら面白おかしく過ごすのに対し,瀧in三葉は少し鬱屈した三葉の生活に疑問を感じながら,適応していっているという対照的な状況を表していると思います.

単なる入れ替わりに加えてここまでキャラクターの様々な設定をストーリーの中で絶妙な表現力でふんだんに盛り込んだ本作だから何度でも二人のことを知りたくなってしまうというのも本作でリピーターの多い理由なんだと思うのです.

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