No.10- ブレーキ(その7:ホースの交換,ステンメッシュホースの改造)

油圧ブレーキのみを対象に話を進めてきて,マスターシリンダーとキャリパーが済んだら残りはホースということになります.なので今回はホースの選定,ステンメッシュホースの改造,取り付け作業を中心にやっていきましょう.

<ホースの寿命>

今まで古い車体やブレーキパーツをさんざん扱ってきて,それなりに使えるように仕上げてきましたが,ホースについては外観では使えるかどうかは全然わかりません.まあフィッティングやホースそのものにフルード漏れがあったりすればダメというのはわかりますが,ホースが車体に付いていても制動力をもって判断するまでは,なかなかわからないものです.なので私の場合中古のクラッシュワッシャとあまり汚れていない廃フルードを使用してとにかく一度つけてみて,走行しないまでもレバーを握ったときのホースの膨張を指で確認したり実際フルードが漏れることがないかなどをチェックして使えるかどうかを判断することにしています.まあエア抜き作業はやりなおしになりますが,これをやっておくことでマスターシリンダーやキャリパーの不具合も一緒に見つけやすくなるので,時間のある方はお勧めです.なお,綺麗目の廃フルードを一度通すとマスターシリンダーからホース,キャリパーの一連の内部の異物を流してしまえるというメリットがあったりします.

まあ純正ホースであれば外観からフィッティングが錆びまくっていたり,ホースが白んでしまうほど硬化していると,使用をあきらめることはありますがね.

<純正ホースの選定>

ここらへんは私の場合ステンメッシュを一時期多用してきましたが,多少古いホースでもマスターシリンダーやキャリパー,パッドがまともでエア抜きもほぼ完ぺきにできれば,公道を走るだけであれば問題ないと判断していますので,最近ではホースに何も問題なければ純正を使用するようにしています.

で,純正の場合,多くのモデルが三つ又の前で分岐されていますので,何もないところから純正で組むとなると分岐部分と3本の短めのホースが必要になります.この場合大体フロントが17インチホイールでキャリパーの入り口のねじ部の位置が特殊でなければ,下の2本は他車流用が容易に可能です.ですので,私はこの2本については程度が良ければ純正でも後生大事に両端にティッシュを詰めて保管してあったりします.ハンドルから分岐までのホースはハンドルの位置などで大きく変わりますので,流用可能なケースが限られてきますが,まあ長めのものであれば使える可能性があるので純正でもパイプハンドルのものは取り置きしたりしています.

<ステンメッシュホースの選定>

純正でないホースとなると大概ステンメッシュホースということになります.フロント,リアともにホースの長さとフィッティングの角度が合えば,概ね使えます.ここで概ねというのはホースを通すところで障害物や高温になるものがあったりすると,それを避けるための曲率が純正だと途中に中継のパイプがあったりして回避できるのですが,ステンメッシュホース1本でそれができないケースがあったりするのです.ホントごく稀ですが.

まあ,そんな特殊な事情はほぼないという前提で,私の場合はフィッティングの角度も純正と全く同じでなければだめというわけではありませんし,長さについては短いのはダメですが,10cmぐらい長くても取り回しでカバーしてしまったりしますので,手持ちの在庫ホースが使えるケースが多々あったりします.また,ホースが長すぎるときは下のほうの項目のように短く改造してしまったりしますので,そこらへんはスキルに自信のある方はチャレンジしてみてもよいかも知れません.

なお,私がバイクいじりをやり始めたころはアールズとかグッドリッジとかしかなかったのですが,現在は結構中国製のメッシュホースも多く出ていたりしますので,選択肢は非常に多くなりました.そんな中,ちょっと特殊な長めのホースとかは,意外にも外車のスクーターなどの純正ステンメッシュホースが使えたりします.ヤフオクでこのようなホースは比較的格安で売られていたりしますし,割れやすいアルミではなくステンレスのフィッティングで錆にも強いというメリットがありますので,出品写真などから使えるものを判断して落札するのもねらい目だったりします.まあ外車の場合フィッティングが特殊な角度になっていたりすることが多いので,適合率は低めですが.

関連記事1:KSR-1号機に外車のステンメッシュホースを流用

<ステンメッシュホースの修理,改造>

先述のようにアルミのフィッティングのものは経時変化や取り付け取り外しや使用時に過負荷がかかることでヒビが入ってきたりします.そうなるとフルードが漏れてきますので,怖くて使用できません.特に中古のホースを購入したときは,このようなヒビが出ていないか,クラッシュワッシャの当たり面に傷がないかなど,厳しめに観察しておく必要があります.そのような場合は壊れたフィッティングを外し,少しホースを詰めた上で,そのフィッティングのメーカーが出しているオリーブと言われるカシメ部品を交換して組みなおせば修理が可能です.(詳細な作業手順はメーカーのマニュアルをご覧ください)そういった点から,あやしい中国製のステンメッシュホースではなく,アールズやグッドリッチといった有名どころのものを買っておいた方が修理がしやすくてよいということになります.

関連記事2:GPz900Rでフィッティング割れ

また,あんまり最近は見なくなりましたが,フロントフォークにブレーキ時の沈み込みを防止するアンチノーズダイブの油圧機構がついている場合,どうしても短いホースが必要になりますが,これを市販のものでそのままそろえるとめちゃくちゃ高額になってしまいます.ヤフオクで運よく安価に調達できるケースもありますが,私の場合はこの短いホースは上記のオリーブを購入して自作することにしています.まあ,赤や青の派手なフィッティングがついたホースが何本もフロントブレーキ周りにあると,ちょっと見栄えてきにどうかな?と思うことはありますが,自作ホースとなるとそれも痘痕も靨のような感じに見えてくるから不思議です.

関連記事3:GPz1000RX2号機でステンメッシュホースの改造

<ホースの組付け>

ホースの取り付け部分にボルトやキャリパーとの間で漏れが発生するのをふせぐためにクラッシュワッシャが用いられています.クラッシュワッシャは締めこんだときに少し潰れることで面と面のすき間が埋まるもので,1回締めこまれるとその表面に微妙な凸凹が残ることになります.これを再使用してしまうとフルード漏れの原因とかにもなりますので,再利用は絶対にNGです.最近はモノタロウとかでまとめて格安で売っていますので,たくさん使う人はこういったものを使用して,コスト圧縮しながら信頼性との両立を図りましょう.

また,アルミのフィッティングは先述のようにちょっとした負荷で割れてきたりします.ホースやフィッティングに過負荷がかからないように,トルクレンチなどを使用して適正なトルクで締めるようにした方が良いでしょう.

まあ何台もやる人っていうのはそうそういないので,クラッシュワッシャのまとめ買いというのは,バイク屋さんにとっては当たり前の話なので,誰の参考にもなっていないかもですね.まあここでも言いますが,保安部品でありますので自分で作業した場合は,しっかりと組付け状態やフルード漏れをある程度長期にわたって確認をしておいた方がよろしいかと思います.  

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