フロントブレーキのレストア

まず車体が組みあがったら,取り回しを楽にするためにやっておきたいのがフロントブレーキです.この車体のフロントブレーキは入手時からキャリパー固着ということでフォークからキャリパーが外れていました.でもレバーは動くのでブレーキマスターの固着はないという状況でした.なので今回はブレーキキャリパーの固着をまず何とかしようとしたわけです.

で,そのフロントブレーキマスターから伸びているのはステンメッシュホースでして,これはお得感を感じるものの,その先のキャリパーが中をのぞくと写真のような有様.これはいったいどうやってレストアを進めていってよいかわかりません.ひとまず方針としては揉み出しでなんとかなるかどうか見極めることですので,パッドを外していきます.といってもブレーキディスクから外された後にレバーが握られてしまったようで,パッドがご覧のように密着しているので,ベース材同士の隙間にマイナスドライバーを入れて前後均等にこじっていき,隙間を作り,後ろ側のカバーを外してシャフトを抜いてパッドを外すことに何とか成功しました.

続いて揉み出しを行いますが,パッドを外してようやく握った分動くようになったキャリパーですが,ポッドの周りは錆が出て居ます.なのでドライバーやもう使わないパッドの一部を挿入してストッパーにして片側ずつポッドを前に出して,ポッドの側面の錆を落としていきます.幸いにも先端から1mmぐらいの錆はなかなか取れそうにありませんが,それよりも奥側の錆は何とか取れて,パッド側面の光沢を得ることができました.なのでブレーキフルードが漏れるギリギリまで前に出して,回転させるだけの軽い抵抗になったところでポッドの周りにタイラップを巻いてとっかかりにしてポッドを徐々に回転させていきます.これで360度外周を全てきれいにすることができました.

逆側もそのようにして清掃したところ,ポッドについては流用が効きそうだと判断できましたので,あとはひたすらポッドを出しては引っ込めを繰り返していきます.すると当初奥側のポッドはかなり固かったのですが,手前側のポッドと同じぐらいに軽く前に出てくるようになりました.あとはパッドの裏側に仕込んであった純正のプレートです.これは通常だったらもっと錆びにくい材質で製作されるべきなんでしょうけど,なぜか鉄板です.で,錆の程度はというと見た目ほど深くはなく,弱くなっているところはあるかもしれませんが,破断しそうなほどではありません.それよりパッドを取り外したときにドライバーが触れて曲がったところがありましたので,錆を適当に落としたらその曲がりを修正して,同じくさび落とし,清掃したパッドとパッドを留めるシャフトとを組み込み,フォークに取り付けます.ブレーキレバーをにぎにぎした後,車体を前に押し出しながらブレーキレバーを握るときっちり止まってくれます.これでキャリパーについては清掃,さび落とし,多少の修正作業のみで全ての部品が流用できたことになります.しかしここまで相当な時間が経過していますので,バイク屋さんだったらあきらめてパーツを替えてしまうんでしょうけど.

キャリパーについては手間暇をかけたおかげで満足いく結果を得られたものの,実はここからひと悶着ありました.というのもちゃんと固着していなかったブレーキマスターなのですがいくら何でも長期放置したまんまのブレーキフルードではよろしくないということで,ブレーキフルードを交換するということでカップのふたを開けようとしたのです.すると今まで散々経験済みのねじのリセス潰れが発生し,ねじが回せなくなってしまいました.いつものようにこのねじ頭をドリルでぶっ飛ばし作戦でなんとかしようと電動ドリルで2つとも頭を落とし,カップの蓋が取れたところで新たに問題発覚.なんと蓋の厚みがカワサキとは違いすごく薄くって,ねじの頭を飛ばした後にマスターのカップ上面から飛び出しているねじが1mm強しかありません.これではバイスクリップなどで挟んで回すことはできません.ここから少しあがいてみようということで,一応ねじをドリルで完全に除去できないかやってみましたが,鉄のねじに対して周りはアルミなので,どんどんドリルが曲がってマスターのカップの肉を削っていってしまいます.なのでこのマスターシリンダーは残念ながら廃棄処分と相成ったのであります.

涙を飲んで,他のヤマハ車向けの同じマスター径のマスターを落札したのがこれです.多分RZ用ということで売っていたものですが,本当にRZ用かどうかはわかりません.外観がヤマハっぽくてマスター径が一緒で,ミラーの取り付け座があればそれでいいって感じです.これも入手後清掃して,車体に取り付けて新しいフルードを入れてエア抜きして作業は終了.フロントながらもシングルディスクですのでものの2分でエア抜き終了です.

こんな感じで予想外のパーツ破損なんかもありましたが,車体組み上げ後順調な滑り出しなのかどうか,さっぱりわかりませんね.

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