No.4- 電装一般

前回,前々回とバッテリだけでずいぶん長く語ってしまい,まだまだ電源しかお話しできていませんので,今回はようやく電装系全般のお話にいきましょう.

<ハーネスのトラブル>

最も電装の大物となるのがハーネスになります.メインハーネスのトラブルの多くはコネクタ周りでして,端子が壊れている,抜けかかっている,コネクタハウジングが破損しているなどが多いようです.ここはコネクタを換装したり,端子を打ち直したりするのが順当でしょうね.でも私の場合は,手持ちのジャンクハーネスがあったりするので,そこから部品ごと移植したり,途中でぶった切って半田で中継したりすることもあります.

まあ,中継するときは少なくとも半田を使って,保護のために収縮スリーブを付けたり,できるだけ中継位置を各心線でずらしたりして信頼性は確保していますが,時には元々入手したハーネスが単に長めに口出しをして手で撚って,ビニテを巻いているだけというのを見かけます.これはショートやスパークの原因にもなり電装部品を壊してしまったりしますし,最悪火災の原因にもなります.バイクの車両火災の原因の多くは放火を除けば,燃料漏れ,電装系の経年劣化と言われていますが,電装系が原因の中にはこのような中途半端な結線などの改造が潜んでいる点は否めません.なので確実に導通が取れるように改造,補修するようにしましょう.

<ハーネスの断線,短絡>

外観上問題ないハーネスであっても,いざ通電を始めたら少しだけ漏電していたり,短絡,断線していたりします.漏電については車体にハーネスや電装部品を一式取り付けて接続状態でバッテリ端子間の抵抗値をテスターでイグニッションスイッチをOFFにした状態で測定します.少しでも導通があったらイグニッションスイッチかハーネスかどちらかが短絡していますので,まずイグニッションスイッチのコネクタの端子または底蓋を開けてOFFの位置で本来導通してはいけない端子がないかを確認します.そこで導通が見つからない場合でなおかつジャンクションボックスで破損が見られない場合は,ハーネスのどこかしらで短絡している可能性があります.

この際,通電しての確認が必要なこともあります.その方法について実は私は以前大容量の12V ACアダプタを使用していたのですが,これではもし不具合があったときに機器を壊してしまったり,コネクタを溶かしてしまったりします.なのでチェックの時は1A程度のものを使用するとよいと思います.また大容量のACアダプタを使用していたのはセルを回すためだったのですが,今は保護機能のついたジャンプスターター+ワニ口クリップ付きの延長ケーブルで対応しています.

そして,そのハーネスがダメそうな場合,私はハーネスを分解して調査なんてことは行いません.というのもハーネスをばらすと,とにかくビニテの粘着層が残って,もうほうぼう汚れますし,一旦ビニテをはいだ後に戻すのがとても大変だからです.特にメインハーネスは,たくさんのコネクタに繋がっていて,その分岐位置などもビニテで決まっているので,この部分をタイラップで仮止めして置く必要があったりして,一筋縄にはいきませんし,そうやってビニテをはいだからと言って微妙に漏電しているような不具合か所を見つかられる自信がないからです.なので,そういった場合はあきらめて新たに使えそうなハーネスを購入して,入れ替えるようにしています.まあ,趣味でやっていることなので時間がかかってもやり遂げて達成感を味わってもいいんですが,そこまで凝り性でもないもんですから.

<ハンドルスイッチのトラブル>

古い車体の電装系で部品単体ということであれば,ハンドルスイッチが何かしらのトラブルに見舞われているケースが多いのではと思います.その大体が腐食,接点不良,スイッチ部品破損,延長の後始末が悪いためのトラブルであり,修理すればなんとか使える可能性が高かったりします.カワサキの80年代後半〜90年代の車体は,その機能の種類が一緒であればハンドルスイッチの流用を小改造もしくは改造なしで行うことができたりしますので,その年代のものはいろいろ修理して使うもよし,他の車種のものを流用するもよしという感じです.まあそこらへんはいろいろご紹介していますので,参考になればと思います.

