エンジンについては走行距離もある程度行っていると思われ,4番のインレットには意味深な赤いテープで蓋がされていたのと,パルスカバーを外して手動でクランクを回して,2回転でぎりぎり3回,プシュっという感じ.手感の圧縮具合でいくと,正味1回しか圧縮がかかっていないような感じです.一応クランクはプラグを抜いたら軽くスムースに回りますし異音もないので,バルブクリアランスが適正でないかヘッド周りがおかしいことになっているかのどちらかです.
早速ヘッドをあけてみましたが,流石に距離を走っているエンジンだけあって全体的に黄ばんでいるところ以外外観上の不具合点はなく,クランクを回してみても一応タペットはちゃんと動作しています.驚いたことにカム山は綺麗そのものでニンジャでよくあるようなかじりは一切ありませんでした.そうなるとこのエンジンはタペット調整だけでかなり良くなる可能性があります.この状態でタペットクリアランスを計ってみたところ,適正値よりも随分薄めで,数か所では0.02のゲージさえも入りません.この時点でやっぱりタペットクリアランスがなくなって,バルブに隙間が生じ圧縮が出なくなっていると判断しました.
で,隙間がすでに無くなっているところのタペットクリアランスをまず正確に計るためには,基準シムを用意する必要があります.幸いにもZRX1100の場合はアウターシムタイプで,タペットがスプリングでカム軸のスラスト方向にフローティングマウントされていて,これをずらすことで簡単にシム交換ができます.ちなみにこのずらした先はカム山の段差にのっけることで写真のように保持可能なんですが,1番と4番の端にある4つだけはカム山に乗せられないので,樹脂へらを突っ込んで戻りを防止しておく必要があります.これだと仮に標準シムを入れて測定して,適正なシム厚を1か所ずつ割り出すことができます.インナーシムタイプとかだと都度カムシャフトを外さないといけないということで,作業効率を考えて最悪8ケ基準シムを購入することになりますが,そうはならないので良かった良かった.ちなみにニンジャだとここがネジ込みタイプですのでシムが必要なく,手軽に調整出来ちゃったりします.でもネジだと締めこむ時に位置が変わっちゃったりして結構スキルを要したり,場合によっては調整が狂いやすかったりしますので,いろいろなタペットクリアランスの調整方法ということでは,一長一短があるということなんでしょうね.
ということで,基準シムの厚さについて,まあ最薄の2.0っていうとはないかな?と考え,もしかしたらそのまま使えるかもしれないところを狙おうと考え,2.20を1枚だけ購入.値段は消費税込で600円強ってところなので,他のパーツと同時購入で送料を節約します.そして2.20シムが到着したらその週末に早速測定作業に移ります.その結果が以下です.
バルブNo. | #1OUT左 | #1OUT右 | #2OUT左 | #2OUT右 | #3OUT左 | #3OUT右 | #4OUT左 | #4OUT右 |
シム厚初期値(mm) | 2.55(2.20) | 2.45 | 2.40 | 2.40 | 2.65(2.20) | 2.60(2.20) | 2.55(2.20) | 2.55(2.20) |
タペットクリアランス初期値(mm) | 0.00(0.35) | 0.15 | 0.15 | 0.20 | 0.00(0.45) | 0.00(0.25) | 0.00(0.35) | 0.00(0.30) |
所要シム厚(mm) | 2.30 | 2.35 | 2.30 | 2.35 | 2.40 | 2.20 | 2.30 | 2.25 |
シム流用先 | #1IN左 | - | - | #3OUT左 | #2IN左 | #4IN左 | #3IN右 | #4IN右 |
バルブNo. | #1IN左 | #1IN右 | #2IN左 | #2IN右 | #3IN左 | #3IN右 | #4IN左 | #4IN右 |
シム厚初期値(mm) | 2.75(2.20) | 2.80 | 2.80 | 2.85 | 2.75 | 2.80(2.20) | 2.75 | 2.70 |
タペットクリアランス初期値(mm) | 0.00(0.55) | 0.10 | 0.05 | 0.10 | 0.10 | 0.00(0.55) | 0.05 | 0.05 |
所要シム厚(mm) | 2.55 | 2.70 | 2.65 | 2.75 | 2.65 | 2.55 | 2.60 | 2.55 |
シム流用先 | - | - | - | - | - | - | #2IN右 | #1IN右 |
驚くことに隙間が0以下のところが7か所もありました.問題なさそうに感じた1番,3番もこれでは圧縮が漏れている可能性があります.なお測定値は0.01精度まではいかないまでも0.02mm精度位までは測定しましたが,ここでは0.05単位で記載します.狙いも排気側は0.25mm吸気側は0.20mmと多少広めにしておき単純化しています.ちなみに規格値はこれより0.05狭いところなので,まあプロ並みの作業を目指すよりもまたすぐにタペット調整が必要にならないような配慮をしておきます.幸いにもこの表のとおり8つについては既存のシムが流用できそうです.また#3の右排気側に2.20がちょうど使えるようで,購入しなければいけないのは都合7枚ということになりました.
早速ヘッドガスケットを含め新品を注文して,次の週にシムを入れ替えます.作業自体は前回測定の時に2.20シムを何か所も入れては出してをやったのでサササッと済んでしまい,16か所すべて隙間再測定で数値を確認して,結果は思惑通りでOK.プラグをつけたまんまクランクを回したときにもちゃんと4回プシュっといってくれるようになりました.う〜ん,でもまだエンジンに問題がないかは自信が持てないんですよね.ここまで来たらとにかく火入れを急ぎたくなってきました.