No.9- 電装系で持っていた方が良い技術(その2)

電装系で役立つ技術について2回目となりますが,今回は少し細かいところを行きましょう.

<コネクタから端子の抜き方>

だいたい古い車体の電装系をやると,コネクタ周りの処理でどんなレベルの人がいじったかを知ることができます.例えば,コネクタに刺さっているケーブルを分岐する際なんかも,市販の分岐ブロックを使っているのが一般的ですが,中にはケーブルの中間被覆を剥いて,そこに口出しした銅線を巻き付けてビニテを巻いているだけのものがあったりします.それならまだましで,中間被覆を剥くのが面倒だったのか一旦切断して双方を口出しして,増設するケーブルとともに三つ巴で撚って,それをビニテで巻いているケースもあったりします.ですので私はあやしい分岐や後付けのビニテを見つけた場合は一旦必ず中身を確認するようにしています.

このような問題は,そもそもケーブルを増設するときにコネクタの端子に直接潜り込ませることで防止でき,高信頼化できるものです.しかしそれを実施するためには端子をコネクタから抜き,端子を2本のケーブルで打ち換えないといけません.そして,あまりやったことがない人においてはこのコネクタから端子を抜くのが結構大変だったりするのです.事実,私も何度か複数のタイプのコネクタに置いて作業をしてようやく慣れたといっていいでしょうから,電装関係の作業は一生の中で1回しかやらないと思っている方にとってはハードルが高いのでしょう.

そのコネクタからの端子抜きは専用工具の有無でその作業性が大きく変わってきます.まあ私の場合は専用ではなく自作工具を使っていますが,今では安価にamazonやモノタロウとかでさまざまなコネクタに対応できるセットが売られていますので,それを購入するのがお勧めです.次に必要なのはコネクタと端子の固定状況です.これを誤ると全く作業できません.これをもっとも理解しやすくするために私は先に端子を新品購入しておくようにします.そうすると,コネクタハウジングの中で端子がどのような場所にどのような形状で引っかかっているかを理解することができます.

あとは,コネクタの前後端から端子の突っ込めるスペースを見つけ,最適な形状の工具で引っかかっている端子の出っ張りを押えてからケーブルを引っ張ります.この押えるタイミングは必ず引っ張る前にしなければいけません.というのも先に引っ張ってしまうと端子の出っ張りがコネクタハウジングに強く当たることで工具でどれだけ強く押しても十分に引っ込んでくれないことがあるからです.私もここはなかなか気づけず,先に引っ張った状態で工具を突っ込んで,全然端子が抜けなかった経験があります.でもこの順番を気を付けるようになってからはスムースになりました.

コネクタが抜けたらあとは端子を切断し,新たに口出しして増設するケーブルとともに新たな端子にかしめるという段になります.とまあ,意外に施工そのものよりも,まず分解のところにスキルがあるとなお良い作業ができるということになりますので,ご興味のある方は,まずジャンクなハーネスなど購入して練習するのもよろしいのではないでしょうか?

<プラグコードの交換>

プラグコードは20年以上経過した旧車だと硬化して使い物にならないものの,新品での純正調達がコイルも一式となり高額であることもありコードだけ自分で交換したいという方も多いのではと思います.そんなことから結構質問を受けることも多いので,プラグコードの交換について述べておきましょう.

私がプラグコード交換に”目覚め”たのは,もう20年以上前にライコランドでテイラーのシリコンコードを見かけたのと,当時ニフティのバイクメンテナンスフォーラムの過去ログで交換作業について文章で紹介している方がいたからに他ありません.当時テキスト文だけで写真もない状況で,手持ちの工具でいろんなトラブルにさいなまれながらなんとか作業をしたのを覚えています.

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で,コードのみの交換ができるかどうかは主にコイルのケーブル取り付け部の方式に寄ります.主にカワサキ車では,キャップをねじ込むことでコードの導体がコイル側の突っ立っているねじのような端子にどんどんはまっていくタイプのものはキャップを回して取り外すことや,中のブッシュや小さいプラスチックのテーパワッシャのような部品を壊さず分解できれば,交換可能です.他の会社だとこのねじ込み式ではなくカシメて樹脂で固めてあったりするので,一旦分解してしまうとここはかなり完全に復旧するのが難しく一般的には途中で古いコードをぶった切って中継して新しいケーブルに入れ替えるようですが,それだと結局古い硬化したコードが残ってしまいますので,せっかく交換した効果が薄まってしまいそうです.なお,プラグキャップ側はだいたい少し樹脂で固めているケースもありますが,分解してもそう復旧が大変ではありませんし,プラグキャップ単体は形状は少し純正と異なりますが,交換用が売られていたりしますので,あまり大きな懸念にはなりません.

次に気にしなければいけないのはコードの長さです.交換して短いと走行中抜けてしまう可能性もありますので,交換時は少し長めにカットして使うのが良いでしょう.またこのカットの時は綺麗に端面が直角になるように切りましょう.斜めだとどうしてもコイルやプラグキャップの勘合部にすき間ができてしまいますので,性能にも悪影響を与えてしまいます.だいたい必要な長さは購入前に測定しておけば良いのですが,わざわざそれだけのためにタンクを外してプラグを抜いてとかやるのは大変です.私の場合,4気筒ばっかりですが,すべての場合2mあれば問題ありませんでしたので心配であれば2m購入することをお勧めします.で,コードの径ですがカワサキのものであれば7mmのものを使うとよいでしょう.上述のテイラーシリコンコードの場合,8mmあるので,私はコイル側やキャップ側を被覆を少し削いで,径を合わせこんで取り付けました.あまり信頼性の上で好ましいことではありませんので,最近では径が同じデイトナのものを使用しています.

ちなみに純正だとコードの上にチューブがかかっており,これは漏電防止のためと思われますが,よぼど硬化してしまっていないかぎりこのチューブがないから漏電するようなことはありませんので,なくても良いかと思います.気になる方は古いコードの両端がない状態でまず番号を示すタグチューブを切断して外し,チューブの中にパーツクリーナーをたらふく吹いて,スポっと抜いてください.新しいコードにはめる時は同じくパーツクリーナーをたらふく吹いてすき間にあるパーツクリーナーが揮発しないうちに手早く挿入しましょう.もし途中で突っかかった場合もパーツクリーナーをたらふく吹いて挿入しなおしましょう.

さて,これでほぼ電装系のご紹介したいところは網羅できたかな?まあ一応これに加えて電装をいじるときは回路の基礎や電気の理論は少し勉強しておいた方が良いかもですね.いろいろ容量オーバーやヒューズなしに変な回路を増設している例も多くみられますし,走っているときに火事になるようなことがないようにしておく必要はあると思いますので. 

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