No.10- ブレーキ(その1:ブレーキスイッチ,パッド交換の目安)

ブレーキは安全上最も重要な装置であり,作業に誤りがあった場合生死にかかわるものです.ですので法律上は人から委託を受けて作業する場合は整備士資格を持つ人が管理している組織の中で行われなければいけません.ただ自分の車体を自分が自己責任で整備を行うところまでは法律では制限されていません.かといって事故を誘発するようなことがあってはいけませんので,自己責任とはいっても事故につながるようなことが内容確実な作業が求められます.非常に複雑な事情がある部位ではありますが,ここらへんを正しく認識していただける方には一読いただいて,参考になるようなことがあれば幸いです.

<ブレーキスイッチ>

実はブレーキで最もトラブルが多いのが,スイッチだったりします.まあ新しい車体はそんなに起きないんでしょうけど,新しい車体はそれ以上にブレーキのトラブルがあってもブレーキパッドが摩耗して交換するぐらいですので,相対的な頻度でいくとやはりスイッチの方がトラブルになりやすいといえるでしょう.といっても車もバイクも同じなんですが,これに気づかないまんま走っている人が結構いたりします.なので,これを防ぐにはまず乗車前の点検が重要ということになります.幸いにもバイクの場合は自分ひとりでブレーキランプが点灯するかどうか容易にチェックできますので,ブレーキの効きを確認するのと同時にランプの点灯もしておくとよいでしょう.

そしてスイッチの故障原因は,寿命,摩耗,腐食,浸水,破損などがあります.古い車体の場合は前の3つ,新しい車体はうしろの2つといった感じで,寿命や摩耗はしょうがないにしても,腐食の場合はなんとか分解して接点を磨いたりして復活できたりします.ただ,スイッチのケースは樹脂の熱カシメで封止されていたりしますので,これを一旦壊して修理して機能を確認したあとで接着しなおす必要があります.接着が甘いとまた壊れてしまいますので,ここは注意が必要です.

また,カワサキやスズキのニッシンのフロントマスターを使用している車種ではヤフオクとかで安価な中国製の互換型スイッチを売っていたりしますが,これは基本すぐ壊れると思ってよいです.私の場合2回ぐらいやられていまして,1か月もしないうちに壊れました.幸か不幸か10ケセットで売られているのを購入して,2ケともすぐに壊れましたので,残りの8ケは捨ててしまいましたが,全然期待に沿えません.

リアのスイッチについては取り付けられている位置が原因で水の攻撃を受けやすく,錆の影響で機能不全に陥ることが多いようです.また,古い車体であまり好ましくないメンテナンスをされた車体ではこのリアブレーキスイッチの高さを調整するときにコネクタを抜かずぐりぐり回して調整したがためにケーブルがらせん状に固まってしまい,すごい力で引っ張り荷重がかかっているケースなんかも見てきました.くれぐれも皆さんはコネクタを抜かずに回すなんてことがないようにお願いします.

いずれのスイッチも分解すると内部がどうなっているか簡単に理解できますのでばね部品などの小物を飛ばしてしまわないように気を付けながら分解清掃して復活させるのもよろしいのではないでしょうか?

<ブレーキパッド交換の目安>

ここらへんから通常のメンテナンスに加えて慎重さと正確さが必要となってくるところです.まずは交換の目安ですが,正直あまりギリギリになるまで使い切ろうとするのはお勧めできません.大体3分山あたりで交換するのがよろしいかと思います.というのもブレーキの頻度というのはその走る環境によっても大幅に異なりますので,ぜんぜん減らないときもあれば,一気に行ってしまうこともあります.それまではまだ残り山が結構あると思っていたのが,走っていて急にブレーキから異音がするようになって,見てみたらブレーキパッドのベース金属のみになってブレーキディスクを削ってしまっていたなんてこともあります.そうなるとブレーキディスク交換もしなけばいけなくなりますので,大事になってきます.なので大体3分山を目安にするのが良いかと思う次第です.

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ちなみに,意図せずブレーキパッドを交換せざるを得なくなるケースとして,フロントフォークのオイル漏れがあります.フロントフォークシールがいかれてオイルもれしたまんま走っていると,フォークオイルがフォークのボトムケースとキャリパーを伝ってパッドに付着し,制動力を台無しにしてしまうのです.これは危険極まりなく,しかもブレーキパッドは焼結してあるもののパッド素材の中に細かい空洞があったりします.パッドそのものを清掃してもここにオイルが残っていて使用しているとそれが表面に出てきてディスクとの間の摩擦係数を低下させます.なのでしっかりと制動力を出したい人は一旦フォークオイルのついてしまったパッドは潔く捨てて交換することをお勧めします.まあ私の場合はかなり時間を掛けてブレーキクリーナーを吹いては乾拭きしてというのを繰り返して延命することがありますが,それでも直後は本調子とは言えない状況ですので,かなり用心して走らなければいけません.そのような懸念をするぐらいなら交換してしまった方が良いと思うのです.

あと,フォークオイルがパッドについた場合は当然ブレーキディスクにも付着しています.そしてブレーキディスクの多くは穴が開いていますので,その穴の中までしっかりとオイル除去しておく必要があります.これが結構大変で,まじめにやるとブレーキディスク2枚をやるのに綿棒1セットを使い切ってしまいます.トーチであぶって飛ばす人もいるようですが,熱でディスクがひずんだりするのは嫌なので,私はまずつまようじで塊になっているものを除去して,綿棒で穴の中を100穴/本の消費量で掃除し,ブレーキクリーナーをぶっかけて,最後に綿棒の汚れぐらいを見ながら交換しつつ掃除するというのを行っています.こうすることで綿棒の消費は30本ぐらいに抑えられますが,結構な手間で根気がいる作業であったりします.まあみなさんにはとにかくフォークオイルが漏れてきたらすぐにオイルシール交換するなどして漏れと止めることをお勧めします.

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う〜ん,パッドの交換前まででこんな文章量になってしまいました.まあ写真にもしにくいトピックが多いので,ご容赦いただき続きは次回ということにしましょう. 

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