テッシーについて(その2)

いろいろ本作のファンの方々もテッシーが好きという方が多いですね.私もテッシー大好きで,なんか三葉や瀧くんよりも語っているボリュームが多いかもしれません.そういった理由から2回に分けてということになってしまいました.ということでまずはテッシーの気持ちの変化からです.

<なぜテッシーがあのように活躍するに至ったか>

アナザーストーリーでは”スクラップ・アンド・ビルド”というストーリーの中でテッシーの気持ちの中身やその変化が赤裸々に描かれています.

まず一つ目は糸守町に対して爆破したいとまで思っていたということです.ネタバレになるのであまり細かくは書きませんが,三葉への思いと自分の将来を考えたり,自分の親の働いている姿,その背景などすべては糸守町が今こうあるからだと考えていたのです.そして,それは自分で変えていきたいけど,このまま後を継いで社長になってしまったらできなくなってしまうとか,そういったことまで考えています.そのための起爆剤が即ち”爆破したい”であり,結果としてそれが”彗星”で実現してしまったということになります.

アナザーストーリーのほうは新海さんがそこまで細かく設定したのか,加納さんが多少脚色したのかわかりませんが.映画でなぜテッシーはあんなことをやってのけたのかの背景としては,”ああ,なるほど”という内容です.是非未読の方には読んでいただきたいと思います.

<三葉はテッシーの気持ちに気づいていたか>

テッシーの三葉への思いはあまり劇中出てきませんが,初めの自転車で後ろから三葉を見つけたときの顔が全てを物語っています.本能的に三葉がいるだけで空気感がかわるような,そんな思春期特有のあの感じ.本人は意識していないのに思わず自然と出てきてしまう感じが作画の中でしっかりと表現されています.あと,口噛み酒のシーン.”そらうれしいやろ”とサヤちんに食い気味に本心を吐露してしまう.完全に本人は無意識にサヤちんに対してむごい仕打ちをやってしまっているのと,またもうそれを普通のリアクションで返しているサヤちんがすごく健気.

で,あそこまでアピールされているにも関わらず,三葉は一向に気づかないふりをしています.この点私は三葉はテッシーの気持ちを恋心ではなく,ある意味宮水神社の巫女としてリスペクトされているだけと捉えていたのかもと感じています.その上でサヤちんの気持ちを理解し,テッシーをサヤちんと結びつけることを願うようになったと思います.これは小説の中での瀧くんへの禁止事項の中でも三葉が書いています.

その状況で果たしてテッシーは少なくとも彗星の直前,どんな気持ちで三葉を見ていたのかを考えてみます.テッシーは三葉に想いを寄せつつもそれを言葉にすることを自分の立場などからためらわざるを得ず,長い年月をかけた後にあきらめるようになっていったように想像しています.あくまで三葉は主役.自分は脇役.だからそんなことは考えても口に出してもいけない.テッシーってそんな古風な男なんだと思います.だから瀧in三葉が部室でべたべたくっついてきたときにあのような反応をしたんだと思います.

<テッシーの思いは果たされたのか>

テッシーは彗星の後どんな気持ちだったのでしょう.私は三葉,サヤちんと何かをやり遂げた気持ちとともに三葉への思いとの決別をしたのではないかと思っています.”三葉は主役やから”というのを,この美しくもがく中で決定的に感じてしまったのではないか.なんせ,三葉は常人では到底不可能な彗星の惨禍を予言し,そして,すごいことを成し遂げたわけです.テッシーは”所詮自分は手伝っただけ.”と思っていたでしょう.そして奥ゆかしく自分に厳しいテッシーは自分と別格な三葉に俺はふさわしくないと結論を出したのではないかと推測しています.

しかし,それには三葉との十分な思い出があってのことだと思います.甘酸っぱくほろ苦い初恋の思い出.ほろ苦いのは潜在的に恋を終わらせたがゆえの”失恋”です.そして甘酸っぱい部分も少しはないとかわいそうです.なので振り返ってみて,甘酸っぱい部分はないかと考えました.そしたらありました.

私はそれは”バイクの後ろに好きな女の子を乗せて走る.”であったのかも知れないと考えています.細かく見ればそのバイクはカブですし,制服を着たまんまであったり,時間にしてそんなに長時間ではなく不完全なものだったかもしれません.しかし,”やったれやあぁ!”とこぶしを突き上げて疾走する姿に私はテッシーの願いがかなった瞬間を見たのです.

そして,三葉への思いがしっかり吹っ切れたならば,たとえ身近に三葉がいたとしても,あとは思いを寄せてくれている大事な人に心を開くのは,そう難しくはないことでしょう.あとは時間が解決してくれることになります.そのような二人が結ばれるに至る心理描写の上ではやっぱりこの美しくもがく中で,テッシーの思いは果たされておく必要があるのかな?なんて思うわけです.

<作戦行動の総まとめ>

三葉が去った後もテッシーは境内をギリギリまで駆け回り,まさに”うつくしくもがき”ます.でも親父さんがきたとき,一度はあきらめかける.けど見上げた空に割れている彗星を見て,やっぱり三葉のいったことは本当だったと確信します.即ち,それまではまだ多少疑いの気持ちもありつつ三葉を応援する気持ちや,元々持っていた町を破壊したい衝動からやっていた部分もあったということです.

これとは対照的に,彗星が割れているのを見た以降のテッシーは純粋に糸守の人々を救うために動いてくれるようになったんだと思います.ここらへんの瞬間的な変化を思いつつテッシーがお父さんの肩を揺らしているとこに加えて,サヤちんがユキちゃん先生たちに囲まれながら彗星を指さして訴えているところを見ると,あの瞬間さえもが私にとっては感動的なシーンに思えてくるのです.

テッシーはその風貌やキャラクターを少しずつ変えて,今後も新海作品に登場してくれるのではないかと想像しています.恐らく新海さんの投影キャラという想像が正しければ,新海さんの成長とともにテッシーも成長していくのではないかと,その変化にも今後期待しておきたいものです.

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