RADWINPS-スパークル(人間開花の特典DVD)の映像について

ロングラン上映が続いており,いまだブルーレイの発売日程も決まりませんし,見たい時に見ようと思っても映画館に足を運ばなければいけない状況が続いている本作.そのためリピーターが次々新しいお供を連れて見に来るなどの状況も相まっていまだ興行収入が伸び続けています.その反面,自分が好きな時に好きな部分だけ映像を細かく見ることができないということが少しストレスになっている人が多くなってきているような状況になっていると思います.そんなさなか,RADWINPSの人間開花のCDについてきたDVDの最後に入っていたスパークルのビデオクリップがある意味そのような人たちの拠り処になっていたりします.これは新海監督が編集したものと触れ込みがありましたが,中にはオリジナル映像もあったりして,ファンにとっては垂涎の代物となっています.

その内容というのは単なるダイジェストではなく,いわばパラレルワールドを模したような構成になっています.わかりやすく言うと前半がバッドエンド,後半がベストエンドってかんじでしょうか.映像を見ていきながら曲を聴いていくと,前半は比較的淡々と入れ替わりをこなしている二人が結局カタワレ時を迎えられなかったという筋書きで,結局あの階段で瀧くんは三葉の痕跡のみしか感じることができないという終わり方です.ここで前半が終わり東京の街のシーンが流れ,リセットがかかります.

そして再びの入れ替わりでは映画の中での二人の入れ替わりが様々な喜怒哀楽をもって表現されます.まるで二人が入れ替わりの中でお互いを理解しあい,お互いの人生を楽しんでいたというような感じ.その結果として前半とは異なるエンドを迎えることになります.確かに歌詞のほうも前半は前提や主観的なことを表現する部分,後半はその過程,相互理解と感情を表すような歌詞になっています.そして最後に出てくるのは映画のそれとは違うエンド.映像と曲のマッチングが絶妙で,新海監督のすごいところだと思うのですが,この6分間の映像だけでもうはっきり言って泣けます.

で,その泣けるエンドにケチをつけるわけではありませんが,私はあのエンドはまだ半年ぐらいたったところであるので,あのあと実はやはり長い時間を経て映画のエンドがトゥルーエンドとして待っているのではないかと思っています.というのも,あのエンドだけでは単にまだ三葉も瀧くんもしっかりと気づけていません.それはお互いの表情からも明らかです.やはり5年の加わったことで二人のつながりの糸(=ムスビ)が強化され,ついにあの劇的なエンドを迎えられたのだと思うのです.ということで早速もう一度映画館に足を運び,そのように考えながら見返してみたところ,今まで以上にエンディングで泣けてしまいました.

あと,特典DVDの映像とは関係ありませんが,前前前世の歌詞の中にある言葉,結構いろいろ好きなフレーズを紹介している方が多いですね.映画の中特有の歌詞もあったりして,バリエーションが多いのも特徴です.私は前前前世では”ぶきっちょな笑い方”というのが好きです.三葉の笑顔のことなんですが,はじめこの笑顔ってのが三葉の宮水家の巫女たる振る舞いに押さえつけられた笑い顔かな?と思っていたのですが,上の動画や,3度目以降見て考え方が変わりました.ここでいうぶきっちょな笑い方は三葉が外輪山で見せるあの笑顔ではないかと思うようになったのです.ぶきっちょな笑顔に対し,洗練された笑顔というと思い浮かぶのはやっぱり奥寺センパイ.でも三葉が瀧くんに初めて見せた笑顔は涙をボロボロこぼしながら見せたあの笑顔です.

今作では野田さんに音楽を作ってもらう前にもうすでに絵コンテと新海監督自ら吹き込んだシナリオ音源が出来上がっていて,それを見て野田さんは作詞していたようです.そうなると瀧くんと三葉の出会いシーンのコンテには,ぐちゃぐちゃに崩れた笑顔の三葉が書かれていたように推測できます.だからこれがぶきっちょな笑い方そのものなのかな?などと思うのです.

あと,エンディングについても三葉の顔はそんなかっこいい笑顔ではありません.涙があふれ,不安そうな表情の中ようやく会えたという可能性を垣間見て,あの笑顔が浮かび上がってくるのでしょう.そんな複雑な表情ですが,絶妙に表現されています.まあこのページの背景の模写の元にもなっていますが,実は私,この三葉の顔が一番好きです.まあ,この部分は”うれしくて泣くのは,君の心が君を追い越した”ということなんでしょうけど.そういった言い回しもとっても官能的に感じてしまいます.

ちなみに言の葉の庭でも新海さんは秦さんの”言の葉”のビデオクリップを劇中の画にオリジナルシーンを加えて鮮やかな作品に仕上げています.この中の靴のシーンは劇中にもなかったシーンであり,秦さんの歌声の余韻に浸りつつあの映像を見ていると,嗚咽するほどに雪野先生と秋月君の気持ちを感じてしまうのでした.

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