タペット調整

そもそも今回の車体は低年式のツアラー車であり,部品取りになるまでの走行距離はある程度覚悟していました.なので最悪エンジンは交換するしかないと思っていたわけですが,ミッションカバーの一件で,この車体のエンジンは絶対に交換したくないという思いが強くなりました.冷静に判断すればエンジンを交換したほうが楽に走れる車体が作れるはずなのですが,もうここまで来たらこのエンジンで行けるところまでいかないと気が済まないわけです.当然ヘッドカバーを開ける程度であればエンジンを下ろさなくてもできるわけで,今回圧縮が出ない原因の内ヘッド側の対策を打ってみようと考えたわけです.まあもしシリンダーブロックを下ろすようなことになっても車体に載せたまんま作業は可能なので,そこらへんまで行く必要があるかどうか,まずはタペット調整をして判断してみようと思います.

ということでテールカウルを外し,タンクを外し,エアクリーナーボックスを外し,かなりな手間をかけてようやくヘッドカバーを外しました.カムを見る限りはかじりなどはありません.カムの山の部分も変曲点のあたりに少し光沢が高い部分があるぐらいで,目だった摩耗とは言えないと思われます.この感じだと10万km走破したエンジンなんでしょうね.ただ,本来はカムとタペットが当たっていないはずのポイントでも光沢の高い部分があります.これはタペットクリアランスがゼロの状態で長く走っていた痕跡といえるでしょう.ポイントカバーを開け,クランクを回すとスムースには回るのですが,圧縮がかかっているプシュッという音が2クランクで1回しか聞こえません.ということは少なくとも3気筒は圧縮漏れしているということでしょう.

ということでタペットクリアランスを計りました.DOHC16バルブですので大変ですが,幸いにもアウターシムな上に,ZRX1100と同じでロッカーアームが片側からスプリングで押されているだけの構造で容易にタペットシムが交換できますので,そこらへんは精神的負担も軽くできました.

バルブNo.#1OUT左#1OUT右#2OUT左#2OUT右#3OUT左#3OUT右#4OUT左#4OUT右
シム厚初期値(mm)2.352.352.452.452.452.452.402.40
タペットクリアランス初期値(mm)0.100.150.100.100.100.100.100.10
2.2mmでのタペットクリアランス(mm)0.200.250.250.250.300.250.200.15
所要シム厚(mm)2.152.202.202.202.252.202.152.10
購入orシム流用元購入購入購入購入購入購入購入購入

バルブNo.#1IN左#1IN右#2IN左#2IN右#3IN左#3IN右#4IN左#4IN右
シム厚初期値(mm)2.552.552.602.602.552.652.602.60
タペットクリアランス初期値(mm)0.100.050.100.100.000.050.050.05
2.2mmでのタペットクリアランス(mm)0.350.350.450.450.200.200.350.35
所要シム厚(mm)2.352.352.452.452.202.202.402.40
購入orシム流用元#1OUT左#1OUT右#2OUT左#2OUT右購入購入#4OUT左#14OUT右

元のタペットシムの状態ではタペットクリアランスが極めてゼロに近く,無理やり挟めば0.05とか0.02とかも入るには入るのですが,正確に計りにくいと思い,結局手持ちの2.20シムを挟んで再測定しました.その結果,16か所中12か所でバルブがちゃんとしまっていないことがわかりました.結果的にだいたいになりますが,排気側で0.20-0.25,吸気側で0.15-0.20になるように計算して流用できるものは流用し,ないものは購入することにしました.それにしてもこの車体,一度タペット調整されているようで,元のシムも2.65が最大と,少し薄めの構成になっています.ZRX1100のときは2.85とかがありましたので,それよりも平均で0.2ぐらい薄いわけです.となると走行距離は10万kmではなく15万kmぐらいいってしまっているんでしょうか?

ということで1週間後新しいタペットシムが到着しましたので装着してみます.それにしても1番シリンダの左側のシム交換はすごく神経を使いますね.なんせ落としてしまったらクランクケースまで行ってしまいますし,その上ロッカーアームを横にずらしても引っ掛けておく部分がなく,それを押し付けながらの交換作業になります.なのですごく神経をすり減らしましたがなんとかすべてのシムが交換し終わりました.最後にすべてのタペットクリアランスを再度測定し,規格内であるのを確認します.クランクを回してみて,スムースにクランクが回ることと,圧縮の音がちゃんと2クランクで4回聞こえるかを確認してヘッドカバー,ポイントカバーを閉めます.

さて,ここで再度火入れかと思いきやそうは問屋が卸しません.というのも他にやることがあるからでして,まだまだ走ることができるまでには先の長い工程が待っていたりするわけです.今しばらくお付き合いを.

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