No.8- チェーン,スプロケット(作業編)

今回はチェーンやスプロケットの材料がそろった後の交換作業編です.

<チェーンの交換作業>

まず交換ということだと,チェーンを切るところから始めないといけません.チェーンカッターが一般的ですが,チェーンカッターの前にディスクグラインダーでピンの先端を削らないといけないので,私の場合は周辺の養生をしっかりやって火災を防止しつつ最初っからディスクグラインダーで張られているチェーン下側の中央を切断してしまいます.チェーンに揮発性の高いオイルをつけているとチェーンから発火したりしますので,周辺に水の入ったバケツを用意しておくのも必要かと思います.

チェーンが切れたらチェーンアジャスターを目いっぱい前にします.チェーンアジャスタ―を先に動かしてしまうと,ディスクグラインダーを当てたところでチェーンが暴れるので切断しにくくなってしまいますのでこの順番が良いです.であとはコマ数を合わせ切断します.間違えて切りすぎないように私はスプロケットに仮装着した状況でディスクグラインダーでピンを飛ばして切断します.このときにシールチェーンの場合はちゃんと冷却しながらやらないと近くのリンクのシールが溶融し固着してしまったりします.ですので水を掛けるのはよろしくないとして,できればエアガンで冷却しながらやるとよいでしょう.あとはカシメ方式,クリップ式それぞれの方式の手順に沿ってつなぎます.クリップ式の場合は進行方向に対してのクリップの向きを注意して,やり直しになった場合はクリップを新品に交換することぐらいでしょうか?まあやりなおしについては近頃の中華製チェーンは最初っからクリップがはめられて売られているので,恐らく使いまわしは可という考え方なんでしょうけど.

カシメ方式については,カシメ工具の使い方が結構コツがいりますし,カシメコマのピンの先端が割れてしまったりしたら,やり直し=買いなおしとなります.もしカシメが割れたような状態で走行していて重大なトラブルになるとそれこそ一大事ですので,カシメ方式を自前でやるときは細心の注意を払いながらカシメ7ていくことをお勧めします.

<チェーンの交換作業>

これもサービスマニュアルに載っていることなので,詳細は省きますが,スプロケット交換はチェーンの切断手段,カシメなどの工具がありある程度スキルがあれば可能ですが,スプロケットについてはリアホイールを必ず外さないといけませんし,フロントスプロケットについては多少ノウハウがあったり,それでも固着していて素人では作業を断念したりすることもあり,難易度は高いといえるのではないでしょうか?

ということで,まずはドリブンスプロケット(後ろ)のほうですが私もホイールの着脱に慣れるまではスプロケットだけを交換するために作業するということはなかったように思いますが,まあリアキャリパーを外したり,キャリパーがスイングアームに固定されているタイプだと,その固定ブロックを緩めたり,チェーンアジャスタを緩めたり,しなければいけません.また,ホイールが外れた後もスプロケットを固定しているねじがめちゃくちゃ硬く締まっているのでそれを緩めるのが大変だったりします.また旧車では硬く締まっている以上に回り止めの金具がついていて,それを倒したりして回せるようにしてやる必要があったりします.でも,ここらへんは作業の手順を守り,手間を惜しまずやることと,少し長めの柄がついたレンチでしっかり体重がかかるようにホイールを置ける台の上で作業をすればよいということになりましょうか.なお,柄の長さはご自分の腕力に反比例させて選定するとよいと思います.もしくは筋トレするか...ちなみにナットについてはゆるみ止めがついているケースはいいですが,ゆるみ止めがない場合,ゆるみ防止剤を塗布してから再装着しましょう.

次にドライブスプロケット(前)ですが,これはコツが要ったり運が悪かったり素人の限界にぶち当たったりしますのでここではその対処法というより少し言い方が変ですがベストの尽くし方をご紹介したいと思います.

・ドライブスプロケットを緩める前にやっておくこと

まず,1点目ですがかならずチェーンは張っておきましょう.よく先にチェーンを外してしまうケースがあったりしますが,チェーンがないと,エンジンのアウトプットシャフトの周り止めが困難になってしまいます.ギアを入れてエアインパクトで緩めることもプロがやっていたりしますが,私はあまりこれはお勧めしません.インパクトの力がすべてミッションギアに伝わってしまいますので,ギアを痛める可能性もありますし,ローギアにいれていてもエンジンが回ってしまう可能性もあります.エアインパクトも私の持っているような安いやつではダメなケースがあります.なのでチェーンを張ったまんまにして,リアホイールが回らないようにしてやることで周り止めにすることで難易度を下げることができます.これであればミッションギアに力はかかりませんし,最悪でもチェーンが破断するだけですがそんな強度まで低下したチェーンというのはなかなかお目にかかれるものではありませんし,とにかくもともとチェーンがついていない車体であっても,さびていてもいいのでチェーンを装着してから作業することをお勧めします.

