No.10- ブレーキ(その4:マスターシリンダの保守,修理:前編)

ブレーキといいつつキャリパー側ばっかりやってきたので,そろそろマスターシリンダーやレバーについてやっていきましょう.

<レバーの交換について>

まず,レバーを交換するときの大半は折れてしまったか,傷がついたとか曲がってしまったときになろうかと思いますが,折れてしまうとブレーキが掛けられず自走不可となります.なので私の場合レバーの予備として先端だけ折れてしまったようなレバーを車載工具に忍ばせておいたり,荷物に入れておいたりします.これは走る距離の長短関係なく転倒すれば折れてしまう可能性があるので,用心に越したことはありません.

次に交換したくなるのは,カワサキやスズキのアジャスター付きのレバーのアジャスターが錆びてしまって見栄えがアレな状態になったときです.私の場合レバーそのものを交換するのが悔しいので,上記で述べた折れたり曲がったりしたレバーについてもこのダイヤル部分のみ摘出して保管しておき,それに交換して2コ1にしたりしています.まあ,ダイヤルの裏側がカシメて固定されているので,ここを引き起こして摘出して,再びカシメるので強度は若干不安ではありますが,ここらへんは自己責任で.稀に一時期サードパーティからサークリップで固定できるようなダイヤルの代替品が出ていたりしますので,それを使うことがあったりしますが.

関連記事1:ZZ-R1100C型のレバーを社外ダイヤルでお化粧

ちなみに曲がったレバーはうまくやれば万力に挟んでトーチであぶりながら廃フロントフォークインナーパイプなどを使い曲がり強制すると使えることもあります.少しの曲がりであればトーチであぶらずに車体につけた状態でインナーパイプでぐいぐいやると矯正できたりしますが,さすがに車体につけた状態でトーチであぶるのは気が引けるので,そこらへんは車体の保護や火災防止なども考慮してやったほうがよいでしょう.

また,社外の可倒式レバーも時々変なのがあるので要注意です.設計が悪く普通にレバーを握っただけなのに少し倒れてきたり,あとレバーに溝加工がされていて,そのエッジが鋭利なまんまで,使っているとすぐにグローブが傷だらけになって,しまいには穴が開くようなものもあります.まあ,正直レバーに関しては事故に繋がったりするのはいやなので,社外はできるだけやめたほうがいいと思います.

<レバーの動きが悪いとき>

ブレーキもクラッチもですが,油圧式のレバーの動きが悪いときは,まず支点シャフトのグリスアップをしましょう.極々稀にこのグリスが切れてしまい,その上シャフトとレバーが固着してレバーを握るとシャフトも一緒に回っているようなことがありますが,こればマスター本体とシャフトの間で摺動して,どんどんマスター側の穴を拡げてしまいますので,早めに固着を何とかしたほうが良いでしょう.

また,レバーの遊びがいやに多いなと思ってレバーを外してみたら,レバーの支点穴の真鍮のブッシュの内形が楕円になっていてガタガタであったということもあります.単に摩耗して広がったケースと転倒などでレバーに過負荷がかかったときにレバー本体は救えたものの支点穴が変形してしまったケースの2通りがあります.まあ,こういった予想外のこともありますので少しでも違和感があったら調査のためにレバーのみ取り外してみるのもよろしいのではないでしょうか?まあそんなに難しい作業ではないものの,その後の組みつけは慎重に確実にしなければいけません.

なお,油圧式レバーの動きは当然マスターシリンダーのピストンの動きとも連動していますので,ピストンの動きがよろしくない場合はピストンの分解ということになりますが,そこらへんは次回ということで.

<リザーバータンクの蓋のねじについて>

別体式ではなくマスターカップが本体と一体鋳造されているタイプのもののメンテナンスや修理で多くの人が引っかかるのが,このリザーバータンクの蓋のねじです.というのも今まで多くのブレーキマスター,クラッチマスターの中古品を入手してきましたが,その半分ほどが,このねじ頭のリセスがお釈迦になってしまっているか,固着して開かない状態であったからです.

だいたいねじがダメになっているケースはねじの皿部分をドリルで飛ばして,残ったねじをプライヤーで回して除去してねじを入れ替えます.ごくまれにヤマハのマスターなどでは蓋が薄いためか,ねじ頭を飛ばしたら残ったねじを挟むだけの長さが確保できず,マスターをお釈迦にしてしまうケースがありますが,そこらへんは深くドリルを入れないように細心の注意を払えばなんとか救えるケースもあります.

で,ネジが小径の皿ネジである点や,フルードによるねじ穴の腐食が起きやすいとか,要因が様々なこのねじについて,まずねじが固着していそうでなおかつねじがダメになっていない状況で,いかにねじを壊さないで蓋を開けるかの工夫を下記に列挙します.これを全部やったときは,私の場合勝率は9割以上ですので,やれそうな方は参考にしてください.

(1)車体についていないマスターはハンドルにしっかり固定する
(2)蓋ができるだけ水平になるようにハンドルをロックするまで切る
(3)ねじの周辺にCRCを吹きかける.
(4)ねじとその周辺を破壊しないように気を付けつつハンマーでたたく
(5)ねじと蓋の間から錆色になったり異物が混ざったCRCが出てきたら次へ
(6)蓋をねじ頭のリセスのサイズ,形状に合ったドライバーを使用する.
(7)ドライバを前に強く押しながら,徐々に左回しでトルクを掛ける.
(8)リセスをこわすといけないので8分ぐらいの力で回らなかったらあきらめて次に進む
(9)リセスのサイズ,形状に合ったビットを使用し,ショックドライバをねじのリセスにしっかり直角にあてる
(10)再びCRCをねじ周りに吹き何度か回転させずに叩く
(11)ショックドライバを回転トルクを掛けて叩く

なお,(4)は少しリセスがおバカになりかかっているねじにも多少有効でして,これをやることでガバガバのリセスにしまりが出て,ネジを破壊しなくても蓋が取れるようになったりします.加えてハンマーでたたくときはとにかくマスターや蓋を壊さない程度の力でたたいたほうがよろしいかと思います.
私の場合,幸いにも蓋が空いてメンテナンスができた後は,リセスがおバカになりかけのねじや錆びているものについてはSUS製の六角穴付きボルトを代わりに使うようにしていますが,実はこの六角穴付きであってもやはり皿ネジは固着しやすいので,再び開ける時はバカになりかかったレンチを使ったり,差し込みが甘いまんま回したりしないようには注意が必要です.まあSUSなので錆びないというのはよろしいのですが,対アルミだと鉄よりも腐食しやすいようなので.

関連記事2:z550GPでマスターの蓋をねじ頭を飛ばしてあける

今回はマスターシリンダーといいつつ,レバーと蓋を開けるだけでこんな量になってしまいました.続きは次回といたしましょう. 

KEN-Z's WEBのトップへ NEXT