No.10- ブレーキ(その6:エア抜き作業)

ホースやマスターシリンダー,キャリパー,フルードを交換したり一旦フルードを抜いて何かしらの作業をした後,まずやらなければいけないのはエア抜きということになります.私の場合中古部品を使うことが多く,その部品としての状況によってはうまくいかなくてトラブルシュートに時間を要したりすることが多々あります.今回はエア抜きのみにトピックを絞って,エア抜きがうまくいかないときにどのような可能性があるかについて記していこうと思います.

<エア抜きが全くうまくいかない理由>

まずエア抜きをはじめて何度も握って→ブリードバルブを開けて→締めて→レバーを素早く戻してというのを繰り返しても一向にフルードが減らなかったり,カチッと制動力が出てこなかったりすることがあります.まあすべて新品同様まで清掃,整備したパーツの組み合わせであればそんな確率も少ないのですが,私のように簡単にできるところだけちょっと清掃して取り付けたりしてしまうと,成功確率は9割どまりで,残りの1割は何等かの原因でパーツを交換したりしてエア抜きをやり直すことがあります.

私の場合最初っから深い知見があるわけではなく,さまざま経験した中でトラブルシュートやその後の解決方法などからうまくいかないときはどのような懸念があるかをまとめてみました.トラブルシュートの参考になればと思いますので,まずはよくある最初っからうまくいかない例です.

[全然カップの中のフルードが減らないとき]
(1)レバーを握る動作とブリードバルブを緩めて締めるのタイミングやスピードが間違えている
(2)リザーバーカップの穴が詰まっている
(3)マスターシリンダのピストンに異物が付着している
(4)キャリパーのブリードバルブが詰まっている
(5)キャリパーのブリードバルブのシート面に異物がある
(6)ブレーキホースが詰まっている
(7)キャリパーのフルードの出入口のいずれかが詰まっている

まず(1)についてはちゃんと手順通りに握ったり離したり締めたり緩めたりをできているかを再確認しましょう.最後のレバーやペダルを素早く戻すというところができていないと,せっかく押し込んだフルードが戻ってきてしまいますので,コツというとそこらへんぐらいでしょうか?私は昔は自作ワンマンブリーダーを使ったりしていましたが,まあここが不安な方はワンマンブリーダーなど使ってみては良いのではないでしょうか?

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(2)はマスターのところでも触れましたが,ここが詰まっているとピストンの適した位置からフルードが戻ることができず,フルードがピストンのとば口のところで行ったり来たりするだけになってしまいます.ピアノ線などでちゃんと貫通していることを確認し,再びつまらないようにエアガンなどで異物を飛ばしましょう.(3)もマスターのところで触れましたが,ピストン側面のらせん状の溝にゲル状や粉状に変質したフルードが詰まっていることがあります.これも(2)の穴と同じ結果により,フルードが流れていきません.

(4),(5)については結局緩めなければいけないところですので,作業前に一旦キャリパーから抜いて確認しておくことをお勧めします.詰まっている場合は中で流路がT字になっていますので両方とも穴から穴径より細いピンなどでツマリを確認し,詰まっていたらパーツクリーナーなどをふきつつこそぎ落とすのが良いと思います.シート面がダメな時はブリードバルブを交換することになりますが,私の場合,使わなくなって廃棄するキャリパーから綺麗なブリードバルブだけ取りおきして,それを流用していたりします.

ホースやキャリパー側の詰まりも,装着前に確認しておくとよいでしょう.かといってパーツクリーナーやCRCを吹いたりするとあとあとフルードに変な混ざりものが混入することになるので,私は必ずエアを使うようにしています.ちなみにブリードバルブをキャリパーに中途半端につけてホース取り付け口からエアを吹くと,ブリードバルブが弾丸のように飛び出してくることがあるのでご注意を.

<エア抜きがいまいちうまくいかない理由>

だいたいエアは抜けたものの,いまいちタッチがしっくりこないということもあります.この場合,下記のような原因が考えられます.

[フルードは流れていったがブレーキのタッチが良くならないとき]
(1)ブレーキホースが破れているかフィッティングが正しく付いていない
(2)流路やキャリパー内に変質してエア噛みしたフルードだったものが残っている
(3)ホースがエアがたまりやすいように上向きに凸になっている個所が多い
(4)キャリパーやパッドが斜めで,ディスクに片当たりしている
(5)ホースが変質して膨張している

まあ,(1)はあたりまえですので,ホースやフィッティングやバンジョーボルト周辺からフルードが漏れていたりしないか確認しましょう.一番わかりにくいのは(2)です.フルードが粉になっているものがキャリパーに残っていたりするとどうしても粉の回りに小さな気泡がのこります.これがブレーキの圧力をかけたところで気泡が収縮するため,カチッと感がそがれることになります.そして,その気泡が粉成分にくっついているので簡単には除去できないわけです.ですので,古いキャリパーで中が汚れている可能性のあるものはまずブリードバルブもホースも外した状態でエアで吹いてみて,異物が多く出てきたらピストンを外して中をしっかり清掃したほうがよいと思います.

あと,(3)のホースの取り回しは結構効いてきます.フロントブレーキで一旦右キャリパーにつないで,そこから左キャリパーにホースが繋がっている場合,どうしても左右キャリパーのつなぎのホースは上向きのRとなり,そこにエアが残りやすいのです.その場合取り回しを変えるか,もっと速いスピードでレバーを握ったり,ブリードバルブをあけたりということでエア抜きのときのフルードのスピードで出口側にエアを押し出すやり方があります.まあ,ステンメッシュホースのように流路が細い場合はいいのですが,純正ホースなどで内径が太いと残りやすいので,より注意が必要ですね.

(4)のパッドの片当たりはマルチポッドのキャリパーや,片押しのスライドシャフトに傷や錆がある場合によくあります.また中古ブレーキパッドで元々片減りしているものを取り付けると,どうしてもピストンとパッド,パッドとディスクの間にすき間が残っていて,ブレーキレバーの握りシロを多く必要としてしまいます.最後の(5)はブレーキレバーを握ってホースが膨らむ量を手感で感じ取って判断することになりますが,正常な状態でもホースは若干膨らんでしまいます.ですので,このような時のために普段まともな状態のときにホースがどの程度膨らむかを確認しておくと役に立ったりします.

まあ他にも原因はあると思いますが,可能性として高めなのは私が挙げたものでほぼ網羅できていると思いますので,もしエア抜きがうまくいかない方は参考にしていただけると幸いなのであります. 

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