奥寺先輩について

前回奥寺先輩が少し出てきましたが,見返してみると当て馬とかひどいことを書いてしまいました.でも実は私はそういいつつも私は本作での瀧くんの人格形成において奥寺先輩はキーパーソンなんだと思います.それとともに奥寺先輩にとっても瀧くんはキーパーソンだったのかも?なんて思います.

というのも飛騨の旅館の一階で奥寺先輩は司に瀧くんのことを打ち明けます.それはその日一日の奥寺先輩の振る舞いを後になっていいわけするかのような雰囲気を持っています.その日の奥寺先輩の振る舞いを見直してみますと,

・気合の入ったアウトドアファッション
・駅でのマスコットに対する女子高生のような喜びよう
・神社の階段で司くんとグリコ
・田んぼわきの道でのかわいい歩き方
・ばば抜きのばばを引いたときの表情,アクション
・五平餅を食べているときの顔が瀧in三葉のスイーツ食べるときと酷似
・バス停での”私(たち)の努力”発言

どれも,とても普段の奥寺先輩からは想像できないものばかりです.

これは奥寺先輩が前回のデートでの失敗を自分にも敗因があるかもと思いこみ,離れていく瀧くんの気持ちをつなぎとめたかったのに加え,飛騨に誰かに会いに行くということで是が非でもそこで単純にカップル成立というのを阻止しようと考えたのではないかと思います.実際司との話の中でも瀧くんが誰かと出会い,その誰かが瀧くんを変えたと分析しています.ですから奥寺先輩はその変わった瀧くんのしぐさなどからその相手がどのような女の子なのかを分析して,その日一日その女の子を演じたのだと思います.ここんところ思わず奥寺先輩に乙女を感じてしまいます.

それに対して,瀧くんはこの日は一切奥寺先輩のことを見ていません.奥寺先輩は涙ぐましいほどのあらゆる”努力”が全く蹴散らされた感じなのです.まさに”どうしてくれる!?”という気持ちからあのバス停発言につながったわけです.だからラーメンを食べているときに瀧くんが今日は出直すといったのに対して,少し合点がいかないものの次はどうするかな?みたいな複雑な表情を見せています.仕切り直しかな?もしかしたら私のほうにまた来る可能性もありかな?みたいな感じでしょうか?

そこへきて糸守の名前が出た後の瀧くんの悲惨ともとれる混乱具合と振る舞い.この一連の謎の行動を目の当たりにして、それまで自分がモテモテ街道を突っ走ってきたのに,瀧くんについてはどうあがいてもダメというのが決定的になったわけです.もしかしたら人生初の挫折?そりゃプカーっとやりたくなりますわね.それに心なしか目が潤んでいたりする.それでも瀧くんにはあんまりわからないように部屋ではなく一階で吸っているというのは逆に今度はこっちの涙腺が緩んでしまいます.そんななのに翌朝には瀧くんの置手紙を見て瀧くんを心配してくれるとこなんか,もうなんかどんだけ瀧くん好きなんですか?と勘ぐってしまいます.

で,この奥寺先輩の”瀧くん向けかわいいアピール”の真っただ中にさらされたのが司くん.三葉in瀧を”ちょっとかわいかった”といっただけあってそれを正確にトレースをした奥寺先輩は司くんにとってもツボであったに違いありません.パンフ第二弾の中でも新海さんは裏設定の話をしていますが,それを見て”やっぱりね”という感じです.やっぱり,”内定もいっぱいもらえた”,”もう俺は高校生だったころとは違う”,”しっかりした一人の男としてみてもらおう”となるじゃないですか.で,その一方で指輪もらったほうはなぜか瀧くんにLINEを入れちゃう.そして指輪を見せながら,あの言葉.正直あの言葉の裏には
”場合によっては私と幸せになってたんだけどね,今からでも遅くないかもよ?”
みたいなニュアンスがあったのではないかと想像してしまいます.でも瀧くんの表情からやっぱりそれはないんだと確信するのです.あぁ,ちょっと切ないわ〜.

ちなみにビジュアルガイドなどでも奥寺先輩のビジュアルに関して安藤さんがかなり苦労されたようなことが書いてあります.単にケバいお姉さんにならないよう田中さんのイメージに対してうまく味付けをしているので,アフレコの時に初見だった田中さんが感心されたんだとか.その工夫の箇所として目元や前髪などもあるようですが,一番効果的だったのが口元でしょうか.口紅の色はかなり抑えめにして,それでも唇の質感は失わないようにハイライトを多めに入れています.口紅が濃いとどうしても口元の表情の表現力が下がってしまいますので,これはかなり効果的で奥寺先輩のパーソナリティを十分に理解できるようなうまい味付けだな〜と思います.

唇の表現で同じことが言えるのが三葉の奉納舞を舞っている巫女装束のところです.上唇の口紅を薄めにハイライトを広めにとって,下唇もハイライトを多めにしています.これで口元の表現がしっかりできるようになっています.実はここは口噛み酒のときと,オープニングの夢灯篭の流れているときに出てくるのとで表現が異なっています.というのもオープニングについてのみ田中さんが安藤さんの下絵を元に絵を作っていったようで,田中さんの場合は巫女装束の三葉がきりっとした表情で口を真一文字にして待っている姿になっていることもあり,口紅のハイライトは少し控えめになっています.そんなところを気にしながら見ているとつくづく何回見ても退屈しない本作の特異性を感じてしまうのでした.

最後は奥寺先輩の話ではなくなってしまいましたが,やっぱり三葉と奥寺先輩が再会して,どんなお友達になっていくのか,そのわきで瀧くんがどんな顔をしているのか,想像するたびにやけてしまったりします.それほど二人にとって重要な役割を担っているのが奥寺先輩なんだと思うのです.

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