そしてホイールの回り止めですが,まあ簡単なやり方ではフロントホイールを直角に壁に当たるようにしてサイドスタンドで車体を立てていれば,タイヤの摩擦力で受けられるトルクまでは周り止めできます.車体が軽い場合,この摩擦力を高めるためにタンデムシートに誰か補助してくれる人に座ってもらってもよいかもしれません.これで大概周り止めになるはずですがそれでもリアホイールが回ってしまう場合,キャストホイールに限定しての話にはなってしまいますが,直径30mm以上の硬めの木の丸棒をホイールの内側とスイングアームの上部に通して,スポーク下面とスイングアームの上面の間に隙間なく通った状況にしておくと周り止めにはなります.ホイール側の変形を気にする方もいるかもしれませんが,最初っから丸棒と触れて丸棒が挟まれている状況からチェーンに張力をかけても,ホイールが変形するほどの力はかかりませんし,ので,せいぜいハブダンパーを介しての力しかかからないわけですから,これでよいかと思います.

そして,スプロケットの回り止めができたらスプロケットナットがシャフトに直接ついている場合は,ナットの回り止めを解除します.これはハンマーなどで引き起こされている部分をフラットにたたいて戻すだけですが,これは過度な力でやってしまうと,アウトプットシャフト自体にスラスト方向の衝撃がかかりますので,あまり好ましくはありません.引き起こされている部分を戻すだけですので,そんな力を入れる必要はないので,ほどほどがよいでしょう.また,ナットを緩めるわけですから,清掃した上で錆なども可能か範囲で除去し,潤滑剤を吹いておくとよいでしょう.

・ドライブスプロケットを緩めるコツのようなもの

ドライブシャフトに縦溝のみならず1条の横溝が入っていて,溝形状を半ピッチずらした内径穴のついた押さえ板で固定するタイプのものについては,チェーンを張ってスプロケットの周り止めができていれば比較的楽にねじを緩めることができるはずです.前述の清掃,錆取り,潤滑などをしっかりやって,ねじが折れないか気を付けながら緩めましょう.まれにドライブシャフトと押さえ板に錆や変形が発生していて,ねじが外れても押さえ板が外れにくいことがありますが,錆を丹念に落として,押さえ板を外しましょう.変形して外れない場合は,リューターなどで削って破壊して外すのがいいでしょうか.

スプロケットナットがドライブシャフトに直接ついているものは大排気量のものでよく使われているだけあって,緩めるのも一苦労です.ここでエアインパクトを持っているかたはエアインパクトを使用していきなりドンでも構いませんが,その前にいずれの方法で緩めるにしてもちょっとやっておいたほうがよいことがあります.それはやはり外しにくいがゆえに,ナットの山形状が舐めてしまっているケースがあり,このためにボックスレンチが奥まではまりきらないことがないかを確認しましょう.レンチの掛かりが甘いと,緩まないばかりかそれ以上にナットをなめてしまい復旧困難になってしまいます. ですので,まずはナットに奥までボックスレンチがはまるかどうかを確認しましょう.ナットが舐めてしまうと削れた部分の体積の分,かえりが出っ張ることになりますので,そこと干渉することでナットが奥まではまらなくなっていることがあり,それをリューターなどで出っ張った部分のみ削っていき,少なくとも奥までしっかりとボックスレンチがはまるようにしておきましょう.

ここではボックスレンチのみを紹介しますが,ドライブスプロケットを緩めるのは,その場所が奥まっていることもあって,メガネレンチやスパナでは作業できません.なので緩める作業は適度に延長したボックスレンチで作業することになります.で,よく足で体重をかけて回せばいいやという人がいますが,それはできないものと考えましょう.要は支点をしっかり保持して ,ナットからボックスレンチがぬけないようにしつつ最大のトルクをかける必要があります.私の場合はamazonで購入した可倒式の1/2ソケット用の長いバーをつけた上で,それで緩まない場合は,バーが壊れる覚悟で不要なフロントフォークインナーを延長としてかぶせて回していきます.まあフロントフォークインナーがない場合は鉄パイプとかでいいんですが.まあこれだけ書いていても,力の掛け方にコツが要ったり,結構な力を掛けなければいけないので誰にでもできることではないのかも知れませんが,チャレンジしてみたい方は工具や車体を壊したり,けがをしない範囲でやってみてはどうかと思う次第です.

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まあこのように紹介していますが,私がこのような作業を自分でやっているのは少しでもリーズナブルなコストでバイクいじりできるようにと考えているからでして,自分で作業したからといってこのような駆動系の重要パーツに支障が出てはよろしくないので,自信のある方であっても,最終的な締め付けトルクや仕上がりをしっかりチェックしたうえで,乗り初めには試乗のつもりで,徐々に様子見しながら乗車し,何度かねじのゆるみなどをチェックしてみるのはいかんせん必須ではないかと思います. 

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