産卵(2000.4.22)

そんな4月のある日私は朝から発熱し内臓の調子が悪くなる風邪を引いて会社を休みました.会社に電話したあと崩れるようにベッドに沈み,睡眠をとった後,10時頃空腹に耐え兼ね階下に降りると,妻が"金魚が卵を産んだ"と言っています.その時は"ふーんそんなこともあるんだ"とぼーっとした頭で考えた程度でした.それよりも私はすぐに食事がほしかったのですが,近くのスーパーの特売があるからと妻はそのまま出かけてしまいました.

すぐに帰ってくるといっていた割に妻と娘はなかなか帰ってきません.私は空腹を忘れるために金魚の水槽を覗き込みました.すると金魚に食い荒らされてしまった水草や,樹脂性の造花ならぬ造草にもプツプツとタラコのような粒がついています.ちょっと見た限りでは十数個が見つかりました.ところが,観ている傍から金魚は自分の産み落とした卵を食べているではないですか.永代にわたり人間に養殖されてきた金魚は子育てをするといった本能や,自分の産んだ卵は食べないといった道徳(?)さえも忘れ去ってしまっているのです.ああ,空しい...

といってもこちとら病人ですので金魚の卵を救うために別の水槽を用意したりする気力が起きません.特売に殺到した主婦の皆さんと長い列に並び疲れて帰ってきた妻にその旨伝え,朝食にありつくまで約1時間半.妻によると,昨日水換えをしたばかりで,今日の朝からいきなり小さい方が大きい方のお尻をつつき追い回していたそうです.すると水草に取り付いた卵を発見したとのこと.そのうち妻が見ている前でもポロポロと産卵するようになったようでした.妻も自分が産んだ卵を食べる様子を発見して胸を痛めている様子.で,それを話半分で聞き,つかれまくった私は再び2階へ.この時点では卵を産んだとしてもちゃんと受精したかわからなかったし,そもそもこのような環境で卵が孵るとは思っていませんでした.

あまりの気持ちの悪さに苦しむこともなく爆睡した後,再び階下に降りた私は妻が卵を親金魚のいる水槽から別の水槽に取り分けているのを見ました.妻も居たたまれなくなって取り分けたそうです.それでも取っているそばから親金魚は卵を食べまくり,最終的に取り出せた卵はごく一部だったようです.それでも見た限りでは100ヶ以上はあります.目が悪い私が見た限りですから実際はもっとあるんでしょうか?

翌日は会社に出ました.夜,なんとか情報がないことには始まらないと思い.インターネットで金魚の産卵についてのwebを探し,ひたすら読みあさりました.それによるとやっぱり親金魚が卵を食べてしまうのは当たり前のことらしいです.金魚だけでなく熱帯魚なんかでもそれは常識で,産卵のときは産卵槽という別の水槽の中で産卵させ,産卵したらすぐに元の水槽に親金魚を移すという方法を取るらしいです.それには親金魚が産卵するタイミングを見計らったり,産卵を促すような環境を整えてやったりする必要があるらしいです.具体的に言うと暖かい水に変えてやったりするらしいです.

でもうちの場合は場当たり的に産卵を目撃したがゆえにこういうことをしているわけです.恐らく今までの私の生涯で金魚を育てていたことは何度もありましたが,こういった事は初めてではあります.しかし,実は産卵したのを見逃していただけかもしれません.今になって思えばかわいそうなことをしたなと思います.

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