キャブ周り(その1)

とうとうキャブにとりかかります.といってもキャブはもうずいぶん前に車体から取り外してあり,状況は確認済み.中を見る前に外観は全体に粉を吹いたようになっていましたし,アクセルとチョークワイヤーは動きませんでしたので,ばらす前から中身についてはかなり覚悟していたのですが,やっぱり手間がかかるとわかっていながらなかなか乗り出すことができず,結果としてこんな最後になって手を掛けることになったのでした.

まあ覚悟はしていたというのは確かなので,完成間近なんだからと自分をいきり立たせて作業開始.やっぱりという感じでフロート室を開けたところがいきなり写真のような状況.フロート室のガソリンがすべてタール状に変質しておりますが,私にとっては実のところニンジャやザンザス,GPZ1000RXなどの歴戦の中で合間見えたものたちと相違なく言わば日常ですのでこんなことで驚いたりはしません.さて,見た感じですでに充実した内容が期待できてしまうのですが,当然その作業前に調達しておかなければならない部品というのがあります.しかしあまり心配性であっても再利用できるパーツは再利用する主義の私はかえって使わないパーツが作業後に残ってしまうことが重度の精神的苦痛をもたらすわけで,予防の意味合いでの部品調達は原則禁止です.ということで,このキャブに関しては極端に長く事故の危険性も高いアクセルワイヤーのみ新品調達.

 

さて,そのワイヤーを待つ間に作業をはじめましょう.まずは動かないワイヤーのうちチョークワイヤーから.KSRの場合,左のハンドルスイッチの下からチョークワイヤーが出ており,ワイヤーの中に水が入り込みやすく,長期放置車は大概チョークワイヤーが固着しています.またチョークレバーを取りつけるネジもそんな水が集中しやすい箇所であることもあり錆びて固着したり,逆に抜けてしまったりトラブルが多いみたいです.

例に漏れずこのワイヤーのネジも見事な茶色で,外すときに舐めてしなわないかかなり緊張したのですが,なんとか外すことは出来ました.キャブの側も外して,まずはワイヤーを鉛直に垂らして556を吹き込みます.本来ワイヤーにはもっと粘度の高い揮発性でないものがいいのですが,このような固着したワイヤーを救済するには潤滑性や残留性能でなく浸透力が勝負になります.従って普段あまり使わない556が登場するわけです.

で,適当な量を両側から吹いたらワイヤーのタイコを手で引っ張ってみます.ここでワイヤーは少しずつ伸びるはずなので,ワイヤーのどこら辺で固着しているか特定することが出来ます.ワイヤーというのは途中に最下点があったり極度な屈曲があったりしなければ,固着しているのは入り口か出口の近傍というケースが多く,その近い方から浸透性の高い油で固着をゆるめてやることが一番の近道なのです.ということで今回はキャブ側が固着していましたので,キャブ側からジャンジャン556を吹いていきます.タイコをプライヤで挟んで,引っ張っていくとなんとかストローク分動きました.今度は逆側から引っ張ってフルストローク,またその逆をやって556を噴射を2度ほど繰り返したところで中からまっ茶色の556が出てくるようになりました.言わばこれが固着の正体なので,茶色い556が出れば出るほどゴールは近づくわけです.

フルストロークの引っ張りと556の噴射をあと3回も繰り返したら,全然普通のワイヤーと動きが変わらないレベルになりました.あとはワイヤーを鉛直に垂らして放置して,中の556をできるだけ出してやったあとでグリスメイトを両側からたらふく吹いて,摺動を確認してチョークワイヤーは無事復旧.

KSRについては単気筒のくせに結構ここまでで大変そうなのが丸わかりですね.ということで今回はここら辺で次回に続きます.

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