手ごわいキャブ(その2)

さて,4番キャブが済み,お次は3番.3番は4番とほぼ変わらないコンディションであり,あえてご紹介する必要もないので,次の2番.これもやはりほぼ同じ様相.やはりサイドスタンドで立っていると1番が一番低い位置になるので,徐々に程度が悪くなるのではなく,1番のみが他のキャブに比べて極端に程度が悪くなる可能性が高いようです.

ということで,一番外観も悪く,ガソリンが溜まりやすいであろう1番に掛かって参りましょう.まずフロート室を開けた状態ですがこんな感じです.フロート室の底にはべったりとタールがこびりつき,一部固化しています.メインジェットの表面もうっすらと一部ゲル化したガソリンが覆っています.フロート室内全体にも同じようなゲル状ガソリン皮膜が蔓延しています.う〜む,これは今までで一番すごいかも?

面食らうのもこれぐらいにして,まずメインジェットを外してみましょう.一応メインジェットは固着もなく,すんなり外れました.それにゲル状のガソリンもキャブクリーナを少し吹いただけで除去できました.う〜む,この段階では結構好感触.お次はスロージェットを抜いてみましょう.抜いて...あれ?抜けません.ザンザスのときもそうでしたが,あの時は自作専用マイナスドライバーで何とか抜くことが出来たのです.しかし今回はドライバーが螺旋状に変形してしまって取れてきません.なんとかしないといけない一心で頭をひねります.まあ,このままスロージェットを壊すまでまわしてしまうと,恐らくスロージェットがとれず,キャブ本体までお釈迦にしてしまうかもしれないので,ここは慎重に行かなければいけません.

ここでひとつ名案が出てきました.ショックドライバーに付属しているマイナスビットの外周を削って,スロージェットの入っている穴に入るようにして,スロージェットをショックドライバーを用いて外そうというのです.ディスクグラインダーを持ち出し,ビットの側面を均一に削っていきます.ビットはそもそも6角形ですので,なかなか穴に入る大きさまで削るのは大変で,意外にこの穴が深いので径がそこまで落とせても今度は長さが足りなかったりして思った以上に時間がかかりました.なんとか先端がしっかりマイナスのリセスにかかるまで削れたら,満を持してショックドライバーにセット,リセスにかましてハンマーを一発.と,意図どおりにスロージェットが外れました.少しドライバーでまわしたときに外側に向かってバリが出てしまいましたが,それ以外はスロージェットにダメージもなく外れたので,これは大成功.ちなみにそのスロージェットは完全に中央の穴がふさがっており,外側も結構な汚れ固着が見られており,これを洗浄するのは結構大変そうです.

フロートバルブはこれまた大変な状況です.バルブのプッシュロッドが,押しても押してもまったく動きません.何かが引っかかって,動きがスムーズでなかったり,一時的に引っかかってしまうのは経験したことがありますが,これだけ固着して動かないのは初めてです.これはそのまま超音波洗浄にまわして様子を見ようと思います.

一方ニードルも酷い状態です.メインジェットの内径にほぼぴったり合う形に何かが固着しており,これは同じく経験したことのない酷さ.

で,ひとまず初回の超音波洗浄の結果ですが,メインジェット,スロージェット,ニードルの外側の固着,スロージェットの穴の詰まりはほとんど効果がありませんでした.唯一フロートバルブのロッド固着についてのみ効果があり,少し強めに押したらその後はスムースに動くようになりました.

各ジェット,ニードルの固着汚れについては,少しゴシゴシウェスでこすったところかなりましになりました.また,スロージェットのつまりは約20分かけて銅線を入れて貫通,真円化することに成功しました.同時に内部の固着分を落としておき,再度の超音波洗浄にすべて投入.その結果とりあえずキャブ本体に装着するに十分な綺麗さと判断できるようになりました.(←なんかはっきりしない表現ですな)

これらを本体に組み込み,今回の作業は終了.作業時間としては約3時間を費やし今までの中では異例の長時間作業でありました.しかし今回の救いはフロート室内のガソリンのタールが完全硬化してしまっていなかったので,意外に除去に手間がかからなかった点です.これがタールが琥珀のように固まってしまっていた場合はもっと時間がかかったでしょうし,もしかしたらこのキャブは使えないと判断していたかもしれません.今回幸いにもキャブが使えるみたいなので作業の甲斐もあったってもんです.やっぱりこういった苦難がないと面白くありませんね.ふふふ.

KEN-Z's WEBのトップへ NEXT