あと,ハンドルスイッチのトラブルでよくあるのが,ハンドルへ取り付けているねじが緩まないというものです.これは原因が主に2つあるようです.まず1つ目は下から止めるタイプのねじが固着してしまうケース.これは上記で挙げている流用可能なグループの1世代前のGPz空冷系のハンドルスイッチで良くあるトラブルです.筐体が上下割になっているため,上から侵入した水がハンドルスイッチの底にたまり,ネジのバカ穴やねじ頭のフランジ首の部分を腐食させ,固着に至るケースです.これについては,無理やり外すことはできますが結構大変だったりします.

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これに懲りたのか,オフ車など小排気量車を除くカワサキの主流は前後割のものに統一されていったわけなんですが,この前後割でもねじが緩まないケースがあります.これは原因の多くが,ハンドルスイッチの回り止めダボピンの除去です.恐らく社外ハンドルに交換する際,手間を惜しんでダボピンの飛び込み穴を加工せず,ダボピンを切除してしまうことで,無理やりハンドルスイッチを付けたはいいけど,周り止めがないので,そのままではスイッチをおすとハンドルスイッチがするする回ってしまうわけです.そのためにハンドルスイッチの内側あるいはハンドルにゴムシートなどを巻き,周り止めにしたりして,その食いつきを少しでも高めようとねじをすごい力で締めるわけです.それが樹脂製のケースの経年変形などを生み,ネジが樹脂部品に食いついてしまったり,その上にネジが腐食してしまったりして回らなくなってしまうわけです.こういったトラブルを防ぐためにも,皆さんはできるだけ周り止めダボピンを切除しないで,しっかりハンドルに穴をあけて固定するようお勧めしたいところです. なお,このダボピンが80年代後半のカワサキ車ではしっかりと鉄ピンになっていて,単にハンドルスイッチのピン穴の中で後ろに逃がして穴なしハンドルに取り付けてあるケースがありますので,その場合はちゃんとピンを前に出して,ハンドルに穴をあけて固定するようにしましょう.

<機器類のトラブル>

次に問題になりやすいのは,イグナイタやレギュレーター,ジャンクションボックス,リレーなどの機器が壊れているケースです.これは安価に他の候補が購入できる場合は,それを購入するのが良いと思いますが,念のためそれもダメなケースがあります.旧車の電装系なんて,途中好感されていなければ30年以上前の製品ですので使い続けていてもあんまり使われていなくっても劣化していることは確実です.もし購入後のチェックでよくっても,すぐにダメになる可能性もありますので,その点は覚悟するべきでしょう.

レギュレーターはがちがちに樹脂で固められているものの,イグナイタはケースが固められているだけで内側は普通の基板であったりしますので,電気知識のある方はコンデンサの交換などでトラブル解決してらっしゃるケースもあるようです.私もまだアップしていないコンテンツでやったことがありますが,やはりちゃんと電気知識のある方がやらないとダメなようで,コンデンサを全て交換したのにすぐにダメになってしまいました.問題はどうやら他にもあったようなのですが,さすがにそこまでトラブルシュートできず,別の中古を購入して何とかしましたが.

また,レギュレーター,イグナイタは互換を謳っている中華製が安価に売っていたりします.これもまあメーカーが行っている耐久試験のようなものをクリアしているわけではなく,セフィーロのときのリビルドセルモーターのように,すぐにダメになる危険もあります.そこらへんは,リスクをちゃんと理解してセレクトしておくべきなんでしょうね.

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電装系については,まだごくごく一部のみといった感じですが,比較的奥が深く,配線図を入手できて,半田付け,端子打ちなどができる人は結構楽しめる部分ではないかと思います.でも走行中トラブルと深刻なものにもなりますので,その点は理解の上,改造,施工などは正しく行ったほうが良いようですね.

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